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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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冒険者ギルドを出たあと、私たちはそのまま宿屋の食堂に向かった。

ジェラードはもう来ているかな? そう思いながら探していると――


「アイナちゃん! こっち!」


食堂の奥のテーブルで、席を確保しているジェラードを発見した。


「こんばんわ! お待たせしました?」


「ううん、10分くらいかな。

僕の方が早いなんて珍しいけど、どこかに行ってたの?」


「ちょっと時間がありましたので、冒険者ギルドの依頼を受けていたんです。

北にある村まで行って、暴れ猪を倒してきたんですよ」


「へぇ、そうなんだ。

でも暴れ猪くらいなら、ルーク君なら余裕だよね」


「いえ、私は気絶した暴れ猪にとどめを刺したくらいでしたね……」


「え? じゃぁどうやって倒したの?」


「エミリアさんがエコー付きの攻撃魔法で、ズゴオオオンっと!」


「そのあとはアイナさんがクローズスタンで、バチバチバチっと!」


「……はい。

そんなわけで、私の出番は無かったのです」


「アイナちゃんの作ったアクセサリって、すごいものばかりだったからねぇ……」


「それでですね、猪のお肉を頂いてきたんですよ。

ひとまず私、ちょっと調理してもらえるか聞いてきます」


「はい! アイナさん、よろしくお願いします!

わたしたちは、それ以外に注文するものを決めていますね!

ジェラードさん、今日は猪パーティですよー!」


「そうなんですよ、ジェラードさん。

ミスリルの件が上手くいったなら、打ち上げってことにしようかなって」


「打ち上げか、それは良いね。

多分みんな満足いく感じで終わったと思うから、打ち上げって方向で楽しもう♪」


「あ、そうなんですね! まずは一安心しました。

それじゃ打ち上げっぽい感じで注文をしておいてください!」


「私はアイナ様に付いていきますので、お二人にお願いしても大丈夫ですか?」


「分かりました、お任せください! ささ、ジェラードさんもご意見をください!」


「うん、了解! ここはばっちり決めていこう!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「それじゃ、かんぱーいっ!」


「「「かんぱーいっ」」」


各々が好きな飲み物を手に取り、まずは乾杯。

ちなみに好きな飲み物とはいっても、全員がソフトドリンクである。

……何だ、この健全なパーティは。


「ジェラードさんはお酒でも良かったのに」


「いやいや、一人だけでお酒はちょっとね……。

それにお酒が無いパーティだって、とても良いと思うよ」


「そうですか? まぁ、強くは言いませんけど」


「ふふふ、お酒はムードあるお店でちゃんと飲んでいるから大丈夫さ。

だから、今日は無しで楽しもうかなって」


「うわぁ、大人の発言ですね」


「そういうお店には興味ある? もし良ければ、アイナちゃんも今度誘わせてもらうけど――

……ってダメだ。ルーク君の守りを突破できる気がしない」


「…………」


「アイナさん、ルークさんから無言の圧力がだだ漏れですよ」


「えぇっと……。

二人でダメなら、みんなでいけば良いんじゃないかな……?」


「いやいや、アイナちゃん。ムードを楽しむお店に、全員ではちょっと……ね」


むぅ、そういうものなのか……。

ムードあるお店なんて行ったことがないからなぁ……。大人としての未経験さが顔を覗かせてしまう。

……でもまぁ今は17歳だし、年齢相応ということで収めておこう。うん、仕方ない、仕方ないっと。



乾杯後、少しすると食堂の店員さんがやってきた。


「お客様、お料理はどんどんお持ちして大丈夫ですか?」


「え? はい、お願いします」


「たくさんご注文頂いておりますので、早いようでしたら仰ってくださいね」


「分かりました」


そんなことを話したあと、とりあえず皿料理が7皿ほどやってきた。


「うわ、結構頼みましたね。

あ、そうそう。猪のお肉は時間が掛かるみたいなので、少し遅れて来るそうです」


「アイナさん、了解です!

それじゃ頼んだやつから片付けていきましょう!」


「そうですね……って、ちなみにどれくらい頼んだんですか?」


「一人8品として、30品くらい頼みましたー」


「「え?」」


「……ごめん。僕には止められなかったよ……」


私とルークの反応を見て、ジェラードが何やら謝り始めた。

でも謝るほどのことでも無いし、そもそも大丈夫な範囲だろう。


「まぁまぁ、ジェラードさん。エミリアさんがいるから、大丈夫ですよ」


「えへへー♪ わたし、とってもしあわせです♪」


私の言葉を聞いて、エミリアさんは嬉しそうに笑った。


「そうですね、美味しいものにたくさん囲まれてますからね」


「いえ、そうじゃなくて――

……あ、それもあるんですけど、まぁいっか」


「え?」


「あはは、何でもないです! それじゃ、頂きましょう!」


「はい、ガンガン食べましょう!

男性諸君もよろしく! 私は早々に撤退しますから!」


「頑張ります!」


「僕はどこまでもつかな……。ちょっと限界に挑戦してみよう……」


「……あ!

ジェラードさんは打ち上げの話題として、ミスリルの件の報告をお願いしますね!」


「ああ、そうだったね! それを話さないと打ち上げっぽくならないか。

それじゃ、食べながら聞いてね」


「はい!」


「まず最初に、アイナちゃんが面倒を見た教祖さん……って、どうなったか知ってる?」


「いえ、ガルルンの置物の前から育毛剤が無くなったところまでは知っているのですが」


「じゃ、僕はそのあとを見たのかな。

教祖さんのところに昼頃行って確認したらさ、髪がふっさふっさの状態だったよ。

信徒の話によれば、朝は布で頭を隠して出掛けていたらしいんだけど」


「とても分かりやすいですね……」


「あはは、そうだね。こっちは見事に、アイナちゃんの思惑通り進んだってことだよね。

さて、それでアーチボルドさんの方なんだけど……朝方に寝室を確認してみたらさ、凄いことになってたんだよ」


「凄いこと……?」


「うん。髪の毛が部屋中に散乱していてさ、僕も少し恐怖を感じたね……。

今回もメイドさんに変装していたんだけど、一緒にいたもう一人のメイドさんなんて失神しちゃうし」


「うわぁ……。何だか可哀そう……」


「それでそのあと、商人って設定で交渉に臨んだんだ。

『サンプルの効果が切れた頃だと思いましたので、正式版をお持ちしました』……ってね。

そしたらそれはもう凄い勢いで食い付いてきてさ。……僕も、かなり引いたよ」


「ははは……。アーチボルドさんにとっては絶望中の希望ですからね……」


「最初は『少なくても数日の効果が確認できないならミスリルは渡せない!』……とか言われたんだけどさ。

そこはこっちが圧倒的に有利だったから、どんどん要望を伝えさせてもらったよ」


「圧倒的に有利……、確かに」


「それでね、ミスリルについては全部、23キロ頂いてきたよ♪」


「おお! さすがジェラードさん!!」


やっぱりこういうことでは頼りになる!

私だったら、全部は取れそうに無いからね。


「あと、アーチボルドさんは金属の収集をしているみたいだから、もう少しだけ欲張ってみたんだよ」


「え? 欲張った……って?」


「うん。『ミスリルだけじゃ、ちょっと足りないなぁ~』って言ってみたんだ」


「えぇ……?」


「そしたら、『光の封晶石』っていうのをもらえた♪

錬金術で使えそうなものを要望したら出てきたんだけど、これって使えるかな?」


そう言いながら、ジェラードは不思議な輝きをした石をアイテムボックスから取り出した。


見るからに凄そうだけど……、かんてーっ。


──────────────────

【光の封晶石】

光の力を増幅させる結晶体。高度な製造で使用する

──────────────────


……よく分からない。

いや、凄そうな素材ではありそうだけど。


「何だか凄そうなものですけど、良くそんなものまで出させましたね……」


「あと、『土の魔導石』を25個もらってきた♪」


「――鬼畜ッ!!」


……まさかのおかわり。

さすがにそこまでは予想していなかった!


「っとまぁ、そんな感じかな?

思ったよりは上手くいったと思うけど、どうかな?」


「もう十分すぎですよ! 本当にありがとうございます」


「それは良かった。僕もやっていて面白い仕事だったよ。

次は王都に行くって話だけど……そこではどんな仕事を任せてもらえるか、今から楽しみだなぁ」


そこまで言うと、ジェラードは満足そうな表情で料理に手を付け始めた。

やっぱり今の仕事がとても好きなんだろうな。本当に、嬉しそうな顔をしているもん。


「――……あれ?

そういえば話してる間に、ずいぶんお料理が減っちゃいましたね」


「アイナさん、大丈夫です! まだまだ来ますから!」


……あ、そうだった。そういえば30品くらい頼んでたんだっけ。


でも私も少しずつ、食べておこうかな。

油断すると、エミリアさんの胃袋に全部入っちゃいそうだからね。

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

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