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「それでは中に入りましょう。倒した魔物の魔石や、素材になりそうな死骸は私が回収します。照明魔法も私が起動します。ですので皆さんは警戒と魔物討伐、ルート開拓に専念して下さい」
「わかったニャ」
「わかりました」
「わかりました」
俺としてもそうしてくれると助かる。
特に今のように、ある程度の範囲の敵を一気に倒した場合は。
あちこちに感電して倒れた魔物の死骸がある。
魔石は魔力反応があるから、見逃す事はない。
しかし、これだけ死骸があると、手動で回収すると時間が掛かる。
転送魔法を使うと、その分魔力を消耗する。
この先でも魔法で攻撃をする必要があるなら、魔力は出来るだけ残しておいた方がいい。
それに回収作業をしなければ、その分、魔力探査と透視魔法による索敵に集中できる。
「それニャあ、基本的に本坑を真っ直ぐ進むのニャ。何かありそうならエイダン、よろしくなのニャ」
「わかりました」
ミーニャさんにあわせて、ゆっくり歩き出す。
電撃が通った60m程度の間は、魔物も魔獣もいない。
しかし、その先は――。
「60m位先から、小さめの魔物反応がそこここにあります。ポイズンスライムとポイズントードですけれど、またある程度近づいたら、電撃でいいでしょうか」
「そうしてくれると楽なのニャ。ポイスラもポイトドも毒を飛ばしてくるので面倒なのニャ。クリスタがいるから解毒は問題ニャいけど、毒に触れると装備とお肌が荒れるのニャ」
ミーニャさん的には、まだ全然余裕っぽい感じだ。
お肌が荒れるのを気にする程度という事だから。
電撃魔法を放って、50m位進んでを更に2回。
入口から150m程度進んだところで、様子が違う場所に出た。
ちょっとした広場のようになっていて、道が3つに分かれている。
右がこの鉱山初期の採掘坑で、廃坑になった頃は倉庫代わりになっていた場所。
中央が廃坑当時に掘っていた採掘場所へ続く坑道。
左がドワーフの居住区や生活関連施設を経て、カサクラの村に出る洞窟。
ただしカサクラの村への出口は急な下り階段で、かつ今は閉鎖されている筈だ。
進むべきなのは中央の坑道。
ただし魔物や魔獣に挟撃されないよう、左右の坑道の先に魔物や魔獣がいないか確認する必要がある。
「エイダン、どうかニャ、左右は」
右は何も反応が無い。
問題は左だ。小さい反応が多数ある。これは……。
「左の居住区にゾンビバットがいるようです。数は30匹以上。ただ居住区は個室が多くて、雷撃魔法で一掃は無理な感じです」
洞窟内に居住区を設けるのはドワーフの習性だ。
少なくとも前世ではそうだった。
そして居住区は、店だの家だのといった小洞窟があちこちに掘られているので、ひとつひとつを回ると手間がかかる。
「わかったのニャ。なら私とジョンの出番なのニャ。バット系の魔物は、敵の気配が一定以上近づくと飛んで、攻撃か逃げるかしてくるのニャ。それを利用して叩くニャ」
つまり近づいて攻撃という訳か。
でも逃げられたら面倒だよな。
そう思ったら、更にミーニャさんが説明を追加する。
「逃げるバットには、ジョンに弓で攻撃して欲しいのニャ。必ずしも当てなくていいのニャ。こちらが攻撃する意図があると、バットにわからせればいいのニャ。そうすれば、逃げようとしたバットも逃げずに攻撃してくるのニャ」
「わかりました。それで、弓で攻撃したバットが近づいてきた場合は、槍に持ち替えればいいですか」
確かに弓で攻撃されたバットは、第一にジョンを狙ってくるだろう。
そして飛んでいる敵に矢を当てるのは難しそうだ。
そう思ったのだが、ミーニャさんは首を横に振った。
「ジョンは弓に専念して欲しいのニャ。そのかわり、近づいたバットは必ず私が倒すのニャ。たかだか100匹以下なら問題無いのニャ」
100匹が一斉に飛んで襲ってくるって、結構な修羅場ではないのだろうか。
まあ今回は、多くても40匹程度だけれど。
「わかりました」
大丈夫なのだろうか、ジョンは。
クリスタさんが何も言わない時点で、問題はないだろうと思うけれど。
「それじゃジョン、槍を貸して欲しいのニャ。もう1本の槍もエイダンに持ってきて貰っているのニャが、そっちの長い槍の方がバットを相手にしやすいのニャ」
おっと、それじゃジョンが、弓以外の武器無しになってしまう。
そこは近接戦用に何かあった方が安心だろう。
でもミーニャさん用の武器は、基本的にジョンには重すぎる。
となると、ちょうどいいのは……。
俺は取り敢えず、一番自衛用に良さそうな刃物を、魔法収納から出す。
「近接戦闘用が無しじゃ何だから、これを貸すよ」
渡したのは、ソウギョを捌くために作った出刃包丁だ。
一応、鞘もついているし、ベルトに留められるようにもなっている。
それに刃物としての性能は、その辺のナイフより上の筈だ。
「悪いな、それじゃ借りていく」
「ああ。そっちは任せた」
ミーニャさんは、俺とジョンのやりとりを見て、そして頷いた。
「それじゃ2人で、ちょいちょいとバットを討伐してくるのニャ。そう時間はかからニャいと思うから、のんびりここで待っていてほしいのニャ」
そう言って、去って行く2人を見て、俺は思った。
いいのだろうか、後衛を置いて前衛だけで出て行くなんてと。
しかし後方の魔物は全滅させている。
前方は真っ直ぐに近い坑道なので、俺の電撃魔法が使えるだろう。
そもそもクリスタさんがいる時点で、どうにでもなるような気がする。
だから置いて行かれた後衛が危険という事は、多分、無い。
そしてジョン達の方も、多分問題ないのだろう。
ミーニャさん、バット100匹以下なら全然余裕という感じだ。
ジョンがいなくても、どうにでもなる位に。
それでもジョンを連れて行くのは、こういった場で、どれくらい戦力になるか確かめるためだろう。
ジョンもそのことは、わかっているだろうけれど。