西の4人で遊びに行く話。ほのぼの。
hsrb視点
ライは、いつも増して朝からテンションが高かった。大きな目がキラキラ輝いている。今日の予定は、男4人でテーマパークに行くこと。
「…よりによって、なんで俺まで…」
コーヒーを貧しく啜る小柳くんがぽつりと呟く。それを聞いてカゲツが苦笑するも、彼もその被害者の一員だ。きっかけは数日前のことだった。
「なんかいなみ、最近、調子悪くない?」
え、と声を出すと、カゲツは慌てて首を振った。
「あー、悪口やなくて。よく疲れてることが多いなって」
ほら、とカゲツが目配せをした先には、ライがソファで充電が切れたように寝ていた。手に持っていたのは報告書のファイル。機械の特許証やメカニックの依頼書が一緒に詰められている。ライに報告書を任せていた俺らにも責任はあるわけで。
「たしかに。今度の休み、ライのやりたいこと聞いてみる?」
「え、あり。」
カゲツがライを揺らす。
「いなみ〜、ココで寝たら風邪ひく」
「ん…」
「おーきーて」
「あと5ふん…」
「5分で起きれんやろー?」
「いける…」
「あ、せや。いなみ、今週末やりたいことない?」
その提案を聞いたライは急に目を大きくした。
「お、食いついた」
「目、覚めた。何それ。何でもいいの?」
ライは俺らのスケジュールまで割と把握しているので、今週末全員の予定のないことは知っているようだった。カゲツが頷くと、ライは少し考えてニヤリと笑った。
「じゃあさ、ココ行きたい」
差し出されたスマホには、紫とピンクの混ざったホームページが映し出されていた。
パステルカラーの雲やユニコーンがテーマの夢みたいなテーマパークで、可愛いキャラクターがいっぱい。ピンクとラベンダーの建物、ふわふわの雲のアトラクション、キラキラのイルミネーションが売りだ。
「よし、全部回る」
ライはスマホを握って、園内の地図を確認している。
「朝から元気すぎない?」
「星導だってカチューシャ買ってるくせに」
「まあね。あのユニコーンの乗り物、絶対乗るわ」
「そうこなくっちゃ」
ニヤリと笑うと、カゲツがため息をつく。
「……なんでぼくがこんなとこに…」
小柳くんも似たように渋い顔をしている。無理やり買わされたカチューシャをつけているのが想像以上に表情とアンバランスで面白い。笑ったらちゃんと帰りそうなので黙っておくことにした。
「お前ら、絶対楽しいから!」
ライが全員の肩を叩く。巨大な虹のアーチで、ピンクの雲が浮かんでるみたいなゲートを潜れば、そこはもう完全に現実とは思えないほどの空間だった。
「見て見て!あれ、メリーゴーランド! 乗ろうよ!」
ライが先頭を切って走り出す。笑いながらついていく。
「じゃあ俺はピンクのユニコーンに乗る。コイツかわいい」
「え、じゃあオレこのちっちゃい子にしよ!」
カゲツと小柳くんは渋々ついてきていた。覚悟を決めた顔と、まだ納得いってない顔。
「……男4人でユニコーンって、ヤバいだろ」
「……乗るか」
メリーゴーランドに乗ると、パステルカラーの音楽が流れて、ふわふわ回る。ライは大声で笑いながら手を振る。
「最高! お前ら、もっと楽しめよー!」
隣のユニコーンからポーズを取ると、ライは子どものようにけらけら笑った。
「あははwwwめっちゃかわいい wwwwwwwwwwwwww」
カゲツも小柳くんも、最初は本当に嫌そうな顔をしていたのに、今となっては少しだけ笑顔が浮かんでいる。なんだ、楽しんでんじゃん。
次は雲の上のボートライド。ふわふわの雲を模したボートで、夢みたいな世界を進むアトラクションだ。ライが積極的にボートを漕いでいる。
「漕いでんのオレだけじゃん!ほら、小柳も…って」
「お前さあ…w」
ライが買ったぬいぐるみを持ってあげていた小柳くんがライを小突く。いて、と頭を押さえて、ライは笑った。
「ごめんごめん!ちゃんとオレのせいだったわ笑」
お昼はパステルカラーのスイーツカフェで。ユニコーン型のケーキや、雲みたいな綿あめ。
「これ、食べるのもったいな!」
ライが大きな綿飴を抱える。
「オレの顔よりデカいんじゃない!?」
「あ、小顔アピ結構です」
「いや別にしてねえよ」
夕方のパレードでは、キラキラのフロートが登場。ライが一番前で手を振って大興奮。
「やば、めっちゃかわいい!」
ライの写真を撮る手が止まらない間、2人の様子を見ていると、しっかりパレードに見惚れていた。暗殺者と忍者だもんね。こんな機会あんまないよね。…いや、メカニックも鑑定士も、てか男4人で来るのも珍しいか。なんならDyticaで外行くのが珍しい。
帰りの電車で、ライが満足げに言う。
「オレの我儘に付き合ってくれてありがとう。超楽しかった」
「リフレッシュできた?」
「もうめちゃくちゃ」
ライは俺たちを見て、にっこり笑う。
「案外楽しかったでしょ?」
「まぁ…」
カゲツと小柳くんは、小さく頷いた。
「またまたそんな顔して。今だってカチューシャまだ着けてんじゃん」
慌てたようにカチューシャを取る2人。
「堂々とつけたって良いのに。かわいいじゃん」
「かわいさはもういい」
「なんでよー。顔良いのに、もったいない」
「別に関係ないだろそれ」
あはは、とライが何度目かわからない笑顔を浮かべる。ライの笑顔が一番輝いてた一日だった。リフレッシュになったのなら、全てヨシ。
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