TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
オハナシアツメ

一覧ページ

「オハナシアツメ」のメインビジュアル

オハナシアツメ

2 - 美術室の、ポスターの噂。

2024年05月03日

シェアするシェアする
報告する

呪っちゃうから…


あの一言を聞いてから、私はどうやって家に帰ったのかも覚えていない。

意識が朦朧としてしまって…


ともかく、噂を集めなければならない。

でも、そんな話…


そう思って、朝のHRが始まるのを待っていた。

その時だった。


キャーッ


と叫びながら、クラスメイトが教室に駆け込んできた。

美術部の野崎さん。朝から美術室の掃除をしている、熱心な部員だ。

一瞬で野崎さんの周りに女子生徒の輪が出来上がる。

「なにがあったの?」「落ち着いて!」

皆が必死に励ます。

涙も枯れ果てたというような様子の野崎さんは、絞り出すようにして言った。


「出た、出たのよ!“美術室の虹原さん”が!」


「美術部の虹原さん」なんて聞いたことが無かった。


周りの女子たちは、一斉に騒ぎ立てる。

騒動に乗じて、噂はさらに大きくなっていった。


騒動がまだ落ち着かない昼休み、私は野崎さんに話を聞くことにした。

もしかしたら、と思ったのだ。


事情を聞いた野崎さんは、戸惑いつつも頷いてくれた。


「いいわ。教えてあげる。虹原さんの噂のこと、そして朝のこと…」



美術室に、金色の額縁に賞状付きで飾られている、いじめ防止のポスター。

でも、そのポスターを書いていた美術部員の女子生徒である「虹原飛彩」はいじめられていた。

不気味な白い人影は、涙を流している。

そして、「いじめダメ」という至ってシンプルな文字が載っている。

虹原さんはいじめを苦にして自殺してしまった。

だから、これは虹原さんが最後に残したメッセージなんじゃないかって言われている。

そしてここからが本題。

いじめられていた虹原さんは、誰よりも早く部室に来て絵を描いていた。

だから、誰も居ない朝の美術室には虹原さんの亡霊が居る。

そして、ポスターに絵の具で何かを書き加えている。

白い人影が血の涙を流していたり、不気味に笑っていたり。

そして、一通り書き終わって目が合うと、こちらへ向かってくるの。

そして…

「貴方、いじめはどう思う?」って。

勿論、大抵の人は「絶対に有ってはいけない、許されない行為だ」と話す。

次に、「じゃあ、貴方の周りにいじめをしている人は居ない?」って質問される。

「はい」って答えると、見逃してもらえる。

「いいえ」って答えたり、答えに戸惑っていると…

「私はね、いじめで自殺したの…いじめをする人、見てる人、全員犯罪者って知ってるよねぇ!」

ってすごい剣幕で怒鳴りながら、首を掴まれて、絞め殺されちゃうんだって…


それじゃあ、私の話をするね。

その日はコンクールに出すためのイラストを完成させるために、私は一人で部室で作業をしてたの。

HRの時間が迫ってたから、急いで片付けをしていたの。

絵の具を片付けて、新聞紙を畳んで、絵を乾かす場所に置いて…

顔を上げた瞬間、虹原さんが居たの。

怖くて、怖くて…

すぐ立ち去ろうと思ったんだけれど、目が合ってさ…


「貴方、いじめはどう思う?」って聞かれて…

「…絶対許されない、あってはいけない…と思ってます」って返したの。

「じゃあ、貴方の周りにいじめをしている人は居ない?」って聞かれた瞬間、口ごもっちゃって…

まぁ、結構うちのクラス、意地悪な人いるじゃん?

それで…

例のごとく追いかけ回されて…

それで、全力で走って逃げたんだ。

もう死んじゃうかと思った。

ひゅーひゅーって、息の仕方も忘れちゃうくらいで。

首に引っかき傷がついて…今も…痛いな…

暫く部室には向かえなさそうだよ…



「私の話。役に立ちそう?」


優しい野崎さんは、私に聞いてくれる。


「うん。とても助かる。ありがとう」


そう返した私は、ぎこちないながらも、初めてのメモを作成した。

昼休み、ドキドキしながら私は投函ボックスへ向かった。

不思議なことに、他の生徒にはこのボックスが見えないらしい。

つまり、私は空中に紙を落とす変な人に見えている…という訳だ。

何か嫌だ、と思いつつも、呪われるのはもっと嫌だと思い直し、私はボックスの中に紙を入れた。




〜噂 1つ目〜

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚