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『睦月君はいつだって、どんな時だって弱音を吐かずに頑張ってきたと思うの。だからまずは自分を信じてあげて。今まで辛くても頑張ってきた睦月君が決めたことは、きっと間違いじゃないと思うから。でも、頑張ってダメだった時は、そうなった時に考えたらいいわ。もし借金を抱えることなっても、私が一緒に働いて返すから』
「そんなっ。先生には関係ないようにするよ! もしTENGAに大変な損失が出たら、僕の私財を全部処分して損失に当てるつもりだし、四井の家に帰ることだって覚悟してる」
『水臭いなぁ』
「水臭いなんてそんな…っ。先生には責任ない話だよ! それなのに…」
もしも損失が大きくなれば、とんでもない額になる。先生との結婚は諦めて、四井の実の父に土下座してでも資金を作らなきゃならない。とても個人で普通に返せる金額ではなくなってしまう。
『夫婦なんだから、一蓮托生でしょ? 折り紙で働いてできるこは限られているから、まずはプレゼンを成功させることを全力で考えて。私、睦月君を支えたい。あなたと、ほんとうの家族になりたいの』
「佑里香先生…」
こんな僕と、家族になってくれると先生は言ってくれた。
実の母親にさえ大事にしてもらえなかったこんな僕を、いつも支えてくれたのは先生とお父さんだけだった。
今までの想い出が走馬灯のように駆け巡った。
死ぬほどつらい目に遭った幼少期でさえ、実際に死んだわけではなかった。辛くても、苦しくても、先生たちがいたから生きていけた。そのことを忘れるところだった。
損失はこの僕が生きている限り、なんとしても取り返すことができる。
四井になんか頼らなくても、今まで培ってきた経験と知識で、なんとかできる。
僕は、僕の人生を、先生を好きだという気持ちを、諦めたくない!
「先生、ありがとう」
やっぱり僕には先生が必要だ。
どんなに不細工でも、どんなにかっこ悪くても、先生にこの思いを伝えたい。
「必ず、折り紙の味を世界に届けるよ。約束する」
『うん、頑張って!』
僕は先生さえ傍にいれば無敵になれる。なんだってやれる気がした。
「ねえ、佑里香さん」
『うんっ?』
先生の声が跳ね上がった。僕が急に名前を呼んだものだから驚いたのかもしれない。
「佑里香さんの言葉で元気が出た。しっかり頑張ってくるね」
『ええ、頑張って!』
「佑里香さん、愛してる。じゃあ、行ってくるね』
返事は待たずに電話を切った。今は一方的でもいい。たとえあなたからの愛の見返りがなくても、僕は先生が幸せでいてくれたらそれでいいのだと改めて気が付いた。
だから、こんな僕を支えたいと言ってくれた先生を路頭に迷わせるわけにはいかない。借金を抱えさせたりしないよう、死ぬ気でこのプレゼンを成功させてみせる!!
日経平均株価はまだ下落を続けていた。僕は改めてTENGAのみんなに『万が一の損失も大丈夫なようにこちらが手を打っている、今持っているリスク資産はぜったいに売買しないように』と指示を出した。
僕は、僕が信じた道を行く。
必ず活路があるはずだ。
コメント
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さぶれさん、第75話読みました。睦月が先生の「一蓮托生でしょ?」という一言で折れかけた心を立て直す場面、すごく良かったです。あの「先生さえいれば無敵になれる」って感覚、すごく共感できます。最後の「愛してる」を一方的に伝えて切るところに、彼の覚悟と誠実さがにじみ出ていて、じんわり来ました。折り紙の味を世界に届ける…そのプレゼン、成功してほしいと心から願ってます。