テラーノベル
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雨脚はさらに強まり、時折鳴り響く雷が古い一軒家を小さく揺らしていた。
リオはベッドの中で、引き上げた毛布に顎を埋めた。
先ほど食卓で感じた、サンウォンの冷ややかな指先と、アンシンの熱い吐息が、肌にこびりついて離れない。
リ「……考えすぎだ。あの子たちは、ただ甘えてるだけだ」
自分に言い聞かせるように目を閉じた、その時だった。
カチャリ、とドアが開く音がした。
ア「……リオ? 起きてる?」
アンシンの声だった。薄暗い中、ドアの隙間から差し込む廊下の光が、彼の長身を縁取っている。
リ「アンシン? どうしたの、こんな時間に」
ア「雷がすごくて……。昔みたいに、一緒に寝てもいい?」
そう言って、アンシンはリオの答えを待たずにベッドの左側へと潜り込んできた。
20歳の男の体は、リオが記憶している「小さな少年」とは比べものにならないほど大きく、重い。
シーツ越しに伝わる体温に、リオは思わず身を固くした。
リ「アンシン、もう君は20歳なんだよ。一人で寝られるだろう?」
ア「20歳になっても、怖いものは怖いんだもん。……それに、リオの匂いが一番落ち着くんだ」
アンシンが後ろからリオの腰を抱きしめ、首筋に鼻を押し当てる。
リオは肩を竦めたが、アンシンは離れようとせず、ただ深く、深く、リオの香りを吸い込んでいるようだった。
その時、再びドアが開いた。
サ「……アンシンだけずるいよ」
低い声とともに現れたのは、サンウォンだった。
彼は無言のままベッドの右側に腰掛け、リオと向かい合う形で毛布に入ってきた。
リ「サンウォンまで……。ちょっと、狭いよ。二人とも自分の部屋に_」
サ「あの日も、こうして三人で寝たよね。リオ」
サンウォンが暗闇の中で、リオの手をそっと握りしめた。
以前のような柔らかな繋ぎ方ではなく、逃げ出さないように指の間に自分の指を割り込ませる、強引な「恋人繋ぎ」。
サ「あの樫の木の下で死にかけていた僕たちを、リオが救ってくれた。……あの時から、僕たちの世界にはリオしかいないんだ」
サンウォンの静かな声が、雨音よりも重く耳に届く。
背後ではアンシンが、抱きしめる腕にぐっと力を込めた。
ア「ねえ、リオ。僕たちをあんなに優しく、愛を込めて育てたのはリオだよ。……これからもずっと、僕たちだけのリオでいてくれるよね?」
左右から挟み込まれる、二人の男の質量。
リオは、自分が育て上げたはずの「善意」が、いつの間にか自分を縛り付ける鎖に変わっていることに気づき、背筋が凍るような思いがした。
リ「あ、あの日だって、ずっと一緒に寝たわけじゃない。……落ち着いたら、自分の部屋に戻るんだよ」
リオは必死に「親」としての口調を保とうとした。しかし、暗闇の中で自分を見つめるサンウォンの瞳は、鏡のように冷たく、そして執拗な光を宿している。
サ「……どうかな。明日の朝まで、こうしているのが一番安全だと思うけど」
サンウォンが繋いだ手に力を込め、リオの指先に唇を寄せた。
触れるか触れないかの距離で止まったその吐息が、何よりも雄弁に、彼らの変質した愛を物語っていた。
リオはただ、雷の音に紛れて聞こえる、二人の規則正しい、けれど重苦しい鼓動を聞いていることしかできなかった。
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