スマホ越しに春のか細い声が聞こえた瞬間嫌な予感がし、
何も持たず春のアパートの自室に急いで向かった。
ドアの開けた瞬間目にしたのは天井から縄を垂らし、
いつも結っていた髪は解いていて、その下に置いていた椅子の上に春は立っていた。
「…これでやっと救われるんだ 」
そう笑って言った春は首に縄をかけ椅子を後ろに蹴飛ばし、 そのまま天井にぶら下がった。
(もっと早く救えたら…)
そう思った俺は身体の力が入らず、その場に座り込んだ。
数ヶ月前の事
春と雑談している間、俺はスマホを見ていた。
話し始めてしばらく経った後気になった記事を見つけ、春に声をかけた。
「春、また有名人が自殺したらしいよ 」
「へえ…どんな人?」
「20代男性、自宅近くの橋から飛び降りだって。」
春は突然変な事を聞いてきた。
「ねえ、自殺したらどこに行くと思う?」
「んーわかんない、どこに行くの?」
「自殺したら地獄に行くんだって。殺生、故意に生き物を殺すことがダメらしい。」
「ふうん。」
あの時の春はもう何もかも苦しかったのだろう。
自分の事が精一杯で、春をちゃんと見てやれなかった。
最初から気付いていたのに
春を死なせたくないという自分勝手なエゴで、ずっと辛いままの春を生かせ続けてしまった。
俺のせいだ
俺が春の寿命を縮ませたんだ
全部俺のせいなんだ
ごめんなさい
「俺もそっちに行くよ、春」
そう思い、春の遺書の傍にあった白紙に一言書いた。
僕の命日は晴天の雨で六月二十日。
僕の親友の誕生日だった。
続く
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