テラーノベル
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フジノの受付で名乗るとパスを渡された。社員証の代わりにそれに名刺を入れ、首からぶら下げた。大きめの会議室へ入ると資料投影用のスクリーンがすでに設置されており、各会社の名前がテーブルに立てられていた。
今日は僕が中心にプレゼンを行い、マルヨーの得意とするところは店長に補足的に話してもらうつもりだ。潤に商品の用意や資料の配布、店長の補佐を行う段取りだったが、彼がいないので僕はプレゼンをしながらそこもやらなきゃいけない。
大変なことはわかっている。でもやるしかない。
先生と約束したんだ。ぜったいにこのプレゼンを勝ち取るって。
「どうも社長」
すでに到着していた橋本店長がやや緊張した声で僕を呼んだ。いつもエプロン姿しか見ていないから、スーツ姿は珍しい。それにしてもねずみ色のスーツなんて…おじさん度がアップしかない色じゃないか。もっとお洒落にしなきゃ、ナメられるぞ。見た目をチェンジするだけでも雰囲気変わるのに。
…見た目の雰囲気、か。
いっそマルヨーを高級スーパーみたいに魅せたらどうだろうか。
面白いな。ちょっとやってみてもいいかもしれない。
「橋本さん、今日はよろしくお願いします」
がっしりと握手をした。彼が緊張して話せなくなったりしたら、僕がすかさずフォローに回ろう。
「あら、睦月様」
横から声をかけてきたのは翠子だ。狐のように目が細く、目じりの吊り上がった男性を引き連れている。首から下げた名刺に『未来スーパー 専務 山本次郎(やまもとじろう)』と肩書があったので、僕たちのライバルだとわかった。
「やあ、湯川さん」
僕は一線を置くためにも翠子と呼び捨てにはせず、笑顔で彼女に挨拶をした。
「いよいよですわね」
「ああ。お互いベストを尽くそう」
「もちろんですわ。後で泣きを見ないように…ふふっ」
翠子は意味ありげな言葉に含み笑いを見せ、ではごきげんよう、とすぐに踵を返して去って行った。
泣きを見るのはそっちだ!
後は別のスーパーの人間が2人ずつ室内へ入ってきた。見回った限りではこの2社はそこまでの商品もプレゼン企画力もないだろう。ハナから眼中にない。やっぱり怖いのは、銀行と組んだ未来スーパーだ。もともとチェーン店で規模も大きく、マルヨーとは違う。そこが本気で取り組んできた企画商品というのはどんなものだろうか。
敵ながら天晴といったものを出すのか、そのせいでこちらが負けるのか。
それとも、僕たちの方が優れているのか。
まだなにも映っていないスクリーンを睨みつけていると、審査員と思しき社員たちや水島、細波さんたちが入室してきた。さっそくスクリーン横にある登壇マイクに向かって細波さんが話した。
「皆様お揃いのようですので、始めさせていただきます」
決戦の火ぶたが切って落とされた。
勝つのはどちらか?
コメント
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おお、ついにプレゼン本番!睦月くんが潤くんの代わりまでやろうとしてるところ、本当に頑張り屋さんだなあ…。翠子の意味深な笑みも気になるし、銀行と組んだ未来スーパーがどんな企画を出してくるのかドキドキします。高級スーパー路線に切り替えるアイデア、面白そうですね!次話が待ち遠しいです。