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『言葉で紡ぐ恋のライム』
〜マイクで紡ぐ恋の予感?〜
番外編20『お別れの予感』前編
姫神麻里衣。大手探偵事務所の長女として生を受け、幼い頃から探偵として育てられ、今は両親を跡を継ぐ資格を持つ者。瞳の異能力を駆使し、様々な難事件を解決してきた名探偵である。
そしてこの名探偵には妹がいる。名探偵が溺愛してやまない姫神百合菜。お菓子作りが趣味で将来はパティシエを目指している。お菓子作りの才能で右に出る者はいない。双子で顔がそっくりだが似てないところもあると自分で自負している。
そんな2人に恋に落ちた男達。
ディビジョンラップバトルで勝敗を競う戦いに出る18人。バトルでは相手を唸らせるリリックを繰り出し、時には激しい戦いを見せるが
この2人の前ではそうもいかない。
これは、ドキドキハラハラ…ラブコメディの
お話である。
姫神家 リビング
『…はぁ。』
私は書類をテーブルに置く。
『お疲れですね…。少し休まれては?』
『蘭…。そうね、少しだけ休むわ…。』
『お姉ちゃんー!』
『ゆ、百合菜……もぐっ。』
口にケーキを突っ込まれる。
『疲れた時は甘いもの!私特製チーズケーキだよ!』
『美味しい…。』
『えへへ、お姉ちゃんお疲れ様。』
『ありがとう、百合菜。』
百合菜の頭を撫でる。
『あー!ずるーい!』
『ら、乱数さん!』
『みなさんおかえりなさい。今お茶を淹れますね。』
『僕もなでなでしたい!』
『あ、する側なんだ……。』
『仕事してたんか?無理はあかんで。俺にもなにか手伝えるかもしれへんし、言ってくれ。』
『盧笙さん…はい、ありがとうございます。』
盧笙さんは私の頭を撫でた。
『ろしょー!ナチュラルに頭撫でんな!』
『うっさいわ!疲れてるんやから静かにせぇ!』
『ふふっ。』
この当たり前の日常が、私は好きだ。
ずっとみんなと居られたらいいな。
そう、思っていたのに――。みんなと離れることになるなんてこの時は思ってなかった。
数日後――
『お姉ちゃんただいま〜。』
『聞いて聞いてー!まりぃちゃんの好きそうなお菓子があったから買い物したんだ!みてみて…。』
『……。』
『なんか、空気重くないですか?』
『…おかえりなさい。』
私はみんなにソファに座るように促す。
『お嬢様とみなさんに話があります。』
『蘭?どうしたの?いつになく深刻そうだけど…。』
『百合菜様。皆さん。麻里衣様が明日奥様達のいる海外へ行くことになりました。』
『…お姉ちゃんが!?明日急に?』
『……えぇ。』
『凄いじゃん!ちなみにどれくらい?』
『…1年よ。』
『え……?ちょっと待って、仕事の都合で日帰りとかじゃないの…?てっきり私そのつもりで…。』
『1年も麻里衣さんと会えないってことっすか?』
『お母さんとお父さんから連絡があったの。私はこの家を継ぐ資格のある長女。探偵としての経験を積む為に、海外に来なさい。って。私としては探偵になるのは夢だったから本格的に力を入れたいとは思ってた。今は精々見習い程度だから。』
『そ、そんなことないですよ!麻里衣さんは探偵として凄い実力を……』
『両親からしたら。です。』
『っ!』
『父と母は私よりも何百何千と探偵の仕事をこなしてきました。そんな2人から見たら私はまだまだ見習いです。』
『……お姉ちゃんが、海外に行っちゃうの…?』
ずっと、小さい頃から一緒にいたお姉ちゃん。
離れることなんてないと思ってた。
でも……心のどこかでは……。
『えぇ。私は海外に行くわ。』
『っ…』
ここで行かないでなんて言ったら我儘だよね。でも……。
『嫌です!』
『っ!』
『三郎君…』
『1年も会えないなんて…絶対嫌です!麻里姉は僕の好きな人で、ずっと一緒に居たいって思ってたのに…麻里姉はいいんですか!?たった1年って思うかもしれませんが、僕にとっては……っ。』
『三郎、やめろ。』
『一兄!でも…!』
『ごめんね。三郎君。』
『っ……!』
三郎君に感化され、私はお姉ちゃんの手を握る。
『…嫌だ。お姉ちゃん。』
『百合菜…。』
『お姉ちゃんと離れたくないよ。』
『……ごめんね。』
『さっきから謝ってばかり…他に言うことないの…!?』
『……っ。』
『っ〜!お姉ちゃんの馬鹿…っ!!』
私はお姉ちゃんをソファに突き飛ばす。
『っ!』
『ゆ、百合菜……』
『お姉ちゃんなんて知らない!』
百合菜は瞼に涙を浮かべる。
百合菜はそのまま家を飛び出した。
『百合菜…!』
二郎君達が百合菜を追いかける。
『……荷造りしないと。』
私は立ち上がり、部屋へと向かおうとする。
ガシッ!
その手を掴まれる。
『離してください、幻太郎さん。』
『…では、こちらを向いてください。』
『……っ。』
私は涙を流す。
『…嘘が下手ですね…貴方は。』
『っ、私だって、嫌です。百合菜と…皆さんと、離れるの……っ。』
私は涙を拭う。
『麻里姉…』
『みんなと過ごすこの楽しい毎日を…私はもっと大切にしたい…海外なんて、行きたくない…っ。』
『…やっと我儘を言ってくれましたね。』
『幻太郎さん…?』
『貴方は幼い頃から我儘を言わない性格だと聞いていますから。ね、蘭さん。』
『えぇ。そうです。』
『それが貴方の本当の気持ちなら…話すべきです。ご両親に。貴方の気持ちを。』
『私の、気持ち……。』
『お嬢様。自家用ジェットを用意しました。
行きましょう。』
『っ…!えぇ!』
私は涙を拭った。
公園にて――
『元気出せよ。百合菜。』
『お姉ちゃんと離れるなんて、私嫌なの。だって、1年って凄く長くて…。』
『あいつも素直じゃねぇよな…寂しいならそう言えばいいのによ。』
『お姉ちゃんは本当に昔から素直じゃないんだよ。どこか強がって…。』
と、その時――
『お嬢様!』
『ち、千鶴!?』
『空港に来てください。麻里衣様が奥様達を説得しに海外へ向かってます!』
『お姉ちゃんが!?』
『今からか!?』
『はい。自家用ジェットがありますから。』
『本当にぶっ飛んでる……。』
『……千鶴。私も行く。もう1つの自家用ジェットを出して。』
『俺が飛行機の免許を取らされたのはこの為だったんだな。もちろんです。行きましょう。』
(お嬢様も完璧なら執事も完璧か……。)
次回、後編へ続く!
コメント
1件
わあ…番外編なのに、こんなに切ない話になるなんて思わなかったです🥀 麻里衣さんがみんなと離れるって決断をしたときの、百合菜ちゃんの「お姉ちゃんなんて知らない!」っていう叫び、すごく胸にきました…我慢してた本音が溢れ出した感じ。 でも最後に幻太郎さんが「やっと我儘を言ってくれましたね」って言ってくれて、麻里衣さんも自分の気持ちに向き合おうとして…そこは泣けました。 ぷちさんの描く「日常の大切さ」がじんわり伝わってきて、後編が待ち遠しいです🌙