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ああ……結構……寝てたな……。
俺が目を覚ますと目の前にシオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)の口があった。
小さな口から吐息が漏れている。
普通に呼吸をしているだけなのに、どうしてこんなに目が離せないんだろう。
ど、どうしよう……ナオ兄、起きてる。
私のこと、じっと見てる。
目、開けにくい。このまま寝たフリをしていようかな。
いや、でもそろそろ起きないと夜眠れなくなるよね?
「……シオリ」
俺は無意識のうちにシオリの唇《くちびる》に人差し指を押し当てていた。
ツツーッと指でなぞってみると少し反応した。
あっ、反応した……って、俺は何をやっているんだ!
ナオ兄、大胆……。しばらく寝たフリしてた方がいいのかな?
で、でも、そんなことしたら行くところまで行っちゃうかもしれない。
「……そ、そろそろ起きるか」
「……ナオ兄」
も、ももも、もしかして起きてたのか!?
い、いいい、いつから!?
というか、俺って最低なことしてたな。
寝ている女の子にイタズラしていいわけがない!
何をやっているんだ! 俺は!
「ご、ごめん! 俺、どうかしてた! 煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」
俺が土下座をするとシオリは首を傾《かし》げた。
「何のこと? 私は別に何もされてないよ? ナオ兄はきっと夢を見てたんだよ」
「そう、なのかな?」
「きっとそうだよ。あー、よく寝た。ナオ兄、ありがとね。また一緒に寝ようね」
「あ、ああ……」
夢……だったのかな?
いや、違う。俺はたしかにこの指で。
シオリは俺の手をギュッと握るとニコッと笑った。
な、なんだ? 前に……かなり前にこんな感じの笑顔を見たような気がする……。いつ、だっけ?