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Maple 第4話
(え?え?うそ、隣の席の人って流川くん?!)
内心修羅場の私の隣で、流川くんはもうすやすやと寝息を立てていた。
さっき眺めていた時よりもずっと近い場所に、彼の顔があり、細かいところまではっきりと見える。
いけないと思いつつも、その寝顔に見惚れてしまう。
昨日彼のシュートを見てから、なんだか私は変だ。
今まであまり気にも留めていなかった流川楓という人間に、たった1日でここまで魅了されてしまうものなのか?
1人で勝手に色々考えていると、唐突に流川くんが目を開いた。
あまりにも突然のことで、流川くんの方を向いたままの体が固まる。
バッチリ目があってしまっている。
パニクっている私を他所に、流川くんは私のことをじっと見つめている。
そしてずいっと、大きな手を差し出してきた。
(?????)
完全に意味がわからない。
私があわあわしていると、流川君が口を開いた。
「見物料」
「へ?」
予想打にしない言葉だったせいで、腑抜けた返事をしてしまった。
そんな私のことはお構いなしに、流川くんはまた口を開いた。
「あんたさっきも俺のこと見てただろ。だから見物料よこせ。」
「え?あっ…」
たしかに、私が流川くんのことを見ていたのは事実だ。
だからといって見物料を請求されるのは納得がいかないが、渋々ポケットの財布に手を伸ばそうとすると、流川くんに遮られた。
「金じゃねぇ。」
「は…?」
またまた予想打にしない言葉が飛び出してきた。
お金じゃないのなら、一体何を見物料として支払えばいいのか。
皆目検討もつかない。
仕方がないので本人に聞いてみる。
「あの、じゃあ、一体何を支払えば…?」
「今日弁当忘れたから弁当よこせ。」
「え、お弁当…?ですか…?」
流川くんは頷いた。
お弁当なんて、私のものを貰うくらいなら、お金を貰って購買で買えばいいのに。
その旨を伝えると、流川くんは首を横に振りながら答えた。
「面倒くせぇ。」
(ええええ、それだけの理由で?!嘘だろ…。)
内心少し呆れつつも、そんな物でいいならと、お弁当は流川くんにあげることにした。
もうすぐ授業が始まってしまうので、今渡すわけにはいかない。
(お弁当はお昼休みになる前にあげよ。)
そんなことを考えながら、教科書をめくった。
続く…
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