カラン、とどこかで空き缶が転がる音が聞こえて、悠佑はビクッとからだを強ばらせた。
深夜。人の気配などないひっそりした夜道を、悠佑は1人で歩いていた。
ああ、もう。最悪や…。
今日は大人組で集まって、今後のことを話し合うという名目で飲み会をしていた。
会場は恒例のないこの家。話は弾み、なにかのきっかけでifがテレビをつけたのが運の尽きだった。
いきなり流れる恐怖映像。たまたま放送されていたホラー映画。普段なら絶対見ないのに、油断していたせいでモロに見てしまった。
「あにき〜?」
固まってしまった悠佑の顔を、何となく楽しそうな2人が覗き込んでくる。
立ち上がる悠佑。帰る、と一言言いおいて、逃げるようにないこの家をでた。
家へと向かう悠佑の足は自然と早くなっていく。
何かが後ろからついてきているような…?いや、自分の足音か?
軽くパニック状態。最後には駆け足になっていた。
「……嘘やろ?」
息を切らしながら自宅の前へ着き鍵を開けようとポケットをさぐるが、見当たらない。
ないこの家?それとも落とした?
戻るのか、この道を……。
もう泣きそうになりながら呆然としていると。
ぽん、と肩をたたかれた。
「〜〜~~~!!!!!!!」
辺りに大きな悲鳴が響きわった。
「………。」
部屋の中で悠佑はパーカーのフードをすっぽり頭に被って背を向けていた。
傍らで爆笑しているないこ。
「わらいすぎやで、ないこ。」
そういうifも、声も肩も震えている。
「いやー、可愛いなーうちの最年長は!」
「~~うるさいうるさい!可愛いってなんやねん!」
「驚かしてごめんな?あにきが出てったあと鍵落ちてるのみつけたからさー。」
「……………それは助かった。ありがとう。」
「〜っ、素直!カワイイヨー!!」
「!やめろや、離せ!」
ないこにだきつかれ、悠佑は腕から逃れようともがく。その拍子にフードが外れ真っ赤になった顔が顕になった。
「顔真っ赤やで、てれにきやん!」
それを見て更にないふが囃し立てる。
「あーもう、やめれや!もうお前ら帰れ!」
「えー、帰っちゃっていいの?あにき、今日1人で眠れる?」
「ね、眠れるし!」
「本当に?今にも泣きそうな顔で走って帰ってきたのに?」
「………シナ〇ン抱っこして寝るし。」
そばにあったシナ〇ンのぬいぐるみをしっかり抱きかかえる悠佑。
ないふはちょっと顔を見合わせてから、立ち上がった。
「じゃ、帰るわ。」
「お邪魔しました。」
そのまま玄関へと向かう。
「あ……。」
リビングの扉が閉められる。耳を済ますがなんの音もしなくなった。
もう、帰っちゃったか……?
悠佑はそっと扉を開けて廊下に顔を出した。
と、目の前に2対の長い足。視線を上に向けると、にやにやとこちらを見ているないふがいた。
「お前ら………!」
「悠佑くん、何してるのかな?」
「いや、俺は帰ったか見ようとしただけで……。」
「そやんな。でも、もうこんな時間やし俺らも家帰るの面倒くさいからあにきん家泊まってもええ?」
「……そっか。俺が鍵忘れたせいやしな!わかった、泊まっていき!」
ニコニコと笑顔を見せて、悠佑はもう一度ないふを部屋へと招いた。部屋を用意してくる、と上機嫌でリビングを出ていった。
「……素直に怖いから泊まっていって、くらい言ってくれたらいいのに。ほんと甘え下手なんだから。」
「一言言ってくれたら、喜んで添い寝でもなんでもしてやるんにな。」
「ま、そんなとこも推しポイントだけどね。」
「そやな。あにきっずとして、ここはこっちが歩み寄ってやるか。」
廊下から、用意出来たと悠佑の声が聞こえた。ないふはこっそり笑いあって、はーいと返事をして悠佑の元へと向かった。
………………………はい。終わりです。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました
(◍•ᴗ•◍)
コメント
3件
ありがとうございます(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 漫画風にしてくれるんですか!? 嬉しいです楽しみにしてます👍👍✨
待って可愛い、…… 個人的にめっちゃきゅんってきました! こわがっちゃう黒もついついいじめちゃう桃青も最高です! あの、是非このストーリーを漫画風にしてもよろしいでしょうか…?