tk「ねぇ祥生、今日さ、碧海に『その髪色、似合ってる』って言われちゃった」
放課後の教室、拓実がわざとらしく笑いながら言った。
机に突っ伏していた祥生は、ちらりと彼を見て、ふーん、と気のない返事をする。
tk「あとな、今日の体育も隣、碧海やったんやけどさ、あいつやっぱ運動神経いいよなー。かっこいい」
ss「……そうやな」
祥生の返事は薄い。
拓実は心の中でガッツポーズを決める。これは、効いてる。絶対効いてる。
彼氏のくせに、ぜんっぜん嫉妬とかしない祥生を、今日はどうしても動揺させたかった。
tk「碧海って、手も綺麗なんやで?指が長くてさ。ギターとか似合いそうやない?」
ss「ふーん。俺の手の方が、綺麗やと思うけど?」
tk「なっ……!?」
突然拓実の手を取って、自分の手と重ねてくる祥生に、拓実は素っ頓狂な声を上げた。
熱くて、少し荒れた手。けれど確かに、好きな人の手だった。
ss「俺のほうが綺麗やし。俺のほうが、拓実くんのこといっぱい知ってるし。朝の寝癖の向きとか、夜、ゲームしてるときの顔とか」
tk「な、なんでそんな……」
ss「やって好きやもん。拓実くんのこと、見てるから」
その言葉に、拓実の顔が一気に真っ赤になる。
作戦は成功どころか、最後は完全に逆襲されていた。
ss「でもさ」
祥生がふっと笑う。
ss「嫉妬させようとしてるの、バレバレやったで。そんなとこも、可愛くてずるいなって思ってた」
tk「……うるさい、バカ祥生」
顔を隠すように自分の腕にうずくまった拓実の頭を、祥生は優しく撫でた。
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