⚠️・irxs
・青桃
・Dom/Subユニバース
・サブドロップ(過呼吸表現あり)
・Xで投げてたやつです🙇🏻♀️
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「…ごめんなさい」
バツが悪くて、思わず目を逸らす。
目の前に立ったまろは何も言わない。
「会社の人と飲んでて…そんで、間違えて度数高いやつ飲んじゃって、寝落ちて…」
目が覚めた時、盛り上がる宴会の席の片隅だった。
「あ、起きた。おはよw」
同僚の声に体を起こす。
「…?まって、俺」
「お前、間違えて度数高いやつ飲んでそのまま寝てたwほんとに酒弱いんだな」
ああ、そっか。やけにボーッとする頭を抑えてスマホを開く。
23:47
自分の顔が青ざめるのが分かった。
まろ
今日何時頃帰れる予定?
まろ
ちゃんと連絡入れてな。心配やから
まろ
ないこ、大丈夫?
まろ
不在着信
まろ
不在着信
まろ
ないこ。見とる??見たら返事して
まろ
不在着信
。。。
ないこ
ごめん
ないこ
寝落ちてた。今すぐ帰る。ほんとごめん
既読
返信は帰ってこない。
怒ってる、ぜったいに。
息がしにくくて、一刻も早く家に帰らないと行けないのに、酔いもあって体がふらつく。
「おい、内藤お前大丈夫か?水もう一杯飲む?」
「…ごめん、いいや。今日もう抜ける」
「その方がいいかもな。お前顔色悪いもん。タクシー呼ぶ?」
「お願い」
早く謝りたいのに、帰るのが怖い。なんて謝れば許してくれるだろうか。もやもやと考えても思考がまとまらない。
まだ店すら出ていないのに、心臓がうるさかった。
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「何回目?」
「……」
「何回目って聞いとるんやけど」
「3…ごめんなさい」
「それ、もう聞き飽きた」
まろの大きな溜息に思わず肩を揺らす。
「今回のは、ほんとに、ごめん。まろに言われた通り、強いお酒のまないで、弱いやつ少しだけしか飲んでなかったんだけど、間違えて…」
前回怒られてから、飲みの席でも酒はほとんど飲んでいなかった。付き合いで本当に軽く飲むくらい。分かって欲しくてもごもごと口にしても、まろは眉を顰めるだけ。
「それ、他の人のグラスに口つけたってことやんな」
「…ごめんなさい」
失敗した。もう謝ることしかできない。完全に俺の落ち度だし、俺のミスだ。行き場を失った拳を握りしめる。怒っているまろが怖くて、思わず俯いた。
「look」
ピリ、と空気がさらに冷たくなった気がする。
「何逸らしてんの」
大好きな目が、俺をきつく睨みつけた。
「ご、ごめん…」
瞬きも許されないような重圧の中、声を絞り出す。
「……」
夏のはずなのにやけに指先が冷たくて、寒いような気すらした。
諦めたようにまろがソファに座り込む。
「corner」
「…ぇ」
「言うこと聞けないの?」
初めて出されるcommand。投げられた言葉に慌てて壁へ向かう。
「これ、おしおきやから」
背後から声だけが聞こえる。
「そこで、自分がやった事ちゃんと考えて。反省して。じゃないとこれからの話とかもうできひんから」
まって、と思わず出そうになった声を必死でこらえる。自分がやったことを、考えて、反省する。それが出来ないと、今引き止めたところで、許してくれないだろう。
身動ぎをするかすかな音の後、なにも聞こえなくなった。
3分、10分、15分。もしかしたらこれよりもっとずっと長かったかもしれないし、短かったかもしれない。物音1つない部屋でただ壁に向かって立つ。後ろを振り返って確認することもできない今、まろの存在を確認できるすべは無い。息遣いが聞こえてきやしないかと、必死で耳を済ませても、何も聞こえない。
あまりの静けさに、ここには居ないんじゃないかと錯覚しそうになる。
もう、飽きられたんじゃない?
頭の中に浮かんだ言葉を打ち消した。
大丈夫、俺がちゃんと反省して、ちゃんと謝れば。不安で押しつぶされそうで、涙が滲む。
「…まろ」
1度考えてしまった最悪の事態は中々脳を離れてくれなくて、思わず小さく呟いてみる。
いつもなら絶対に帰ってくる返事。
「なぁに?」
甘い声が、頬を撫でるのを思わず期待する。
「」
返事はなかった。
ああ、そっか。まろ、もう俺のこと、いらないんだ。俺が約束を破った、わるいこだから。視界がぐるぐると回って、寒い訳でもないのに震えが止まらなくなる。だめだ、しっかり立たないと、これはおしおきなのに。
分かってるのに焦る度に呼吸が早くなる。
ちゃんと、やらないと、いいこになれない。まろに、褒めて貰えない。ねえ、お願い、ゆるして。いいこに、なるから。もうやくそく、破らないから。
目の前の壁に向かってブツブツと呟く。
こんなことされたのなんて、初めてだった。まろは、いつもおれを大事にしてくれたから。
じゃあいま、これをされているのは、
おれが、もうだいじじゃないから?
ガクンと膝が折れた。
「…、…!」
「…こ!ない……!!」
「ないこ!!!!、」
どのくらい時間が経ったのか、ここがどこなのかも分からない。
抱きしめられて、冷えきった手を取られる
「ゆっくり息吸って、そう。大丈夫やから」
何を言われているのか分からなかった。
「ごめんな、やりすぎたな。大丈夫、大丈夫」
何度も背中をさすられて、徐々に意識がしっかりしてくる。ボロボロと涙が頬を伝うのが分かった。
「ご、めん、ごめんなさい…っ、やくそく、やぶってッ、おしおきも、ちゃんと、できなくて」
「ん、もうええよ。大丈夫」
「わるいこ、で…ッごめんなさい」
すてないで、
「大丈夫、わるいこじゃないよ。捨てたりもせんよ」
まろの手が頭を撫でる
「Good boy。いいこやね」
暖かい手が頬を滑る。
「いいこ、じゃ、ない。わるいこ、だから。おしおきもっとしないと、」
「俺がいいこって言ってるんやから」
ちゅ、と軽く唇が触れた。
「ちゃんと帰ってきてえらこやね」
「ごめんなさいできたね」
「command頑張ろうとしてくれたの嬉しかった」
段々と心が暖かくなって、ふわふわしてくる。
大きく息を吸い込むと大好きな香りに包まれた。安心感から思わず目を閉じる。
押し付けた胸元から聞こえる規則的な心音。
額を滑る俺より少し大きな暖かい手。
身体から自然と力が抜けるのがわかる。
「寝てもええよ」
耳元で囁かれた言葉に安心して、意識を沈めた。
。。。
一瞬大きくふらついたないこが、膝から崩れ落ちるのを見て思わず駆け寄った。
「ないこ…!!ないこ?!」
声をかけても一切聞こえていないようで、ひたすらにブツブツと唇を動かす。握った手は冷えきっていて、今まで見た事のないくらい青白い顔に、思わず言葉を失う。
サブドロップ。
実際に目にしたのは初めてだった。
ないこは精神的にも体力的な面でも強くて、多少ハードなcommandを出してもドロップしたことは無かった。それに、自分自身も。お仕置としてcommandを出したことなんて今まで1度もない。自分で言うのもなんだが、理性は割としっかりしている方だと思う。基本怒らないし、今回のようにcornerなんてcommand使ったこともない。でも、どうしても、さんざん心配したあとのLINEに、安堵よりも怒りが来てしまった。
「ゆっくりな、ゆっくり息吸って」
安心させるように、何度も背中を摩って声をかけ続ける。完全にパニック状態なないこは、自分が過呼吸を起こしていることも多分理解していない。
「ごめんな、やりすぎたな。大丈夫、大丈夫」
段々と呼吸が整ってきたかと思うと今度は瞳から大粒の涙を零す。
「ご、めん、ごめんなさい…っ、やくそく、やぶってッ、おしおきも、ちゃんと、できなくて」
「ん、もうええよ。大丈夫」
「わるいこ、で…ッごめんなさい」
すてないで、
小さく聞こえた言葉に、思わず唇を噛む。
こんなこと、言わせたいわけじゃなかった。
自分の感情に任せてcommandを口にしたことに酷く後悔する。
「大丈夫、わるいこじゃないよ。捨てたりもせんよ」
温もりを確かめるように抱き締めれば、ないこが小さく息を吐いた。
「Goodboy。いいこやね」
そっと桃色の髪を撫でる。
「いいこ、じゃ、ない。わるいこ、だから。おしおきもっとしないと、」
「俺がいいこって言ってるんやから」
自分を責める言葉が出てこないよう、軽く唇を塞いだ。
「ちゃんと帰ってきてえらこやね」
「ごめんなさいできたね」
「command頑張ろうとしてくれたの嬉しかった」
頬を伝う涙を拭って繰り返すと、目を閉じるないこ。胸元に押し付けられた頭を撫で続けると、安心したように体の力が抜けたのが分かった。
「寝てもええよ」
囁くと直ぐに聞こえてきた寝息。腕の中の体温を確かめるように、そっと抱き締めた。
ごめん。
耳元にそっと顔を寄せる。いつもの香水の匂いと微かな酒の香り。
飲み会だって、仕事上必要な付き合い。そんなこと分かってる。でも、どうしても縛りたい。俺の手の届かないところに行かないで欲しい。
そんな気持ちが、自分の中で渦巻いていることに、自分が1番驚いている。
こんなに好きになったのも、こんなに思い通りにいかないのだってないこがはじめてで
「好きだよ」
涙のあとが残る目尻にキスを落とす。
明日の朝、ないこが起きたらもう一度謝ろう。それから、その何倍も好きだと伝えたい。
腕の中の温もりを確かめるように、瞼を閉じた。
コメント
1件
やばッ好きめっちゃ泣いた笑