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ゴーレム討伐から数日後。
アリスとシルヴィは家から出て行った。
どうやら、彼女たちはこれから二人でゴールドバクトの村に行く予定らしい。
そこで買い物をするのだという。
二人を見送った後、リオンはロゼッタに尋ねた。
以前に、ロゼッタが口にしていたことが少し気になっていたのだ。
「そういえば、以前『魔眼』の素質があるのかもしれない』って言いましたけど、どうしてそんなことが言えるんですか?」
「そうだね。まずはリオンくんのゴーレムに対する異常なまでの観察力。そして戦闘における的確な判断力。それらを総合して考えた結果かな」
「なるほど」
ロゼッタはアリスとシルヴィから、ゴーレムと戦った際のリオンの様子を聞いていた。
そしてそれを独自にまとめ、資料を制作していた。
その資料を見ながら、リオンに尋ねていく。
確かに、リオンは自分の力を過信せず冷静に分析し、戦い方を考えていた。それはゴーレムに対しても例外ではなかった。
「それに、私の剣を使ったときもゴーレムの動きを正確に捉えていたという。恐らく、その時にゴーレムの魔力の流れを感じたんだろう」
「魔力の流れ…」
以前、ゴーレムと戦った際にリオンは魔力の波動のようなものを感じ取っていた。
あれはロゼッタが言う通り、魔力が放出されているものだったのだろう。
リオンは納得したようにうなずいた。
一方、ロゼッタはリオンを見て何かを思い出したような表情を浮かべた。
「そういえば、前に私が言ったことを覚えているかい?」
「えっと…確か、『マナ』を見ることができる瞳のことを魔眼と呼ぶ…みたいなことでしたっけ?」
「ああ、そうだよ」
ロゼッタは肯定するようにうなずく。
そして魔眼について軽く説明をした。
魔眼とはその名の通り、マナを見ることができる瞳のことだ。
ただ、この世界で魔眼を持つ者はあまり多くない。
なぜなら、魔眼というのは非常に貴重なものだからである、と。
「貴重?」
「ああ、そうだ」
ロゼッタ曰く、魔眼の持ち主はとても珍しい存在であるという。
そんな人間がいれば国が大騒ぎになるレベルだという。
さすがに多少は大げさに言っているのかもしれないが…
「でも、俺はそんな話を聞いたことはありません」
「当然だ。そもそも、魔眼を持つ人間自体あまりいないんだ。そのせいで、その存在自体があまり知られていないんだよ」
「そうなんですか」
「ああ。そして、もう一つ重要なことがある」
「それは、魔眼の能力についてだ」
「能力?」
「ああ。実は魔眼の中には特殊な能力を持つものがあるんだ」
ロゼッタは真剣な面持ちで告げ、前置きをして話を続けた。
マナを見る以外にも特殊な能力を持つ者がいるらしい。
例えば『透視の魔眼』と呼ばれる魔眼があるが、これは人の体の中にある『魂』を見ることができる能力だと言われている。
他にも『予知の魔眼』や『鑑定の魔眼』といった魔眼もある。
は能力を発動する際に、その魔眼特有の『色』が現れるという。
それをわかりやすく説明するロゼッタ。
「へぇ」
リオンは感心したように声を上げる。
ロゼッタの話は興味深かった。
と、その時…
「おーい、帰ったぞー!」
「ただ今戻りました!」
シルヴィとアリスが帰ってきた。
紙袋には食材が入っている。
どうやら、買い物は無事に終わったらしい。
ロゼッタは二人の声を聞いて、あることを思いついたようだ。
「そうだ、シルヴィくん?」
「はい?」
「すこしリオンくんと模擬試合をしてくれないか?」
「え?ボクがですか!?」
突然の提案にシルヴィは驚いた。
「いいじゃないか。どうだい?」
「そ、それは構いませんけど…」
「よし!決まりだね!」
ロゼッタはとても嬉しそうに笑った。
一方、リオンは困惑していた。
「(なんで急に試合なんてするんだ?)」
そんなことを考えながら、リオンは二人の様子を眺めていた。
場所は変わって、家の外にある訓練場。
そこにリオンは立っていた。
隣にはシルヴィの姿がある。
「リオン、よろしく頼む」
「ああ」
シルヴィはいつもの調子だったが、リオンの方は少し緊張している様子だった。
というのも、いつもの訓練試合では無いからだ。
今回の試合はロゼッタが魔眼を見極めるためのもの。
互いにロゼッタが用意した訓練用の模擬剣を持っている。
「それでは、始めようか」
ロゼッタの声とともに試合開始の合図が出された。
すると、シルヴィは一気にリオンとの距離を詰めた。
「ふッ!!」
シルヴィは鋭い突きを放つ。
だが、その攻撃はリオンによって簡単に受け止められてしまった。
「くっ…!」
シルヴィは悔しそうに顔を歪めたが、すぐに次の行動へと移す。
彼女は素早く後方に跳び、リオンから距離を取った。
そして、改めて構えをとる。
どうやら、今度はこちらから仕掛けてくるつもりらしい。
「いくよ!」
そう言って、再びシルヴィが攻撃を仕掛けてきた。
シルヴィは訓練用の模擬剣を連続で突き出す。
だが、リオンはその全てを捌き、彼女の攻撃を受け流していった。
「うぅ…」
シルヴィは歯を食いしばり、必死に食らいつく。
しかし、徐々にリオンの動きに対応できなくなってきたのか、追い詰められていった。
そして、ついにシルヴィの攻撃がリオンに届く。
「もらった!」
シルヴィが叫ぶ。
しかしその時だった。
それを身体を大きく翻し避け、剣を構える。
そして、リオンの剣先がシルヴィの胸元に突きつけられた。
「う…!」
「そこまでだね」
ロゼッタの言葉を聞き、リオンは剣を引く。
それと同時に、シルヴィも動きを止めて構えを解き、息を整え始めた。
「ありがとう、いい勝負だった」
「いえ、こちらこそ。勉強になりました」
リオンは素直に感謝した。
実際、彼女の戦い方は参考になった。
相手の攻撃を予測して動く。
リオンにとって必要な技術である。
一方、シルヴィはどこか不満げな表情を浮かべている。
「まさか負けてしまうとは…」
どうやら、本気で戦っていたにも関わらず、自分が負けたことがショックだったらしい。
一方、リオンはロゼッタに声を掛けた。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「どうして俺に模擬戦をさせたんですか?」
リオンはロゼッタに尋ねた。
確かに先程の試合は得るものがあった。
だが、それがロゼッタの目的ではないはずだ。
なぜ、自分に模擬試合をさせ、シルヴィと戦ってみせたのだろう。
ロゼッタは静かに答える。
その瞳は真っ直ぐにリオンを見据えていた。
そして、その口が開かれる。
「さっき言っただろう」
「…魔眼ですか」
リオンはロゼッタの言いたいことを察する。
「その通りだ。キミの魔眼を使ってもらいたかったんだよ」
「でも、どうして…」
「魔眼の能力を確認するためだよ」
「能力の確認?」
「ああ」
ロゼッタ曰く、魔眼の中には特殊な能力を持つものがあるという。
そして、その能力は使用者の能力を底上げする効果があるらしい。
例えば、『透視の魔眼』であれば遠くにある物を見ることができるようになる。
また『予知の魔眼』ならば、近い未来の出来事を視ることができる。
「へぇ…」
リオンは感心したように声を上げる。
すると、シルヴィが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「リオンさんって、そんなことができるんですか?」
「ああ、そうだよ」
リオンは肯定するように返事をする。
すると、シルヴィは驚いたような表情を見せた。
「まだ少し見ただけだから断定はできんが、恐らく『予知の魔眼』ではないかと思う」
「『予知の魔眼』…! それは凄い!」
「はい、リオンさんなら絶対に間違いないと思います!」
シルヴィとアリスは興奮気味に言う。
だが、ロゼッタは首を横に振った。
「いや、あくまで可能性の話だからね。100%と断言はできない」
「なるほど…それじゃあ、実際に使ってみた方がいいですね!」
アリスの言葉を聞き、リオンは驚く。
「えっ!? 今ここで?」
「もちろん!」
アリスは満面の笑顔で言う。
どうやら、自分の力を信じて疑っていない
とはいえ、リオン自身もどうやってそれを使うのかがいまいちよく分からない。
先ほどもシルヴィとの試合中に、偶然使うことができただけだ。
そこにロゼッタが割って入った。
「まあ待て、リオンくんをそう焦らすな。彼は魔眼をつい最近になって使えるようになったんだ」
「はい」
「だったら、いきなり能動的に使うのは難しいかもしれない」
「あっ、それもそうか…」
アリスは納得した様子を見せる。
だが、すぐに疑問を抱いたようで質問をした。
「それでは、どうすればいいんですか? やっぱり、慣れるまで練習が必要ですか?」
「そうだな…」
そう言って考え込むロゼッタ。そして、数秒後、彼女は一つの提案を口にした。
「よし、こうしよう。リオンくんとシルヴィくんには修行に専念してもらう!」
「えっと…どういうことでしょう?」
リオンは尋ねる。
すると、ロゼッタが説明を始めた。
「まず、リオンくんが強くなるためには、実戦経験を積む必要がある。つまり、より強い魔物と戦うことだ」
「はい!」
「しかし、今のリオンくんは一人だと危険だ。そこで、シルヴィくんにも一緒に戦ってほしい」
「わかりました、ボクは構いませんよ」
シルヴィはそう言った。
ロゼッタの言っていることは正しいと思ったからだ。
確かに現状のままでは、まともに戦うことすらできない。
もっと強くならないと、魔眼を使いこなせないだろう。
「分かりました」
「分かったよ」
リオンとシルヴィはそれぞれ返事をする。
そして、二人は互いに視線を合わせた。
「ふむ…」
二人の様子を見たロゼッタは満足げにうなずいた。
そして、次の話へと移る。
「さて、話は変わるが、ここから先の予定について決めようと思う。何か希望はあるかい?」
ロゼッタは尋ねた。
それに対して、真っ先に答えたのはシルヴィである。
「ボクは強くなりたいです! そのために、たくさん戦いの経験を積みたいと思っています!」
力強く宣言するシルヴィ。
すると、ロゼッタは優しく微笑む。
「そうか。なら、しばらくの間は二人で行動して、お互いを高め合うのが良いだろう」
「はい!」
「了解です」
リオンは同意するように返事をし、シルヴィは嬉しそうに大きくうなずいた。
そして残ったアリス。
彼女は当初の予定通り、ロゼッタの弟子として錬金術を学ぶことに。
ロゼッタの錬金術は、一般的なものとは異なる特殊なものである。
そのため、一朝一夕で覚えられるものではない。
それでも、アリスは真剣な表情でロゼッタの指導を受けていた。
その様子を見たリオンは、自分も頑張らないとと決意を新たにするのであった。