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私の家でも、すみれの家でもない。けれど、ふたりで探し出した小さな空き部屋。
古びた団地の一室。
ネットもない、テレビもない。
カーテンすらない部屋に、
ふたり分の布団と、小さな電気ポットだけ。
でもそこに、
誰の声も届かなかった。
「時間、関係ないね」
「うん。もう、曜日も関係ない」
気が向いたら起きて、食べる。
それ以外は、ほとんどずっとくっついていた。
意味もなく笑って、意味もなく黙って、
ただ、ふたりで存在していた。
世界は小さくなっていくのに、
心のなかは満たされていくようだった。