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ホームルームで聞かされたのかな? 昨日も今朝もそんなこと言ってなかったよね。
全校集会が開かれてサーシャが大丈夫になる……どういうこと?
「その全校集会で私の昨日の発言についての話がされるみたいだよ。私の発言は、第3者からの魔術による精神攻撃のせいだったって。事実は私が道場で倒れた時のショックなんだけどね。……きっと、ユリ姉さんが学校に手を回してくれて、説得力のある理由を考えてくれたんだと思う。だから、全校集会の後はいじめも陰口もほぼなくなると思うから安心してね」
……事実は幽霊なんだよ……隠してゴメンね。
でも、第3者による魔術攻撃……。それって、幽霊のことをいってる?
ユリ姉さんが学校に手を回して、幽霊のことを魔術攻撃にしたってこと?
校長先生に強気な態度を取ってたし、それぐらい出来てもおかしくないかな……。
うーーーん、全校集会で無罪が説明される……。
それだけで、サーシャがあんなに泣くほどのいじめや陰口がなくなる? 無理な気がするよ……。
「ホントに大丈夫?」
「まだ落ち着かない?」
「うん。サーシャのことが心配で心配でじっとしてられない……」
「……ちょっと後ろ向いて」
「うん」
サーシャに言われて後ろを向く。
……何かしてくれるのかな? ぎゅってしてくれてもすぐには落ち着く気がしない。
サーシャは超優等生だから、それをねたんでる人はいっぱいいる。そういう人達は無罪を信じずにずっと攻撃してくると思う。
心配だよ……ずっと一緒にいたいよ。
「……ん……。こっち向いていいよ」
「うん……んぐ!?」
サーシャが自分の指をわたしの口に入れてきた。
……これって、昨日のお風呂上りと同じパターンだ。と、いうことは……。
「んぐんぐ……」
この味と匂い……すごく美味しくて、愛の匂いがいっぱいするやつだ……。
落ち着くよ、すごく落ち着く……。
わたしを落ち着かせる為に、無理をして匂いを出してくれたんだね。
……落ち着こう。サーシャの「大丈夫」って言葉を信じる。
「どう? 落ち着いた?」
「うん、落ち着いた……。ありがとう、サーシャ」
「ほら、私は大丈夫だから自分の教室に戻って。休み時間になったら会いに来てね、待ってるから」
「うん……」
最後にぎゅっとしてくれて、階段を上がって見えなくなるまで笑顔で手を振ってくれた。
……あの笑顔はわたしが守るよ。もっともっと強くなって、威嚇以外も出来るようになる。勉強も修行も頑張って、ずっと隣にいる。
うん、ホームルームも授業もちゃんと受けよう。超優等生になるんだから。
「アウレーリア、早く席につけー」
「はーい」
教室に戻ったらホームルームが始まっていた。
サーシャの言った通り、これから全校集会があるので体育館に移動するそうだ。
わたしは、隣で上を向いてティッシュで鼻を押さえてる友達に声をかける。
「体育館だって、行こう」
「はぁ、はぁ、はぁ……ちょっと、待って……」
友達の机の上は鼻血の付いたティッシュで山盛りだ。
……保健室にいった方がいいんじゃないのかな?
「大丈夫……じゃないよね……」
「アリアちゃんも、さっちゃんさんもすご過ぎ……。こっからは踊り場が丸見えなんだよ、不意にあんなの見せられたらたまらないよ……。どうなってんの二人とも? 私達は小学生だよ……ありえないよ、あんなの……」
「あんなの?」
「さっちゃんさんの……あ、あれ……舐めてたよね?」
あれ? あれって指のこと? あんなことで鼻血が出るの?
「いつものことだよ。まだ3回くらいだけど、美味しいし、落ちつくから好きなんだ」
「ぶっ!?」
「だ、大丈夫?」
「あ、あれを3回……お、お、美味しいって……。もしかして、他にも色々やってたり……」
「してるよ。愛しあってるし、当然だよ」
「ぶほっ!? も、もう無理……頭が爆発しそう……。わたしは置いていって……動けない……」
友達が椅子ごと倒れて、鼻を両手で押さえてる。
……ホントに、保健室に行った方がいいんじゃないかな?
「おまえらー、何してる。早く廊下に並べー」
「はーい。……保健室に連れて行こうか?」
「いい……このまま妄想していたい……アリアちゃん達、最高ー……」
なにを妄想してるかしらないけど、幸せそうだからそっとしておこう。
廊下に並んで、みんなで体育館に移動する。
体育館にはすでに6年生と5年生が並んでいたのでサーシャを探す。
……あ、見つけた!
サーシャが見えたので手を振る。サーシャは、笑顔で小さく手を振り返してくれた。
嬉しいよー、幸せだよー。
結婚してからは、今までの小さなやり取りでも幸せを感じるようになった。
これが愛の力なんだね、きっと。
「これより、全校集会を始めます」
全校生徒が揃ってすぐに全校集会が始まった。
内容はサーシャに聞いていた通り、あの日の出来事について説明だった。
サーシャの名前は伏せられていたけど、間違いない。
6年生向けの説明が中心なのか、言い方がちょっと難しかったけど、ようは、サーシャは全く悪くなくて、精神への魔術攻撃した犯人に関しては、領政府による捜査が行われているってことだと思う。
あとは基本的な生活指導だ。いじめは止めましょう、みんな仲よく、楽しい学校生活を送りましょうって感じ。
それにしても、領政府による捜査って……すごく大事になってる気がする。
……幽霊って、衛兵さんが捕まえられるのかな?
色々な掲示板を見るけど、幽霊が捕まったなんてことは見たことがない。
ユリ姉さんが衛兵さんに嘘をついて、いもしない犯人をでっち上げたのかな?
それってすごく不味い気がする……。
領政府や衛兵さんに嘘をつくことは立派な犯罪だよね? ユリ姉さん、捕まるんじゃないの? 大丈夫? 逮捕されて、わたしの証言が必要とか言われたらどうしよう……。ユリ姉さんには色々とお世話になってる気がするし、刑が軽くなるなら協力してあげたいけど……。
「以上で、全校集会を終わります。1年生から退場してください」
……どうでもいいか。
あの人、よくわからない権力をいっぱい持ってそうだし、自分でどうにでもしそう。捕まっても、あの性悪さがよくなるなら一回捕まった方がいいと思う。
……うん、無視無視、考えない!
「残りの時間は自由時間だ。先生は職員室に戻るが、あまり騒がないように」
「「はーーーい」」
全校集会は30分ほどで終わったので、残りは自由時間になった。
サーシャの所に行きたいけど、授業時間ということで我慢しよう。
「全校集会ってなんだったのー?」
妄想の為に教室に残った友達が聞いてくる。
もう鼻血は止まったみたいで、ノートに落書きしながら遊んでいた。
「えっとね、サーシャの……」
全校集会で話された内容を大まかに伝える。
一番大事なのは、サーシャが無罪だってこと。それだけはハッキリ伝えた。
領政府が捜査中とか、ユリ姉さんが逮捕されるかもしれないとかはどうでもいい。
わたしにとっての最優先はサーシャで、サーシャの無実を証明していじめや陰口をなくすことに全力を出す。
「……と、いう訳で、サーシャは無罪だってことだから」
「そっかー、さっちゃんさんに謝らないとダメだね。不良だと思ってゴメンなさいって」
「わかってくれればいいよ。指懲室に行くのにも協力してもらったし、ありがとうね」
「……ある意味、私は愛のキューピットだよね」
「そうだね」
あの時に保健室に行く提案をしてくれたから教室を抜け出せたし、途中で別れて指懲室に行くように合図してくれたのも助かった。
おかげでユリ姉さんと合流してサーシャと会うことが出来たし、色々あって結婚することになったんだから。
……うん、きっかけを作ってくれた愛のキューピットで間違いないと思う。
「と、いうことで、私にもすこーしだけ、幸せを分けてほしいな」
「幸せを分ける?」
「アリアちゃんの家にお泊りしたい!」
「えっと……」
「わかってる! 愛しあってるから邪魔されたくないんだよね!」
「いや、別に邪魔じゃ……」
「でも! あんなものを見せれたら妄想が止まらないんだよ!」
妄想が止まらないと言って、手元の落書きノートを見せてきた。
……なにこれ?
ノートにはわたしとサーシャが書いてあった。かなり美化されていて、周りに花や花びらがいっぱい舞ってる。
そして、色々と愛しあってる場面が数ページに渡って書いてあった。
至近距離で見つめ合ってるキラキラシーンから始まって、ご飯の食べさせあいや、湯船に入って抱き合ってる状態なんてものもある。2ページを使ってでっかく書いてあるのが、ベッドで抱きあいながらお互いの指を食べさせあい、頬を真っ赤にして見つめ合ってる絵……。他にもたくさん書いてあるけど、ほとんどが意味不明だ。
「見たいんだよ! こういうのが! お願い!」
……なんだろう、ユリ姉さんの「過激ないちゃいちゃが見たい」に通じるものを感じる。
さっきは「見せつけないで」とか言ってたのに、今度は見たいんだ……。
うーん、まあ、お泊り会の常連メンバーだし、久しぶりにみんなでお泊り会もしたいからいいかな?
「いい!? いいよね! お願い!」
「うん、いいよ」
「ありがとー! 絶っっっ対に邪魔しないから、いっぱい愛しあってね!」
「う、うん」
それからお泊り会常連のメンバー達が「私も!」、「私も!」と言ってきて、最終的に6人が泊まることになった。こんなに大人数は初めてかもしれない。いつもはサーシャを入れて3人くらいだ。サーシャが固定参加で、他の人達が交代で参加してる。
……わたしの部屋に6人も寝れるかな? 無理ならサーシャの部屋に分ける?
お泊り会メンバー達は、妄想ノートを見ながらキャーキャー騒いでいて、その場面のセリフを色々考えながらマネして楽しんでる。みんな「過激すぎる!」とか「恥ずかしいよ!」とか言ってるけど、わたしとサーシャがやってることとあまり違いがないように見える。
……みんなは「お互いに愛してない」から、過激に感じたり恥ずかしいんだと思う。
愛があれば恥ずかしくないし、幸せしか感じない。
みんなは好きな人とかいないのかな? 好きな人とだったら、ノートに書いてあることは恥ずかしく感じないと思う。意味不明な絵も多いけど、それは結婚学を習得してる人しかわからない妄想だ。
「みんなも、好きな人とやってみたら?」
「「「「「「え?」」」」」」
「好きな人とだったら恥ずかしくないし、幸せになれるよ」
「「「「「「……」」」」」」
みんな無言でお互いを見合ってる……。
わたし、別におかしなことは言ってないよね? お互いに好きなら結婚すればいいし、愛してるなら愛しあえばいい。
ノートの妄想だって意味不明な部分は多いけど、わたしとサーシャがやってることも結構ある。結婚学は実際の夫婦生活と大量の妄想で出来てるのかもしれない……。
ゴォーン……ゴォーン……ゴォーン……
「終わった! サーシャのところに行ってくる!」
「あ、うん……」
待ってて! 今行くから!
わたしは急いでサーシャのいるクラスに向かう。
教室に入ると、すでにサーシャが数人の生徒に囲まれてるのが見えた。
間に合わなかった!? すぐに助けてあげるからね!
「サーシャーーー!!!」
「アリア」
わたしは座っているサーシャに抱きつき、周りを威嚇する。
「ぐるるるるるる……」
「アリア、来てくれてありがとう」
「うん! 守ってあげるからね! ぐるるるるるる……」
サーシャをいじめている生徒に威嚇を再開する。
周りにいるのは学校の有名人3人だ。ちょっと気後れしそうだけど頑張るしかない。
サーシャの右にいる二人の内の一人はおなじみのモーリス先輩。
この人、サーシャのことが好きなんじゃないかと思ってたけどガッカリだよ。
恋は破れたかもしれないけど、好きだった人をいじめるなんてひどいと思う。
もう一人が超絶美形で女子のあこがれの的、メルネス先輩。
礼儀正しくて紳士的な人だと思ってたのに、いじめに加担するなんて失望したよ。
左側には超絶美少女で人気者のフェイルーン先輩。
表面上は高飛車な人だけど、根は優しくて、すごく頼りになる先輩だと思ってた。綺麗な翼に綺麗な容姿だから、空を飛んでる姿は天使に見えてすごく素敵だった。密かに憧れていたのに残念だよ。
サーシャを含めたこの四人は学校の四天王だ。全能のサーシャ、頭脳のモーリス先輩、紳士のメルネス先輩、天使のフェイルーン先輩。
二つ名は色々あるみたいだけど、わたしはそう思ってる。
……成績がよくて人気もある3人が、サーシャ一人をいじめるなんてあんまりだよ。
「ぐるるるるるる……」
「アリア、安心していいよ。いじめられてた訳じゃないから」
「ぐる……ん? 違うの?」
いじめられてないの? じゃあ何してたの?
モーリス先輩が「やれやれ……」と言いながら言い訳? してくる。
「僕はザナーシャ君の永遠のライバルだよ。勝負に勝って追い越したいとは思っているが、いじめで追い落とそうとは全く考えてないよ」
……そうだよね、この人は真面目が服を着てる人だ。サーシャがいなかったら優等生ナンバー1はこの人だと思う。そんな人がいじめとかはしないか。
「いじめか……。確かに、子供は善悪の判断が付きずらく、短絡的にそのような行動を起こすことがある。私は、そんな紳士の道に反する様なことはしないけどね」
……大人? のメルネス先輩もいじめはしないか。真逆のイメージだよね。
優しくて気配りがすごく出来る人で、レクとかでは率先して年下の面倒を見るから低学年からの人気もすごく高い。超絶美形で気配りができて優しい、頭がいい……うん、いじめはしないね。
「わたくしも、いじめ等の下劣な行為は決していたしません。淑女たるもの、自身に誇りを持ち、優雅さと気品を大切にしてますもの。人に誇れないような行いはしませんわ!」
……うん、フェイルーン先輩もいじめはしないよね。
この先輩はある意味サーシャに似てる。自分がこうと決めたら絶対にそれを曲げない。小説で見たお嬢様になろうと、口調も真似てその生き方も真似ようとしてる。そのお嬢様は優しくて完璧な令嬢なので、いじめみたいに陰湿なことは絶対しない。
「……先輩方、なんでサーシャを囲んでるんですか?」
よくよく考えてみると、3人ともいじめをするような人達ではない。
性格や見た目や行動が変なだけで、学校を代表する優等生だ。そんな人達がサーシャを囲む理由がわからない。
「嫌疑をかけた謝罪と、ライバルを助けるためだよ、アウレーリア君」
「助ける……ですか?」
「校長先生への暴言のせいで、昨日は酷い目にあわせてしまったからね。真相が明らかになり、ザナーシャ君に非がないとわかったのならば全力で擁護させてもらう。こんな事で追い落としても意味はないからね。勝負に勝ち、正々堂々と追い抜いてこそ、僕の価値が高まるというものだよ」
おー、モーリス先輩が頼もしく見える。
いつもの眼鏡を光らせる決めポーズも、今日はさまになってる気がするよ。
メルネス先輩も頷いて説明してくれる。
「私達4人、この学校ではそれなりに影響力があると自負してるからね。私達全員の仲が良いとわかれば、手を出してくる馬鹿はそうそういない。だからこそ、こうして休み時間に談笑して、仲の良さを周囲にアピールしてるのさ」
うん、メルネス先輩の言うことは正しいような気がする。
最優秀のサーシャと、生真面目優等生のモーリス先輩。巨大な公認ファンクラブを持ってるメルネス先輩とフェイルーン先輩。この4人が友達なら、学校内に敵はいないように思える。
「昨日、皆の暴言を止めなかったことを後悔してますわ。ザナーシャさんを信じ切れず、庇うのを躊躇してしまいました。淑女として、まだまだ未熟で恥じるばかりですわ。普段の彼女の態度を見ていれば、校長先生に暴言を吐くなどありえないことですのに……。しっかりとお話をして、事情を伺うべきでしたわ」
フェイルーン先輩は本気で落ち込んでる。
そうだよね、参考にしてるお嬢様って、すごく勇気のある優しい令嬢だもんね。物語の中でも、上級生からいじめられてる同級生を庇って仲良しになるシーンとかあったし。
……この3人が味方なら、もうサーシャは大丈夫かな?
唯一の心配はファンクラブの人達からの嫉妬だけど、わたしとサーシャが結婚してるので先輩狙いとは思われないはず。メルネス先輩もフェイルーン先輩も、友人がすごく多いからサーシャもその一人になるだけだ。
……うん、わたしがいなくても安心だね。よかった、よかった。ん? わたしがいなくても……?
「わたし、毎時間来なくてもいいのかな……」
毎時間来る目的はサーシャをいじめから守ることだ。
先輩たちが協力してくれるなら来なくても大丈夫な気がする。
……大丈夫……なんだろうけど、すごくモヤモヤする。
いじめがなくなったら会いに来ちゃいけない? いじめから守ることだけが会う理由? そんなのはヤダ。寂しすぎるよ……。
「次の休み時間も会いに来てね、アリア」
「!? うん! 絶対に来るよ!」
「3人から提案されて今週はこの教室で3人と一緒にいるけど、来週になったら私もアリアの教室に行くから、来週からはお互いの教室で順番に会おう。少しでも一緒にいたいから」
「うん!!」
そうだよ! 一緒にいたいから一緒にいる。理由はそれだけでいいんだよ!
ゴォーン……ゴォーン……ゴォーン……
「2時間目が始まるから戻って。授業をしっかり受けて、頑張って成績上げよう。わからないところは家で教えてあげるから、ノートもしっかりとってね」
「うん!」
別れ際に抱きしめてくれて、頬に顔をくっつけてスリスリしてくれた。
元気100倍! やる気100倍だよ!!
毎時間これをやってくれるなら、成績トップも夢じゃない!