テラーノベル
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ホテルの部屋に入ってからしばらく沈黙が続いていた。
テレビはついてるのに音が頭に入ってこない。
明日はオフ
時間はいくらでもある
——それなのに。
勇斗はソファに座ったまま、落ち着かない様子でリモコンをいじっているだけだった。
「勇ちゃん」
声をかけると、勇斗はびくっとして顔を上げる
「さっきからテレビばっかやん」
「あー、ごめん」
視線が合わない
明らかに意識してるくせに、意地でも距離を詰めてこない
その様子に小さく息を吐いた。
「まだ俺ら手繋ぐくらいしかしてへんやん 」
「… 」
「ほんま、懐に入れた人間にはめちゃくちゃ奥手〜ってやつなんやな勇ちゃんは」
図星だったのか、勇斗の動きが止まる
「付き合ってからの方がなんもしてないなぁ」
少しだけ間が空いて、勇斗が苦笑する。
「なんか、大事にしたくてさ」
その言い方が余計にじれったい。
立ち上がってゆっくり勇斗の前まで歩く
「大事にしとるならさ」
少しだけ顔を覗き込むようにして、
「……ちゃんと顔見させて」
やっと視線が合う。
その瞬間、勇斗の目がわずかに揺れた。
きっと、ここで何もしなかったらこのまま朝になる。
そんな確信みたいなものがあって
だから、自分の方から距離を詰めた
ほんの一瞬だけためらってから
軽く触れるくらいのキスを落とす。
驚いたように目を見開く勇斗を至近距離で見ながら
少しだけ意地悪に笑う。
「いつまで待たせる気なん?」
そう言って、押し倒すように両手をつく。
勇斗は何が起きたのか理解が追いついてないみたいに目を見開いたまま固まってる。
「……ほんま、遅いって…」
少し笑って離れようとした、その時だった。
ぐっと手首を引かれる。
「わっ、」
さっきまでとは違う力。
「…それはずるいって」
低くて、少しだけかすれた声。
気づいたら勇斗の胸に倒れ込んでいて
頭をそっと撫でられる。
そのまま衝動を抑えきれず唇が重なる。
短く離れてもすぐまた戻ってくる
さっきまでの余裕はもうどこにもなくて。
「もっと…」
零した声は思ってたよりずっと本気で
そのまま何かが切れたように今度は完全に流れを持っていかれてしまう
少し息が近いまま
「…手出すの我慢してたんだわ」
もう抑える気がないみたいに指先で身体をなぞられる。
さっきまで触れないようにしてた人とは思えないくらい真逆の目つき
こっちが何か言いかけても、その前にまた塞がれて。
ようやく離れたときにはさっきとは立場が完全に逆になってた。
「…あんま調子乗んな」
、と呟く勇斗の方がどう見ても余裕がなかった。
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