テラーノベル
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月夜の晩に、ボタンが一つ。
波打際に、落ちてゐた。
――――――――――
私は昔のことを覚えていない。
正確には、覚えているはずなのに思い出せない。
そんな感覚だ。
名前。
年齢。
学校。
友人。
そういうものはちゃんと覚えている。
けれど、それより前の記憶だけがぽっかりと抜け落ちていた。
まるで誰かがそこだけ切り取ってしまったみたいに。
「夜凪ちゃん?」
不意に呼ばれて顔を上げる。
窓の外では夕焼けが街を赤く染めていた。
「また考え事?」
心配そうに覗き込む母に、私は小さく笑う。
「大丈夫だよ」
いつもの返事。
いつもの笑顔。
いつもの嘘。
本当は大丈夫じゃない。
夜の海を見るたびに胸が痛む。
知らないはずの街並みに懐かしさを覚える。
聞いたこともない名前なのに、なぜか懐かしく感じてしまう
『太宰治』
その名前を初めて聞いた日のことを覚えている。
――あなたには兄がいる。
――そして、その人を知っている人物がいる。
それだけだった。
兄の名前も。
顔も。
どこにいるのかも。
何も知らない。
けれど。
なぜだろう。
『太宰治』という名前だけは、ずっと心に引っかかっていた。
忘れてはいけない気がするのに。
思い出せない。
まるで。
月夜の浜辺で拾ったボタンのように。
何の役に立つかも分からない。
けれど捨てることもできない。
そんな何かが、私の心の奥にある。
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ぁわ
――だから私は探している。
失くした過去を。
知らないはずの誰かを。
そして。
私自身を。
その時の私はまだ知らなかった。
この先、自分が再びヨコハマへ足を踏み入れることを。
忘れたはずの過去が、静かに動き始めていることを。
そして――
私の兄が。
今も私を探し続けていることを。
月は静かに夜空を照らしていた。
この垢で投稿する作品の最後にさせていただきます
自分でも何かいてるか分からなくなってきちゃった((
文豪ストレイドッグスの作品ですね
考察は勝手にどうぞ。次回はprofileを書きます
更新先延ばしになっちゃうからなる早で書きます
コメント
1件
ぁわさん、1話読みました! 月夜の浜辺のボタンから始まる、記憶の断片をなぞるようなプロローグ、とても美しかったです。「覚えているはずなのに思い出せない」という主人公の感覚や、太宰治という名前だけが心に引っかかる違和感が、読んでいるこちらにもじんわり伝わってきました。これからヨコハマで始まる物語、すごく気になります。続きを楽しみにしていますね🌙