酒下山ハイキングコース。
この場所は地元では誰もが知ってるほど有名で、そして誰も入らない。
アクセスが悪く1番近くのコンビニからは最低でも1時間、山奥すぎてカーナビにも道が出てこないので迷ったら出れない。着いて唯一の駐車場は1時間1000円のぼったくり価格。山道の雑草は道の中央だけ刈って後は伸びまくり増えまくりの雑管理。どこに行っても熊注意、猪注意の看板が立ててある。そして道中の景色がめっちゃ悪い、というか木々が邪魔で何も見えない!頂上は開けてるだけで椅子とかもないし何も無いうえに景色も見えない!
…と言うあまりにも酷い、むしろ登らせる気無いだろと言う状態だ…
でも、此処が有名な1番の誘因は、昔から言われ続けている”あの噂”だろう。
噂この辺りに住む人なら誰しもが小学校などで聞く噂、大人になっても時たま話に上がるあの噂、
昔からずっと聞くもので、それこそ聞けば、祖父祖母の頃からも言われ続けている物らしい。
ただ、どんな内容なのか?と尋ねても皆なかなか答えられないだろう。なんせ、その話は話の内容がよくよく変わる。
自分が聞いた時の話と下級生の間で言われている話は真逆と言って良いほど違う物だし、そもそも自分達で流行った物ですら数種類ある。
ただ、全ての話に置いて、いかなるときも共通する点が一つある。それは、
“あの山は呪われている”
と言うものだ。
そして、実際にあそこでは数年に1人は行方不明者が出るのだ。
行方不明になった人は数日後、栄養失調で疲弊した状態で発見されることもある。…残念ながらそのまま冷たくなった状態で見つかる事もある。
それでも…大多数は、一切何も見つからないままだ。
…さて、こんな話をしていておいて悪いが、実際にはこの噂と呪いなんて誰も1ミリも信じて無くて、眉唾物の嘘話だと言うことは共通の認識だ。
一応、確かに先程述べた事は確かに全て本当の事である。
…ただ、呪いなんぞよりも、よほど死因が浮き見えなのだ。
あんだけ熊や猪の看板が立ってるんだから、あの山での命の危機なんぞ猿でもわかる‼︎雑管理の山道はどこがルートか分からず遭難必須!山奥なので携帯は圏外。訳も分からず草が生い茂った道を歩いてたら真下が崖でオーバーキルなんてのも容易に考えられる。
行方不明者の事だって、疲弊して見つかった人も遺体もせめて死因などが心臓麻痺や心臓発作などだったらもっとオカルトみがあるが、栄養失調だとか「遭難したんだなぁ」と何の面白みも何もない!(不謹慎)
そもそも酒下山自体がとても広く、森が生い茂ったうえに洞窟や崖などが多い地形なため、中々行方不明者が出ても探すのは難しい。
実際、見つかった人たちはいずれも全員、ハイキングコースを歩いていた一般の登山者が見つけている。山の奥の方で遭難した人は発見が難しいのだろうと皆考えている。
結果的、地元民の評価は総じて「遠いくてつまらない上に危険」…誰も寄り付かないかない訳である。
それでも呪いの噂がある曰く付きの場所として、肝試し目的に登る人も結構いる。
何なら”そういうのの界隈”の方でも結構知名度があるらしく、わざわざ他県から此処に来る人も多いのだ。
そして現在、行方不明であり、僕が捜索中の大学生は、そう言う他県から肝試しに来た人らしい。
歩き続けて数分、少し離れた所に、倒れている人を発見した。
「あ、先にボディの方が見つかっちゃったか…」
急いで駆け寄り、その全体を懐中電灯で照らす、二十代前半ぐらいのメガネの男性だ、この人が探していた大学生で合っているだろう。
僕はその人の身体を軽く触り、様子を確認する。
「ん〜、脈はちゃんとあるな。ただ唇や爪の色がアレだったり、脱水症状はありそう。」
その人を横向きに寝かせて、手や頭の位置を調節する。回復体位と言うやつだ。
大丈夫そうな事を確認してからその場所を離れて、僕はまた歩きだす。
辺りには野生動物の腐乱死体が落ちている、ちょっと臭い、地獄みたいなひどい有様。
そしてふと、その中に明らかに形が違う物、肉がちょっと付いた人骨を見つけてうわぁ…と顔を歪める。
…とにかく、僕の使命はさっき倒れていたあの人をこうはさせない事だ。そう思い、先ほどより足を早める。
そうしていると、あたりの死体の山が開けて道の様になっている所を発見した、僕はその道を辿る。
だんだん、酷い匂いと湿っぽさが漂ってきた。
そして、それはどんどん強くなってゆき、先ほどまで乾いた音だった足音が『ぐちゃり』という音に変わったところでずりずり、ずりずりと、この辺りを徘徊している”ソレ”を見つけた。
辺りに死体の山が無かったのは、ソレに押しのけられ、吸収するわけでも無いのにあの中で押しつぶされて、ぐちゃぐちゃな最早固形でない汁になってぶち撒けられて居るからだと、目の前でバキバキという音を立てながらドス黒い赤のスムージーを吐き出しているそれを見て思う。
ソレの見た目はは何というか、具現化された悪意や害意が糸蒟蒻みたいに紐状でぐずぐずにさせたような形容し難いモノで、時折紐状から形を変えて蠢いている。そしてそれからうねうねと、生き物の内臓などと思われる細長い白が混じった薄ピンクの管状の物が飛び出ており、小刻みに痙攣していた。そのぐずぐずたちの中から時折覗いて見える汚い油の塊のような物は、散々コイツに力を吸い取られすっかり薄汚れてしまった誰かの魂の一部だろう。それに、僕には見えてしまったモノ…
全てが冒涜的で、悍ましいどころじゃ無い姿。
これまで見た物でも特にそう思う姿をしている”ソレ”…だけど多分、あれは本体じゃ無いと言う事が一番悍ましい事だった。
グチャ
粘着質な音をたてて、動きを止めたソイツ。
そして、僕は全身に鳥肌が立ったのが分かった、
目が合った。
別にソイツには目と呼ばれる部分が無いので本当に目が合ったわけでは無い、僕の存在に勘付かれたのだ。
近づき過ぎたか…
僕は鳥肌が立った腕を一撫でし、落ち着かせてから、軽く瞬きをひとつする。
そして、ソイツが動きが止まったののを確認し、急いで、でも走らず踵を返逃げ始めた。
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