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#挑戦
五來 小真
44
#それはそうだけども
五來 小真
36
彼女いない歴70年にして、終止符が打たれた。
別に死んだわけではない。
驚くべきことに、彼女が出来たのである。
この年で出来るとは、自分でも驚きだ。
しかし油断してはいけない、私の人生で上手くいくときは怪しい時だ。
なんらかの落とし穴があるはずだ。
そう思っていたら、案の定だった。
彼女が亡くなったのである。
いや、わかってたよ。
いつものことだ。
葬式を終えて、落ち着こうとする。
なんともやりきれない気持ちだった。
その晩、彼女の夢を見た。
彼女がドロドロに溶けていく。
あまりの悪夢に叫び声を上げて、跳ね起きた。
「おはよう」
彼女がそこにいたので、私はリアルでも叫ぶことになった。
彼女は幽霊になっていた。
「なるほど」
彼女の話を聞いてまとめると、どうやら彼女も私に未練があって残ってしまったようだ。
どうにも顔がにやけてしまう。
求めていたのは、私だけではなかったのだ。
彼女いない歴の長さが災いし、求める気持ちは、どうしても独りよがりな感情に思えてしまうのである。
肉体こそ滅んでしまったが、彼女は彼女だ。
三日ほど彼女と浮かれた日々が続き、人生が上手く行き過ぎてる気がした。
これはいけない。
何か落とし穴があるはずだ。
そうだ、私が死んだらどうなるのだろう?
彼女が一人ここに取り残されてしまうのではないか?
「そんなのいやよ!」
仮説を話したら、彼女は当然の反応を示した。
「私だってイヤだ」
そこから話し合いが始まり、一つの結論に達した。
彼女は未練があって、幽霊になった。
であれば、私も未練を残して死ねば良い。
そうだと決まれば、浮かれてデートをしている場合ではない!
綿密なデート計画が始まった。
一番行きたいところは外し、二番目も念の為に外し、三番目に行きたいところに行く。
楽しい範疇ではあるが、楽しすぎないようにする。
そうして行ったデートが、存外楽しくてヒヤヒヤすることも度々あった。
「ちょっと、ここ良すぎ!」
「すまん、次からはもっと調べるから」
こうして揉める場面もあったが、結局なんだかんだ言って心底楽しんでしまった私がいた。
そうして寿命を迎えることになった。
「君が幽霊になってくれて、本当に良かった」
「ワタシも幽霊になって良かったわ」
「気がかりなのは、君のことだ。君を一人にさせるのだけは、なんとか」
「ええ、一人にさせないで、死なないで!」
「ふふ、君は死んでると言うのに」
「気持ちは生きてるのよ!」
そんなやりとりの中、私はこの世を去った。
意識を戻すと、いつもの家だった。
ガランとした家。
そうか、考えてみると当然だ。
彼女のことが気がかりなんだから、デートを楽しもうが未練は残る。
私は嬉しくなって彼女の名を呼びながら、家の中を探し回った。
しかしいくら探し回っても、彼女はいなかった。
……一人の男が、死ぬまで自分のことを想ってくれた。
そう、彼女の未練はなくなってしまったのである。
やはり私の人生は、上手くいってる時ほど怪しい。
<了>
コメント
1件
読了しました…「枯れ木に咲いた花」、めちゃくちゃ好きなタイプの話でした🌙 幽霊になっても一緒にいようとする2人の必死さが愛おしくて、でもデートを“楽しすぎないように調整する”ところで笑ったのに、最後のオチが本当に切なくて…彼女の未練が消えたってところ、ジワジワ来ました。やっぱり上手くいきすぎる時が一番怪しい、って彼の人生観が全てを物語ってて、読後感がたまらないです。 短いのに人生の重みを感じる、素敵な作品でした🖤