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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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あれから2時間程歩いてきた。そろそろ今日の野営する場所を決める頃合いだな。


どうするのか聞いてみたら適当に開けたところに入ろうとのこと。


空を見上げれば晴れて渡っているし、この分だと今夜も雨の心配はしなくていいようだ。


街道に沿って川も流れているし野営するには恵まれているだろう。


それから暫く進んで行くと左側の草原に小さな丘が見えてきた。


それほど広い丘ではないが馬車1台だけなので問題はない。


マクベさんは緩やかな丘の上に馬車を止めると、馬の世話などで忙しく動きはじめた。


奥さんのカイアさんは馬車から食器なんかを下ろして食事の準備を始めている。


俺は今日も薪集め担当かな?


「カイアさーん、ロープがあったら貸して欲しいんですが」


「な~に薪拾い? それならいい物があるわよ~」


カイアさんは馬車に入って何やらゴソゴソやっている。


そして、手に持って出てきたのは背負い籠であった。


なるほど、これは便利だよね。


「向いの林に行ってきまーす」


そう、みんなに声を掛け、道の向こうに広がる林に向かった。


薪を集めて林から戻ってくると、すでに岩の竈が完成していた。


もう一度往復して、今日使う分の薪は集めおわった。


背負い籠を下ろし、竈近くの草の上に胡坐をかく。水筒からフライパンに水を入れシロの前に置いてあげた。


そうして、俺も水筒を傾け水を口に流し込んだ。


――ふぅ、ようやく一息。






暫くするとシロが またそわそわしはじめた。


俺は昨日と同じように注意を促し、シロが頷くのを確認してから送りだした。


「あら~、シロちゃんどこに行っちゃったの~?」


スープ用の寸胴鍋に水を入れながらカイアさんが聞いてきた。


「ただの散歩ですよ」


「今日も薪を集めてくれてありがとー。おいしいの作るから休んでて~」


「はい、楽しみにしてます」


そのまま草の上に寝転がった。スキルの検証もみんながいる前ではできないしな。


それなら、あれだ! 『魔力操作』ならバレはしないだろう。


俺は仰向けになり目を閉じた。


そうして身体の中に意識を向けてみると……。


すると、微かにだが何かが身体をめぐっているように感じた。――これが魔力?


どうすればいいんだ、意識を持っていくだけでいいのか?


しばらく、その魔力らしきモノに意識を集中していると、


ピーン! {魔力操作レベルが4に上がっりました}


おっと来たな! しかし、レベルアップが早くないか?


いや、もともと何もやってなかったからこそなのか?


魔力操作なんかやったこともなかったのに、それが3レベ・スタートなのがそもそもおかしいよね。


俺の場合、体内の魔力回路がすでに出来上がっていて、すぐにでも魔法が使える状態だったのだろう。


なんていっても、女神さまがお造りした身体なのだ。普通であるはずがない。






再び目を閉じて魔力に意識を向けていく。


『シロは何処まで行ったのかなぁ?』


何となくぼんやり考えていると、


えっ何だこれ! んんっ、森の中か?


見たこともない景色が自分の目で見ているように頭に浮かんでくるのだ。


夢なのか? いや、これはあれだ。


――感覚共有。


なるほど、これが『感覚共有』なのか。


あ~、何となくシロのいる方向もわかるな。これも有意義なスキルだよな。


それから15分程経っただろうか、突然プツンと画像が消えた。


うう~っ! 気持ちわるい、もどしそうだ。


めちゃくちゃ疲れた。頭が重い。


自分を鑑定してみると120あったMPが4になっていた。


なんでー、スキルはMPを消費しないはずでは?


あまりのキツさに考えが纏まらない。――俺もう寝る。






うっ、んん、目を開けるとシロが顔を舐めていた。


シロの首まわりをもふりながら身体を起こした。もう、どっぷり日が暮れている。


「よく寝ていたねぇ」


「きっと、疲れていたのよね~。もうすぐ夕食もできるからね~」


マクベさんの言葉にカイアさんが続く。


「そ、そうですね、いろいろ有りましたし」


頭をかきながらも俺はそう言うしかなかった。


「ちょっと顔を洗ってきます」


俺の顔はシロの唾液でべちょべちょだぁ。


シロを連れて川の方へ下りていく。あそこで浄化を使わせる訳にもいかないしな。


人間でも複数の属性が使える魔法使いは稀だそうだ。それこそ、王宮からすぐにでもスカウトが来るレベルらしい。


そうなってしまうと、平民ではなかなか断りづらいだろう。断っても、まわりの貴族が黙っていないだろう。


それに、魔法が使える従魔など今までに見たことがないらしい。


そんな訳で、これ以上シロちゃんの魔法を見せるわけにはいかないのだ。






月の光を頼りに歩きながら、自分を鑑定してみる。


んん、レベルが2つも上がっている。シロのやつ意図的にがんばっているよな。


まあ、こんな世界じゃレベルを上げておかないと危険であることは理解できるが……。


シロさん過保護すぎませんかねぇ。ありがたいけど。


そして、MPを見てみると94まで回復している。


たった2時間ほど (腹時計) で8割の回復って。――早くね!?


川の水で顔を洗い、イベントリーから水筒2つを取り出し水を入れる。シロに浄化を頼みイベントリーに収納した。






サッパリとして皆が待つ竈の方へ戻ってきた。


そして、周りを見渡し何もお持ち帰りがないことを確認した。


今日は行く前に『何もいらないよ』と言っておいたからな。――シロをナデナデ。


「は~い、ゲンちゃんシロちゃん早く座って~。ごはんですよ~」


カイアさん、まるでオカンみたいだな。


「はーい、今行きまーす!」


シロは尻尾を振りながらコリノさんの側へ行ってしまった。


今日も竈を囲んでの夕食となった。シロはコリノさんにへばりついて戻ってこない。


フンッ、羨ましくなんか…………あるなぁ。


2m程の距離なんだがこれが遠いのよねぇ。


さて、気を取り直して夕食を頂きますか。


うん、スープが旨ぁ~い。肉も思ったより柔らかいし。


うう~ん、ほっこりするなぁ。この背中が暖かくなる感じがいいね~。


何か忘れかけていたものを思い出させるような、……そんな感じがした。


「どうかしら~、これがハイウルフの肉なのよぉ。私たち昨日から贅沢しすぎよね~!」


美味しい夕食にカイアさんのテンションもアゲアゲのようだ。


「本当だよなぁ。いつもは干し肉のスープに硬い黒パンだからなぁ」


マクベさんはしみじみと語っていた。――行商人は大変だね。






今日の夜警も夜半過ぎまでは俺が受け持つことになった。


「俺はシロも居るし、ひとりでも大丈夫です」


そうアピールしてマクベさんにも休んでもらうようにした。


「それじゃ悪いけど、お先するよ」


マクベさんはフラフラしながら馬車に向かっていった。――お疲れさまです。


コリノさんは馬車から持ってきた毛皮シートの上で毛布に包まり寝てしまった。


シロは膝の上に頭をのせ、上目づかいに俺を見ている。――可愛い。


そうして暇になった俺は、シロをもふりながらステータスの確認をすることにした。

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