エースside
あの時、寺家くんの腕を掴んでいたら、俺のこの行き場のない気持ちを少しでもぶつけることが出来たのだろうか。
このモヤモヤした感情を、どうにか発散させたくて、同じ劇場の先輩と飲みに来たところまでは良かった。
「なあ、あいつ大丈夫なん?」
「なんの話ですか。」
「寺家やって、」
「なんかあったんすか?」
なにも知らないフリをした。
だって、実際なにも知らない。
寺家くんは俺になにも言ってこおへんし。
俺やって何かを見たわけでもない。
「寺家さ、あいつ社交的なのはええけど、先輩やお偉いさんと仕事欲しさによく飲みに行ってるって妬まれてるで。」
「まぁ、皆そうやって仕事に繋げるやないですか。」
「それにしても、なんか親密すぎへん?同期の中でも噂になってるし。」
「はぁ…」
なんでそれを俺に言うんや。
俺にどうしろって?
寺家くん、この間別れた後あの男とどこ行って何してたんですかって聞けばええの?
「なぁ角。」
「はい…」
「あいつが壊れんように、見張るのも相方の役目やで。」
壊れんようにって、そんなん、どうすればええの。
寺家くんは繊細やけど、それなのに慎重にならずに、自分の身を自分で滅ぼしたりする。
俺が何を言うたって、寺家くんは微笑んで終わり。
先週も、目の下にクマができている相方を心配して声をかけた。
昔から不眠症だと言っていた気がする。
『寺家くん、また寝不足ですか?』
『うん、でも大丈夫。』
何がやねん、
頼ってや、俺を。
俺に何でも言うてよ。
「寺家くん…」
俺なんで、こんなイライラしてんのかな。
コメント
1件
え、acさん絶対嫉妬してるじゃん かわいい((殴 ありがとうございます