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突然のことに呆然として黙り込んでいると、
「気が乗りませんか?」
と、彼から問いかけられた。
「そういうことではなくて……」
と、頭を横に振る。
「……なんだか夢みたいで、まだ少し信じられないだけで……」
素直な気持ちを口にすると、
「クリスマスシーズンはだいぶ先のことなので、その時までにあなたの気持ちが整えばと……」
頬が両手で挟まれて、私の気を落ち着かせるようにふっと柔らかく唇が寄せられた。
「それに、あなたがどうしても嫌なら、キャンセルをすればいいのですから」
「そんな……嫌になることなんてないです。ちょっと混乱をしてしまっただけなので、挙式を考えていただいてとっても嬉しく思っていますし、幸せです。ありがとうございます」
心に浮かぶ想いを言葉にして伝えると、彼は微笑んで、
「よかった。私も、とても幸せですよ」
もう一度、今度は少し長めに唇が重ねられた……。
ドイツの古城でのウェディングを、彼と一緒にネットで眺めた──。
「ここは、どうですか?」
ドイツにある、挙式のできるお城が画面に映し出されると、
「……素敵、ですね…」
その初めて見る美しく煌びやかな雰囲気に目が奪われて、ただ圧倒されるようだった。
「ここは、ホーエンツォレルン城と言います。チャペルのステンドグラスが綺麗ですので、きっと君のウェディングドレス姿にも映えるはずです」
「……はい」
彼の言葉に写真を見てみるけれど、こんな場所で自分が結婚式をするなんて、やっぱりまだあまり想像がつかなかった。
「他も見てみますか?」
彼が選択肢にと色々な所を見せてくれる。お城の外観や内部はどれもが圧巻の華やかさだったけれど、まるでおとぎ話か何かの世界を見ているようにも感じられた……。
いくつかドイツのお城を見せてもらった後で、「どちらがよかったですか?」と、尋ねられた。
しばらく考えて、「……。……どれも素敵でしたけれど、初めに見たのが一番好きかもしれないです」と、印象の強かったものを話した。
「では、ホーエンツォレルン城での挙式を手配しておきますので」
言う彼に、「こんなに素晴らしい結婚式を考えてくれて、本当に嬉しいです……」感謝を伝えると、「いいえ」と、首が左右に振られた。
「式の主役は女性ですので、あなたのウェディングドレス姿を見られるのを楽しみにしていますね」
その言葉に、彼のタキシード姿もとても魅力的で、きっと本物のプリンスさながらに優美なんだろうなと思わずにはいられなかった……。