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「ねえ、学校……もう行かなくてよくない?」
すみれが言ったのは、雨の朝だった。
制服の襟に指をかけたまま、
彼女は真っ直ぐ私を見ていた。
私は一瞬、言葉を失ったけど、
その目が本気なのはすぐにわかった。
「私ね、もう教室の空気が、苦しくて」
「授業中も、誰と目が合っても、
“あなたがここにいない”って、それだけで駄目になって」
私は、ただ頷いていた。
たぶん、待っていた。
すみれの口からその言葉が出るのを。
「……じゃあ、行かなくていい」
その日から、ふたりは朝、制服を着るのをやめた。