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吉田おいちゃん
佐野さんと吉田さんのちょっと特別な日を切り取った話。
会話多めです🪄︎︎
夕食後、キッチンからカトラリーの音が聞こえる。
「勇斗。コーヒー淹れるけど飲む?」
『ん、のむ』
「…あ。紅茶もあるけどどっちがいい?」
『えー、コーヒー』
「でも朝も飲んだし紅茶にする?」
『なんでそんな紅茶推してくんの』
「あ、これ頂いたやつだ。飲むよね?」
『いや飲むけどさ』
「あーいい香り」
『なんで聞いた?』
暫くソファで目を瞑っていると、紅茶の良い香りと微かな足音が聞こえた。
「はい」
『ありがと』
紅茶を渡したかと思えばまたすぐにキッチンへ戻る。
かと思えばなにやらお皿を持ってこちらに来る。
「……あとこれも、はい。」
お皿の上には、キラキラとした焼き色の奥に、やわらかく煮たりんごが隠れているあのお菓子が見えた。
バターの香りが鼻を擽る。
『…え!え、なにこれ!アップルパイ?』
「うん」
『え、めっちゃ美味そう!食べていい?』
「どうぞ」
1口サイズに切り分け、中のリンゴがこぼれないようにそっと口に運ぶと、パイはサクッと音を立てた。
『うんま!…え、これもしかして仁人の手作り?』
「まぁ、はい」
『やっぱり!なんか仁人って感じ』
「何言ってんの」
『まじで美味いってこと!』
「…あぁ、まぁ…それならよかったです」
味わったつもりだが、あっというまにそれはお皿の上から無くなり、もっとゆっくり食べればよかったと僅かに後悔する。
隣に座った仁人も同じようにアップルパイを平らげたところで、自身の肩をトントンとするとその意図を汲み取って頭をこちらに預ける。
『なんで急にアップルパイ?』
「なんかラジオでそんな話になって、なんとなく」
『仁人からのお菓子とか久しぶりじゃね?』
「たしかに。あんまり作った記憶ないかも」
『むかーし…あ、でも2年前くらいか。バレンタインでカップケーキくれたよね?』
「そんなこともありましたねぇ」
『あと昨年、俺の誕生日にケーキ作ってた』
「…ん?え、俺それあげたっけ?」
『いーやもらってない』
「なんで知ってんの…?」
『舜太が仁人からケーキ貰ったとか言ってて。俺の誕生日なのに』
「あれ失敗したから…」
口をもごもごさせる仁人に対抗して、俺も口角を下げて少し頬を膨らます。
『俺も食べたかったのに』
「なぁに、佐野さんヤキモチ?」
『仁人のお菓子が食べれるのは俺の特権なの』
「別にそんなことないですけどね」
『…今度は失敗しても俺が食べるから』
「はいはい」
『…あ、俺あれ食べたい。ハンバーグ』
「お菓子じゃねぇじゃん」
『煮込んだやつ』
「いやまぁ全然いいですけど」
『ありったけの仁人の料理食べたい』
「嬉しいけどあなた太っちゃうんじゃない?」
『仁人のご飯で太るなら別にいい』
「…そうですか。というかあなたも作りなさいよ」
『仁人が太るまでずっと?』
「俺太ったら嫌でしょ」
『いや…。おなかいっぱいにさせてから、俺が食べる』
「そんな養殖じゃないんだから」
紅茶を口に運ぶ仁人をじっと見つめる。
「…え、まって食べるってさ」
やっとわかったか。
『そうそうそっち』
「うわ、ほんと、うわー…」
『だめなの?』
仁人の手に自分の手を重ねる。
「いや………」
『どっち?だめ?』
手を滑らせて腕を掴み、顔を近ずける。
「…紅茶冷めるから」
『答えて仁人』
「……まぁ別に…だめ、じゃない…けど…さ」
やった、勝った。
その言葉を聞いた瞬間、俺は仁人をソファに押し倒す。
「今!?」
『仁人かわいい』
「はやとまって」
『あ、アップルパイ、おいしかったよ』
「…そりゃどうも!!」
紅茶の香りとアップルパイの甘さに囲まれながら、仁人をたっぷり甘やかした。