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境内に続く参道を歩いていると、前方から浴衣姿の女の子が手を振ってくる。
「咲ー! やっと見つけた!」
息を切らしながら駆け寄ってきたのは、美優だった。
「ごめん、待たせちゃって……!」
咲が安心して笑みを返そうとしたその隣に、見慣れた背の高い影があった。
「……お兄ちゃん?」
兄の姿に咲は目を瞬かせる。どうやら偶然、美優と合流していたらしい。
「お前ら、こんなとこで会うとか奇遇だな」
亮は頭をかきながら、少し照れくさそうに笑う。
「お兄ちゃんも来てたの?」と咲が驚くと、美優が頷く。
「さっき屋台で会って……一緒に回ってくれるって」
すると亮が横目で美優を見て、にやっと笑った。
「美優ちゃんはちっこいガキの頃から知ってるからな。こうして浴衣なんて着てると、変な感じだわ」
「ちっこいガキって! もう子どもじゃないです!」
ぷくっと頬をふくらませる美優に、亮はケラケラ笑う。
そんな二人のやりとりに、咲は思わず吹き出した。
(……なんか楽しそう。見てるこっちが笑っちゃうな)
悠真も隣で小さく笑い、「仲いいんだな、あの二人」とつぶやいた。
祭囃子に混じる笑い声が、夏の夜をいっそう華やかにしていた。