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呪っちゃうから…
あの一言を聞いてから、私はどうやって家に帰ったのかも覚えていない。
意識が朦朧としてしまって…
ともかく、噂を集めなければならない。
でも、そんな話…
そう思って、朝のHRが始まるのを待っていた。
その時だった。
と叫びながら、クラスメイトが教室に駆け込んできた。
美術部の野崎さん。朝から美術室の掃除をしている、熱心な部員だ。
一瞬で野崎さんの周りに女子生徒の輪が出来上がる。
「なにがあったの?」「落ち着いて!」
皆が必死に励ます。
涙も枯れ果てたというような様子の野崎さんは、絞り出すようにして言った。
「美術部の虹原さん」なんて聞いたことが無かった。
周りの女子たちは、一斉に騒ぎ立てる。
騒動に乗じて、噂はさらに大きくなっていった。
騒動がまだ落ち着かない昼休み、私は野崎さんに話を聞くことにした。
もしかしたら、と思ったのだ。
事情を聞いた野崎さんは、戸惑いつつも頷いてくれた。
「いいわ。教えてあげる。虹原さんの噂のこと、そして朝のこと…」
美術室に、金色の額縁に賞状付きで飾られている、いじめ防止のポスター。
でも、そのポスターを書いていた美術部員の女子生徒である「虹原飛彩」はいじめられていた。
不気味な白い人影は、涙を流している。
そして、「いじめダメ」という至ってシンプルな文字が載っている。
虹原さんはいじめを苦にして自殺してしまった。
だから、これは虹原さんが最後に残したメッセージなんじゃないかって言われている。
そしてここからが本題。
いじめられていた虹原さんは、誰よりも早く部室に来て絵を描いていた。
だから、誰も居ない朝の美術室には虹原さんの亡霊が居る。
そして、ポスターに絵の具で何かを書き加えている。
白い人影が血の涙を流していたり、不気味に笑っていたり。
そして、一通り書き終わって目が合うと、こちらへ向かってくるの。
そして…
「貴方、いじめはどう思う?」って。
勿論、大抵の人は「絶対に有ってはいけない、許されない行為だ」と話す。
次に、「じゃあ、貴方の周りにいじめをしている人は居ない?」って質問される。
「はい」って答えると、見逃してもらえる。
「いいえ」って答えたり、答えに戸惑っていると…
「私はね、いじめで自殺したの…いじめをする人、見てる人、全員犯罪者って知ってるよねぇ!」
ってすごい剣幕で怒鳴りながら、首を掴まれて、絞め殺されちゃうんだって…
それじゃあ、私の話をするね。
その日はコンクールに出すためのイラストを完成させるために、私は一人で部室で作業をしてたの。
HRの時間が迫ってたから、急いで片付けをしていたの。
絵の具を片付けて、新聞紙を畳んで、絵を乾かす場所に置いて…
顔を上げた瞬間、虹原さんが居たの。
怖くて、怖くて…
すぐ立ち去ろうと思ったんだけれど、目が合ってさ…
「貴方、いじめはどう思う?」って聞かれて…
「…絶対許されない、あってはいけない…と思ってます」って返したの。
「じゃあ、貴方の周りにいじめをしている人は居ない?」って聞かれた瞬間、口ごもっちゃって…
まぁ、結構うちのクラス、意地悪な人いるじゃん?
それで…
例のごとく追いかけ回されて…
それで、全力で走って逃げたんだ。
もう死んじゃうかと思った。
ひゅーひゅーって、息の仕方も忘れちゃうくらいで。
首に引っかき傷がついて…今も…痛いな…
暫く部室には向かえなさそうだよ…
「私の話。役に立ちそう?」
優しい野崎さんは、私に聞いてくれる。
「うん。とても助かる。ありがとう」
そう返した私は、ぎこちないながらも、初めてのメモを作成した。
昼休み、ドキドキしながら私は投函ボックスへ向かった。
不思議なことに、他の生徒にはこのボックスが見えないらしい。
つまり、私は空中に紙を落とす変な人に見えている…という訳だ。
何か嫌だ、と思いつつも、呪われるのはもっと嫌だと思い直し、私はボックスの中に紙を入れた。
〜噂 1つ目〜