プレゼントを許してください
甘酸っぱい恋、ほろ苦い恋…
それら全て、叶うとは限らない。
「愛してる」
そんな言葉が自分に向けてだったら、
どれだけ嬉しかった。
名前も何も知らない女の人へ向けた、
五文字に詰められた愛のプレゼント。
女の人は頬を赤らめ、
彼も楽しそうに笑っている。
あれでいいんだ、あれが彼の幸せ、
応援するだけ。
ポツ、ポツと空から降ってきたプレゼント。
彼は慌てて傘をさし、
女の人と一緒に傘の下で空を見上げる。
傘も何も持っていない俺は、
その冷たいプレゼントを
受け取るしかなかった。
つっ立ってると、彼がこちらを向いた。
彼は女の人に何かを告げ、
傘を渡し、走ってこっちに来た。
「こんなとこで、何しとるん?」
心配の顔。
「心配」という名の、残酷なプレゼント。
本人は、彼は、
ただ優しいだけなのに。
俺が歪んだから、形が合わなくて、
ぶつけてしまう。
「別に大丈夫、あの人のとこ行きなよ。
待たせてるんでしょ。」
叶えたいと未だ願っている恋のはずなのに、
自ら遠くに追いやるんだ。
「ほっとけるわけないやろ」
それすらも、愛の言葉に聴こえて
「ほら、家まで送ったる」
やめて
「大丈夫、一人で帰れるから」
「ふらふらやで?体調悪いんやろ?」
やめて
「ありがとね。でも、
ほんとに大丈夫だから」
「前もそう言って
体調崩したやん」
やめてって
「本当に大丈夫、ほら、行ってきなよ。」
「もう今日は帰ろって言っといたから、
ほら、りうらんち行くで。」
心臓がうるさい
やめて
「やめてよ」
「え?」
「やめて」
やめて
やめてやめて
「やめてよ」
「りうら?」
やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて
「…やさしいの…いやだ…、」
「りう、ら?」
バシャンッ!
「……」
なんでかはわからん。
…友人が急に倒れて、病院で眠っている。
医者によると、寝てるだけだから、
心配いらない…とは言ってた。
でも、目の前のりうらは
「…はふっ、…はー、ふっ…ふーっ、…」
眉間にしわよせて、布団握りしめて、
汗だくで、涙ためて、息も荒くて、
悪夢に、
うなされているようにしか見えない。
悪夢を見ている中で、
俺の名前を呼んでる。
「…あに、き…あにき、…あに、、き、ッ」
とても苦しそうに、とても辛そうに。
「…ここにおるで」
寝言に返事をする。
なんで俺の名前を呼ぶのかは、
さっぱりわからん。
りうら、…彼に向けた感情を隠すために、
わざわざあいつと付き合ったんに。
この気持ちは、
もう終わりだって、
決めたはずなんよ。
…なのに、
「…また、近寄って…どうすんねん…」
ずっと俺の名前を呼ぶその口に、
世界一汚く、醜い、
欲望のままのプレゼントをした。
彼らは受け取るしかないんでしょうか。
…「運命」という、プレゼントを。
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