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『察し良いね~、アンタ。』
kuちゃんという呼び方が消えた。たったそれだけなのに空気がまるで違う。
奴は笑顔で近づいてくる。
『やっぱ君頭いいね――』
しかしその目に光はなかった。
『でもね、少し遅かったんじゃない?』
grgnがそう言った時、lorが俺の袖を強く引いた。
『はやく、にげ、て』
次の瞬間、俺達は走っていた。
曲がり角を一つ、二つ、三つ。
同じ壁、同じ床、同じ匂い。
なのに背中の気配だけは確実に近付いてくる。
『待ってよ~疲れるんだけど?』
いくら走っても気配との距離は変わらない。
俺は奴のあの言葉を気にしている。
“ここねー、むやみやたらに歩くと詰むんだよね”
しかしlorは俺の手を強く握りながら、
『こっち』
と角をためらいなく曲がっていく。
まるで、この迷路の正解を知っているみたいに。
息が切れる。肺が焼ける。
後ろを見るなと本能が言っている。
それでも、一瞬だけ振り返った。
ーーいない。
さっきまであんなに近かったのに姿が消えている。
「は……?」
安堵しかけた、その時。
『どこ見てんの?』
真横から声がした。
反射的に顔を向ける。
そこにはgrgnがいた。
『横、空いてるよ?』
そう言って笑っている。
ギザ歯が異様に白く見えた。
「ッ、lor!」
叫んだ瞬間、視界が歪んだ。
足元の感覚が消える。
床が、無い。
「は…?」
そのまま体が傾いた。
ーー落ちた。