テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
最寄りの駅まで来ていたんだろう。
15分もせずに一階のインターフォンが鳴った。
私が好きなケーキ屋の箱をぶら下げて、世界の終わりかのような暗い顔で美里が立っている。
「突然ごめんね。私、どうしても謝らないといけないことがあって」
こんな時間にケーキ屋なんて開いていたんだと、内心関心しつつ、紅茶を淹れた。
美里は、県立図書館で図書司書として働いている。黒縁眼鏡に長く艶やかな髪、ブラウスにロングスカートと、見た目からして大人しく知的で一緒に並んでいても私より年上に見える。
私は、ショートカットをショコラブラウンに染め、ピンク色のパンツスーツに白鳥さんにデコってもらった派手なネイル。落ち着いた美里と未だに落ち着きのない私は正反対。
しかも職業柄か、何も手入れしていない美里の爪を保護したくてたまらない。
「その、許してもらえるわけじゃないけど。でも私はずっと貴女と友達でいたくて」
「何? そんなかしこまらないでよ」
「華怜がそんな風に髪も伸ばせなくなっちゃった原因」
「ああ……。そんなことか。美里は何も気にすることないでしょ。私、この髪、楽で気に入ってるし」
やだなあって笑いながら、美里が持って来たシュークリームをお皿において目の前に出す。
けれど美里は歯を食いしばって泣いていて、声を殺していたのでシュークリームを持ったまま固まってしまった。
「美里」
「私が、あの時、華怜の髪にガムをつけたの。しなきゃ、私も虐めるからって言われて、怖くて。華怜なら、それぐらいで泣いたりしないからって」
「えーっとちょっと待って」
「私、委員長もしてたしあの後、一矢くんは悪くないって、イジメの主犯達が言ったのに誰も大人は取り合ってくれなくて」
「落ち着いてってば。それは、美里が私と仲よかったからよね。巻き込んじゃってごめんね。それをずっと気にしてたの?」
遥か彼方の昔話を言われて、そこまで号泣されても困る。
謝ったところで戻れないしなあ。
過去を振り返ったって、やり直せる場面はない。
人は嫌な思い出は、楽しかった思い出より心に傷として蔓延ってしまうらしい。
私も前後の思い出は消えてしまっても覚えている。
後ろから髪を掴まれ、振り返った瞬間、ジョキっとハサミの先端が目の前に飛び込んできた。
床に散らばる私の髪、カズくんが掴んでいる指の中の髪。
そして大きく悲鳴を上げる、女子たち。
そこだけは映画のワンシーンのように今も鮮明に覚えている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
砂原 紗藍
#再会