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6月の夢路

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6月の夢路

5 - 地面から覗く窓.

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2025年07月31日

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6月の夢路




湖の底は、想像していたよりも静かだった。


足音も、呼吸も、まるで深い布の下に隠されたように響かない。


階段を降り切った先に広がっていたのは、水ではなかった。


そこは――空だった。



地面と思っていた足元は、透き通ったガラスでできていた。


その下には、どこかの町が広がっている。


けれど、どの建物にも屋根がない。


道には人の姿がなく、光も影も存在しなかった。



「なんだ、ここ……」



nakamuがガラスの下をのぞき込む。


その町は、どこかで見たような風景だった。


でも、具体的な地名も建物の名前も思い出せない。


ただ、懐かしさと痛みだけが胸に残った。



「全部、抜け殻みたいだな」



シャークんが呟く。


ガラスの下では、風が吹いていた。


人の姿はないのに、看板だけが揺れている。


その振動が、まるで“何かを訴えている”ように感じられた。



「……待って、あそこ」



きんときが、町の中央にぽつんと立つ黒い建物を指さす。


その屋上に、四角い“窓”があった。


窓だけが、こちら側――つまりガラスの上に向かって開いている。


まるで、「こっちを見ている」かのように。



broooockは、ガラスの床にしゃがみ込むと、手をゆっくり伸ばした。


その指先が窓の真上に触れた瞬間――



ぱちん、と小さな音がして、世界が“少しだけ揺れた”。



ほんのわずかに、足元のガラスにヒビが走る。


それと同時に、窓の内側から誰かの“視線”を感じた。


姿は見えない。


けれど、誰かが確かに、窓の向こうから6人を見つめていた。



「ここは“見られる場所”だ。俺たちが、観察されてる」



スマイルが静かに言う。


その声には、恐れよりも確信があった。


彼だけは、誰よりも早くこの世界の仕組みに気づき始めているようだった。



「ねぇ、この町……たぶん、誰かの記憶なんじゃない?」



きりやんがガラスに手を当てる。


その手の下、町の一角がゆっくりと動いた。


影が伸び、扉がひとつだけ開いた。


その瞬間、broooockの身体がぴくりと反応する。



「……俺、ここを知ってる」



彼の声がわずかに震えていた。


「ここ、前に住んでた場所に似てる。でも……違う。誰かの記憶の中で、俺の“過去”が歪んでる感じがする」



誰の記憶なのか。


なぜbroooockだけが反応するのか。


その問いに、誰も答えられなかった。



ただ、ひとつだけ確かなことがある。


この“町の下の町”は、今もどこかと繋がっている。


それは過去かもしれないし、まだ語られていない“存在”かもしれない。



ふいに、地面の奥からカタリ、と乾いた音が響いた。


振り返ると、階段の先――来た道が、ゆっくりと閉じていくところだった。



「戻れない……?」



nakamuが走り寄ったが、階段はもう完全に沈んでいた。


地面にあるのは、ただの透明な板。


その先に道はない。



「ここで、何かを見つけなきゃならない」



スマイルの声に、全員が再び足元の“窓”を見つめる。


窓の奥の誰か。


今は思い出せない誰か。


でも確かに、一度はそこにいた“7人目”。



それを見つけるまでは、この場所を出ることはできない。


そう思わせるだけの理由が、この空間にはあった。



世界は、静かに観察を続けている。


それが誰の目なのかは、まだわからない。


つづく

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