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澪蔦の家は左大臣派に属しており、それと対立している右大臣派があった。そして今日、その右大臣派の密偵が屋敷に忍んでいるかもしれないと言う知らせが回ってきていた。


朝いつものように紘貴が澪蔦のことを起こすために障子を開けると、こちらを見た澪蔦の表情はとても怯えているようだった。それもそのはず、昨夜襲われたのだから。その表情に紘貴は何も感じていないふりをして、起こす役割が終わりその場を後にしていった。

その後澪蔦が身支度をしていると、侍従が澪蔦を訪ねてきた者がいることを知らせにきた。今までは歌合せの時くらいしか外へ出ることがなかったので、自身を訪ねる客に心当たりがなかった。



「私は以前歌合せでご一緒したたかむらと申します。」

客はそう挨拶してきた。

歌合せの場には大人数が集まり、一人一人のことを認識できていなかったが、言われてみればいたような気もするのでとりあえず要件を聞くことにした。

「澪蔦様の詩はとても素晴らしく、今では地位も高くなってきています。なので是非とも澪蔦様には天皇の前で詩を詠んで欲しいと思っています」

そう頼まれ、本当はそんな重大なことを受けることはとても不安だったが、押しに弱い澪蔦は承諾してしまった。


日が暮れ、昨夜までなら二人はいつも庭園で詩を詠み、聞くという時間を過ごしていたが今日はどちらも姿を現すことはなかった。

澪蔦は既に褥についており、部屋は静寂に包まれていた。しかしその静寂を破る者がいた。


「おい!澪蔦様の部屋に夜盗が入ったって本当かよ!」

そう生き生きと発したのは紘貴の部下であり、親友でもある桂丸だった。 今、二人は澪蔦の危険を聞きつけ、飛ぶような速さで部屋へ向かっている途中だった。すると、向かいの縁側から何者かが走ってくるのが見え、二人は構える。手に巻物を持っているので、案の定噂の夜盗のようだった。だが顔が隠れるように武装していて正体は明らかにはなりそうにない。とりあえず捕えるため、こちらから攻撃を仕掛けることにし、桂丸が刀を振る。ところが夜盗はその攻撃を軽々と交わし、屋根へ飛び乗りそのまま姿を消してしまった。

「くっ…逃したか」桂丸は悔しそうに呟き夜盗が逃げていった方角を眺めていた。

紘貴はこうしてはいられないと、澪蔦の無事を確認するため、部屋の障子を吹き飛ぶのではないかと心配になるような勢いで開け放つ。

するとそこには、紘貴が想像していた最悪な光景は無く、心地良く眠りにつく澪蔦がおり、紘貴は安堵に胸を撫で下ろす。 だが、紘貴が勢いよく障子を開けたことで眠りから覚めてしまったようで澪蔦はこちらに視線を向けてきた。

そんな状況に紘貴は、このままではまた怯えさせてしまうと思い、障子を閉めてから速やかにその場から立ち去った。



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わ…今回はスリル満点の回でした!! 紘貴が心の中では後悔?悲しくなってるの可愛いですね、!

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