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佐々木美咲は、あの放課後から少しずつ自分の気持ちに変化が起きていることを感じていた。毎日のように、彼――佐藤智也が自分の目の前に現れる度に、胸が高鳴り、心の中で彼のことを考える時間が増えていった。彼の笑顔、彼の声、そして何気ない仕草が、いつも心を奪っていく。美咲は、これが恋だと気づくのに、あまりにも時間がかかりすぎたような気がした。
あの日から、智也とは顔を合わせる度に、何度も目が合うようになった。最初は偶然だと思っていたけれど、次第に智也の方からも意識しているような気配を感じ始めた。彼の視線に込められた何かが、美咲を緊張させる。彼の目に自分が映っているという事実に、胸が苦しくなるほどの興奮を覚えた。
ある日、放課後。いつものように教室を出た美咲は、外に出て帰る準備をしていた。すると、遠くの方で智也が友達と話しているのが見えた。その姿を目にすると、無意識のうちに足が止まった。智也が笑いながら話している様子が、何故か美咲の心を締めつける。彼と話すことはおろか、まだ一言も交わしたことがないのに、どうしてこんなにも心がざわつくのか。
その時、美咲はふと、彼の方に目を向けた。そして、その瞬間――智也がこちらを見て、軽く微笑んだ。
その微笑みが、美咲の全身を震わせた。彼が自分に向けて微笑んでいる。これまでの人生で、こんなにも自分に向けて笑顔をくれた人はいなかった。彼の笑顔はまるで太陽のように温かく、美咲の心の奥底に火を灯した。
「…智也くん、私、あなたのことを…」
その瞬間、思わず心の中で呟いてしまった。美咲は自分の気持ちがこんなにも強くなっていたことに驚き、同時にその思いをどうすればいいのか分からなかった。
しかし、智也はすぐに友達と話を再開したため、美咲はその場を離れることにした。彼との距離が遠すぎて、どうしても彼に近づく勇気が持てない自分がもどかしく、やり場のない気持ちが溢れた。
その日の夜、美咲は自分の部屋で、一日中考えていた。智也のことが頭から離れなかった。何度も何度も彼の微笑みが浮かび、胸が苦しくなった。これが恋だということに気づいた時、どうしてこんなにも心が痛むのだろうと思った。
「どうして、こんなに…」
美咲は顔を両手で覆い、涙をこらえた。自分の気持ちがこんなにも重くて、どうしていいのか分からない。でも、智也と関わるたびに、何かが少しずつ変わっていく気がした。彼の存在が、確実に自分の世界を変えていっている。
次の日の朝、美咲はいつものように学校に向かう準備をしていた。制服を整えながら、心の中で自分に言い聞かせるようにした。
「今日は、少しでも智也くんと話せたらいいな…」
それは、ただの願いだった。でも、心の中では確信していた。いつか、彼と自分の距離が縮まる日が来ることを。
そして、学校に着いた美咲は、やはりいつものように教室の隅で静かに座っていた。だが、今日は何かが違う。教室の扉が開く音に反応して、ふと顔を上げると、智也が入ってきた。その瞬間、彼の視線が美咲に向けられた。そして、また、彼の微笑みが彼女を包み込んだ。
「おはよう、美咲」
その一言に、美咲の心は一気に高鳴った。智也が、ついに自分に声をかけてくれたのだ。
「お、おはようございます…」
美咲は、うわずった声で答えると、顔を赤くして目をそらした。智也の顔が近くにあるだけで、どうしてこんなにも緊張してしまうのか。彼の笑顔が、また自分を掴んで離さない。
その瞬間、美咲は再び気づいた。智也に心を奪われたのだと。そして、今後もずっと、彼のことを想い続けることになるのだと感じた。