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学校を終え、家の玄関から自分の部屋へと直行する。
部屋着の上下スエットに着替えたならば、結んだ髪をほどき前髪を上げると大きめのヘアピンで留める。
そのまま手洗いうがいをしようと、脱いだ制服を持って洗面所へ向かう。
手を洗い、顔も洗った後外していたメガネを手に取りかけようとする前に、ぼんやりとした視界のまま鏡を覗く。
しばらく見つめた後、メガネをかけ再び見つめる。
自分の顔を真剣に見つめている行為が可笑しくなったのか、小さく鼻で笑うと自分の部屋に戻る。
冷蔵庫から持ち出した甘い紅茶のペットボトル片手にパソコンの画面を眺める。
『麻琴チャンネル』をクリックし動画を再生する。しばらくメガネに麻琴の笑顔を映していたが、おもむろに立ち上がると部屋の隅にある姿見に自分を映す。
前髪を押さえているヘアピンを取り下ろすと、手櫛で髪を整えて改めて映し見る。
スエットの上を脱ぎ上半身だけ、下着姿になった自分を見つめる。
そのまま自分のスマホを手に取りかざすと、斜め上から自撮りをする。
スマホの画面に映る下着姿の自分。
「可愛くなりたい……」
パソコンの画面に映る麻琴が、チャットを通じみんなと楽しそうに会話をしている姿。
コスプレのキャラについて熱く語りながら、時々「可愛いっを、ありがとう!」などの声が入る。
「良いなぁ。私も……」
──見られたい
──私を見てほしい
──全部見てほしい
大きく気持ちが膨らむ。
──ブラを外せば、なんなら下も脱いで画像を晒せばそれなりに需要はないだろうか。
──鏡を見ればいつも見慣れた自分がそこにいる。少しやせていて貧相だが、見てくれる人が、一人くらいはいるんじゃないだろうか。
「じゃあ今日はこれでおしまい! 次は何を話そうかぁ~。ん~! 考えるだけで今から待ち遠しいねっ!
こんなコスプレしてほしいーとか、こんなこと聞きたいなぁーとか何でもいいから聞かせてね! お気軽にどーぞ! お悩みなんかも聞いちゃうよ! みんなの声聞きたいなっ!」
麻琴の動画が終わりに近付き、最後の締めの挨拶が流れる。
元気な声に我に返り、上半身だけ下着姿の自分を見つめ大きなため息をついてしまう。
いそいそとスエットの上を着ると、パソコンの前に座り、文字を打ち込み始めるのだった。