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kz×lr
⟡ 嘔吐表現あり
⟡ 伏字なし
⟡ ご本人様とは一切関係ございません
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lrn視点
玄関の扉を開けた瞬間、冷たい夜風と一緒に、ふわっとアルコールの匂いが広がった。「……ただいま……」と呟く声はかすれていて、葛葉の返事を聞く前に靴をまともに脱ぐこともできず、ぐらつく足取りのまま廊下をふらふらと進む。
「おい、ローレン……」
葛葉が急いで駆け寄ってくる気配がした。
腕を取られた瞬間、身体のバランスが崩れて葛葉の胸に半分倒れ込むようになる。
「すげえ匂い。飲みすぎだ」
「……せんぱいが……すすめてきて……断れなかった……」
呂律のまわらない声で言い訳をしながら、胸の奥がぐるぐる回るように気持ち悪くて、もう耐えきれずにトイレへと駆け込んだ。
膝をついて便器にしがみつき、胃の奥からこみ上げてくるものを吐き出す。
「……っ、うぇ……ん”ん、…」
吐きながら情けない声が漏れる。目尻に涙が滲み、肩が震えた。
後ろからそっと背中をさする手があった。
「大丈夫か?ゆっくりでいいから」
葛葉の優しい声が耳元で響いて、少しだけ安心する。
しばらく吐いたあと、喉の奥がひりひりして、胃の中にまだ残っているような不快感が消えない。
「ッう”……気持ち悪い」
かすれた声で呟くと、葛葉は少しだけ眉をひそめて俺の横に膝をついた。
「もうちょっと出せるか?」
静かに首を横に振る。
「…いいから、口開けて」
不意にそう言われて、きょとんとした。
葛葉は真剣な顔をしていて、ふざける気配は一切ない。
ためらいがちに口を開けると、葛葉はゆっくりと指先を俺の口に差し込んだ。
「力、抜いて。ちょっと我慢ね」
喉の奥を軽く刺激された瞬間、身体が勝手に反応して、こみ上げる感覚が戻ってくる。
「っ……ごほ、ごめ……っ」
再び便器に顔を向けて吐き出すと、さっきまで残っていた不快感が少しずつ和らいでいった。
葛葉はその間ずっと背中をさすってくれていて、肩にそっと体温を添えてくれているようだった。
頭を優しく撫でられて、なぜか胸の奥がきゅっと締めつけられる。
「今日はこのままシャワー浴びて、着替えて寝よ。歩ける?」
「……たぶん」
立ち上がろうとした瞬間、ふらっと身体が傾いて、また葛葉の胸に倒れ込む。
アルコールの匂いがまだ残る空気の中、葛葉の体温だけが妙にくっきりして、ぐらぐらした世界を静かに支えてくれていた。
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kzh視点
玄関のドアが開いた瞬間、ふわりと鼻を突いた強いアルコールの匂いに思わず顔をしかめた。
「……ローレン?」
返事の代わりに、ぐらぐらと揺れる小さな影が廊下をふらつきながら進んでくる。靴もちゃんと脱げていない。その乱れように胸がざわついた。
「おい、ローレン……」
慌てて駆け寄って腕を取ると、そのまま俺の胸に半分倒れ込んできた。
身体は熱を帯び、酒の匂いと一緒に弱々しい呼吸が胸元に触れる。
「すげえ匂い。飲みすぎだ」
「……せんぱいが……すすめてきて……断れなかった……」
呂律の回っていない声。瞳はとろんとしていて、焦点が定まっていない。
嫌な予感がして支えたままトイレへ連れて行こうとした、その時ローレン が急に顔を歪め、俺の腕をすり抜けるように駆け込んだ。
便器にしがみついて、喉の奥から苦しそうな音を立てて吐き始める。
「……っ、うぇ……ん”ん、…」
震える肩、涙で濡れた睫毛。
俺は何も言わず、そっと膝をついて背中をさすった。背中は熱く、指先にその震えが伝わってくる。
「大丈夫か?ゆっくりでいいから」
優しく声をかけながら、ローレンの呼吸に合わせて背中を円を描くように撫でる。
しばらく吐いて、少し落ち着いたかと思ったけれど……表情にはまだ気持ち悪さが滲んでいた。
「ッう”……気持ち悪い」
かすれた声に、胸がきゅっと痛む。
「もうちょっと出せるか?」
ローレンは静かに首を横に振る。
「…いいから、口開けて」
ローレンが不思議そうに目を見開いた。でも俺を信じるようにゆっくりと口を開ける。
俺はそっとその口の中に差し込んだ。
冷たい指先が柔らかい舌に触れた瞬間、ローレンの身体がびくっと反応する。
「力、抜いて。ちょっと我慢ね」
喉の奥を優しく刺激すると、反射的に身体が震え、再び便器に顔を向けて吐き出した。
「っ……ごほ、ごめ……っ」
何も言わずに背中を撫で続ける俺の手に、だんだんと力が抜けていくのがわかる。
苦しそうな呼吸が落ち着き、顔の血色も少しずつ戻っていった。
タオルを濡らして、口元を優しく拭う。
「今日はこのままシャワー浴びて、着替えて寝よ。歩けそう?」
「……たぶん」
立ち上がった瞬間、身体が傾いて俺の胸に倒れ込む。
咄嗟に抱きとめると、華奢な身体が腕の中にすっぽりと収まった。
「おっと、大丈夫か?ゆっくりでいいよ」
耳元で囁きながら、背中に手を回す。
ローレンの体温は高くて、酒の匂いと泣いた後の少し甘い匂いが混じっていた。
ぐらぐらしていた世界の中心に、俺だけが残っているような、そんな錯覚に陥る。
ローレンの身体を支えながら、ゆっくりとトイレを出る。
廊下にはまだアルコールの匂いが残っていたけれど、不思議と嫌じゃなかった。
それよりも小さく震える背中を支える自分の手の温度の方が、ずっと鮮明に心に刻まれていた。
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2025/10/7
最後までお読みいただきありがとうございました。