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『秒針が天を指す時に』

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『秒針が天を指す時に』

1 - 『秒針が天を指す時に』

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2025年07月20日

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プロローグ


ガラスのコップに入れた氷が、カランと涼しげな小気味良い音を立てる。

空は終わりの見えない藍色。目の前には私によく似た少女がひとり。

「私さ、次、時計の針が重なる時に消えちゃうの!」

深夜零時。私の親友はそう言った――。


『秒針が天を指す時に』


『おーい』

―声がする。

『……ん、?』

『あ、起きた?』

お母さんがいるんだろうか。

『…んぅ、?』

ゆっくりと目を開ける。そこには、見慣れた私の部屋…ではなく。ひとりの少女の顔があった。

『だ、誰!?』

少女は、いたずらっぽく笑うと、こういった。

『私はね、あなたのための幽霊だよ!』

それが、私とヒナタの出会いだった。


そんなことがあってから、早2年。私とヒナタはお互いを『親友』と言い、とても仲良くしていた。

このまま、ずっと一緒にいれると思っていた。

「…消え、る、?」

戸惑いが隠せない。

「…どういうこと?」

「そのままの意味だよ」

彼女はどこまでも明るく言う。

「時計の針が、全部ぴったり重なったときに消えちゃうの」

信じたくなかった。

「ほんと、なんだよね…?」

「…うん」

ヒナタは、初めて悲しそうな顔を見せた。

「…ヒナタさ、」

「うん」

「さみしい?」

「そりゃ、さみしいよ」

重ねるように言葉が返ってくる。

「私もだよ」

目頭が熱い。

横に座るヒナタの目から、きれいな雫がこぼれた。

「…私も、泣いちゃうよ」

声が、震える。

…思い出が、こぼれる。


追憶


ねえ、覚えてる?

初めて会った時のこと。

私も驚いたけど、嬉しかったんだよ。

自分にすごく似てる人に会えたこと。

絶対、仲良くなれるって思った。

実際、仲良くなれたよね。

ほんとによかった。

でも、

なんで?

なんで消えちゃうの?

ずっと一緒にいようって言ったよね。

なんで?

嘘だったの?

私は信じてたよ。

今度こそ、ずっと一緒にいれるって。

前は、いなくなっちゃったから。

え?

…覚えてないの?

なんで?

ほんとに?

どうして?

じゃあ、私が誰かもわかってないの?

ねえ、ほんとに?

ひどい…。

ひどすぎる。

自分で自分を殺しておいて、何なの?

私はあなたのせいで消えたんだよ。

でもね、ここに戻ってこれた。

きっと、あなたも全部覚えていて、全部話したら、謝ってもらえると思ってた。

ううん。

謝らなくていい。

ずっと一緒にいてくれればいいの。

そう、ずっと一緒に。


すべての終わり


私は、あなた。

私が、幽霊。

ねえ、ひなた?

今度こそ、ずっと一緒にいようね―――。

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