テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
4件

ややこしい🤣🤣🤣🤣🤣
第二十一章 ラウ一族
翔太💙「なに……これ?」
テーブルを囲む、三人。
全員、似ている。
ラウ男が、何も言わずに手を伸ばす。
その手が止まるより先に、ラウ子が醤油差しを滑らせた。
音もなく、正確に。
ラウールは、視線すら動かさない。
誰も、確認しない。
それでも、ずれない。
翔太は、固まったまま動けなかった。
ラウ子🤍「翔太くんはコーヒーでいい?」
翔太💙「はっ、はい」
コーヒーの湯気とコンソメスープの湯気が、 ステンドグラスから差し込む光に、 虹色を含んで登っていく。
〝朝ごはんまだでしょ〟
ラウ子さんに連れられて、近くの喫茶店へ。
はっきり言って――異様だった。
翔太💙「……え、増えました?」
間
スープを啜っていた三人の手が止まった。
静。
一挙手一投足が、揃う。
同じ顔。
――なのに、違う。
動。
ラウ男は猫背で前のめりになって、
乱暴に掴んだスープ皿にそのまま唇を押し当てた。
ラウールはスープ用のスプーンで手前から
人匙掬うと静かに口に運ぶ。
ラウ子さんは、コーヒーを片手に翔太を見ていた。
瞬きひとつ、しない。
ラウ男がコーヒーに手を伸ばす。
その前に、ミルクと砂糖が置かれていた。
音は、しない。
いつからあったのかも、分からない。
湯気の立つそこに、注がれたミルクが
弧を描いて溶けていく。
ラウールが手を伸ばしたときには、
すでにミルクがそこにあった。
ラウ子🤍「翔太くんは?」
翔太💙「えっ?」
三人の視線が、同時に落ちた。
逃げ場が、なかった。
ラウ男🤍「コイツは――」
ラウール🤍「この子は――」
寸分違わず、重なった。
ラウ男🤍「ブラックだ」
ラウール🤍「ブラックだよ」
翔太💙「……なんで」
誰にも、言っていないのに。
ラウ男🤍「で……なに?」
パンを噛みながら、視線だけが動く。
ラウ子へ。
ラウ子🤍「ただの朝食よ」
ラウール🤍「……」
ラウ子🤍「ねぇ翔太くん」
翔太💙「……え、あ、はい」
ラウ子🤍「理由が必要?」
八時を告げる、置き時計の音色。
レトロな喫茶店に響いたその音はどこか懐かしい。
ラウ男🤍「なんかやってるだろ?」
ラウ男🤍「医局長だからって、教授戦には出ないからな」
少し間。
翔太💙「……医局長?」
聞き慣れない言葉が、やけに引っかかった。
ラウ男🤍「……俺をそこに置いたの、お前だろ」
一瞬。
ラウールの眉根がピクリと動いた気がした。
ラウ子🤍「あら、なんのこと?」
笑っている。
でも、否定はしていない。
ラウール🤍「……また盤面、動かしてるんだ」
何だか楽しそうなラウール。
コツンとフォークを置く音だけがやけに響いた。
ラウ男🤍「……勘弁してくれ」
ラウ子🤍「何の事だか――」
カップを傾ける。
ラウ子🤍「……放ってはおけないものね?」
ほんの一瞬だけ、視線が翔太に落ちた。
――今、見られた?
胸の奥が、ざわついた。
理由は分からないのに、逃げたくなるような感覚だけが残る。
ラウ子🤍「動いたのは、誰かしら」
少し間。
ラウ子🤍「だから、使われるの」
――誰が?
次に聞こえてきたのは
珈琲ドリッパーがじわりと湿り気を帯び
コポコポと注がれるお湯の音。
ゆっくりとぽたり、ぽたりと雫が落ちる音。
この空間だけ、時が止まったように、違う世界が広がっているようなそんな時間だった。
ラウ子🤍「あなたが一番、素直だから」
今度は間違いなく……翔太を見ている。
カップの縁を、指でなぞる。
――綺麗だ。
ラウ男🤍「そいつ使うのか?……なんの為に」
今度は、逸らさない。
ラウ子🤍「兄さんは心配いらないわ、私に任せて」
ラウ男🤍「なにを任せるというんだ?」
テーブルの上を軽く握った拳で
コツコツと叩いたラウール。
全員が顔を上げた。
腕時計を人差し指で弾くと
ラウール🤍「出社の時間だ。行くよ翔太」
翔太💙「はっはい!」
急いでパンをコーヒーで流し込んだ。
ただただ異様な時間に、無理やり喉を通ったパンもコーヒーもなんの味もしなかった。
ラウ子🤍「翔太くん、困ったことあったらいつでも言ってね。力になりたいの」
軽く会釈をして喫茶店を後にした。
胸の奥に、なにかが残った。
自分の知らないところで、何かが動いている気がした。
消えないまま、胸の奥に、引っかかっている。
sona