テラーノベル
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「俺と菊は、本来一緒になってはいけないのではないか」
菊と共にいながら────そんな考えが脳裏をよぎることがある。
如何せん俺の国は、菊の国の支配下に置かれていた事実があるとはいえ、それに対する被害者意識を拗らせた末に、寧ろ加害者になっているような、そんなろくでもない国だ。故に、俺の国を嫌いな菊の国の奴も、それなりに多くいる。
そんな現状のもとで、菊のことを好きでい続けて、菊と付き合い続けて、果たして良いのだろうか。そう考えてしまうのだ。
そして何よりも心配なのは、俺自身よりも菊だ。俺と一緒にいることで、菊が世間から白い目で見られやしないか、あるいは同胞から「売国奴」と罵られやしないか。あいつを結果的に祖国で生き辛くさせることを、俺は微塵も望んではいない。あるべき居場所から拒まれる運命ほど、悲しいものはないからだ。
だから別れた方が良いのだろう。菊の将来のためにも。俺はあいつと、同じ道を歩むべきではないのだろう。
……どうしてだろう。凄く涙が溢れてくる。俺の国と菊の国にとっての「正解」を導き出している筈なのに。
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