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「フ ジャンボ! アリシアいないか…… 残念ね」


鮮やかな太陽の色、オレンジ一色の装束に身を包んだ、褐色の肌を持った女性が話し掛けて来た。

黙っていようと決めていたコユキであったが、反射的に返事をしてしまった。


「シ ジャンボ! って、あ…… ごめんなさい……」


彼女は喜色満面の笑顔を湛えて口にするのだった。


「ごめん、ちがう! アリシアは大事! でも、エンカの故郷、ニホン、同じ位、大事ネ!」


何だかコユキをフォローしてくれてるみたいだった、優しい、コユキもスワヒリ語圏の人をチョット好きになった瞬間であった。


でも、アリシアって誰だろう?

そう思った瞬間、カレーっぽいサンスクリット女子が重ねて言葉にした。


「強大な魔を感じちゃった! これアリシア、真なる聖女いないと祓(はら)えない! どうする? キャス? タンドリーチキン」


この語尾…… 絶対に適当に付けてるだろう、梅干! っとコユキは真似しながら思った。

そして、新たな声がその場に響いた。


「ズドラーストヴィチェ、貴方達、新世代は未だ知らなかったのねコフ、アリシアとラーシュの悲劇のお話しをニコフ」


ゴージャスな赤と白のドレスでその身を包んだ、語尾から察するにロシアっぽい貫禄のある女性が言葉を発し、コユキ含んだ全員が彼女を見つめた。


「スウェーデンの聖女、いいえ我々イノセンス・メイデンズのリーダー、真なる聖女、アリシア・ニルソンと彼女のパートナー、聖魔騎士ラーシュ・ヨハンソンの二人は…… 二十四年前、ある高位悪魔の討伐に、クラックに入って行ったキリ…… 行方知れずになっているのよ、コフ」


「え、ほんと! アンビリバヴォー!!」


「まじアルカ……」


「やばいカレー、信じられないチャイ」


「うそだ! シリキウトゥンドゥ!」


「ごめんねコフ、マジなのよヴィチ」


一様にショック状態であるようだ、聖女ショックっ!!


そのメンバーの中でも若手、コユキと同い年のキャシーの発言力は、国力と比例して高い様で、WWW2後の世界ではやはり一目置かれている様であった。

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「待って! 仮に大魔を祓(はら)えなかったとしても、今回の魔界クラックを見つけられたのは僥倖(ぎょうこう)! 敵性勢力を確実に削り取る事が出来るでショー! それをワタシの親友、コユキが成し遂げた事に、まずはイノセンス・メイデンズ全員で祝福を送るべき、べき? ん、んんんん? !?」


四桐(シキリ)鯛男(タイオ)ばりに、仕切り始めていたキャシーは、コユキの両手に握られていたかぎ棒を目にした途端に、目を剥いてビックリ仰天の顔をした。

そして、コユキに聞いたのであった。


「ね、ねぇコユキ? アンタなんで神器…… 二つ持ってんの?」


「え、これ? かぎ棒の事? えっと、予備だけど…… だめなのん?」


コユキの返答に答えず、コユキの横でハグハグ羊羹を頬張っている善悪に目を移して、キャシーは少し緊張気味に声を掛けた。


「アンタ、あ、隣のクラス委員長だったコーフクだよね? ねぇ、アンタの持ってる黒いの、それなんなの?」


答える善悪。


「ん、これでござるか? これは、僕ちんがお爺ちゃんから渡された念珠、半生ムニ、いやアンラ・マンユでござるよ」


その言葉を聞いた聖女たち、いやその言葉が聞こえた至近にいた全ての聖女、聖戦士も揃って、戦いを放棄して膝を付いて丁寧すぎる礼をするのであった。


キャシーがコユキと善悪に告げた。


「真なる聖女様、そして封印の担い手、聖魔騎士様に我等の尊崇(そんすう)を捧げます」


と。


何が何やら訳ワカメのコユキと善悪に対して、大きい体と裏腹に親切なロシアの聖女、ナターシャが丁寧な説明をしてくれたのであった。

 彼女が語った内容に、コユキと善悪の二人は大いに驚かされるのであった。

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