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第二部
第五章 ちぃのひみつ
ぼくの名前は、ゆうきちひろ。
毎日、大学へ行って。
帰りは、にぃにの会社へ行って。
はるにぃと、にぃにと、おやつを食べて。
三人で笑う。
そんな毎日が、大好き。
でもね。
ある日。
ぼくは、小さなことに気付いた。
「にぃに、おはよう。」
「おはよう、ちーちゃん。」
いつもの朝。
健康チェックをしてもらって、ご飯を食べて。
大学へ送ってもらう。
全部、いつもと同じ。
……だったはず。
大学へ着く少し前。
にぃにのスマートフォンが鳴った。
画面を見たにぃにが、ふわっと笑う。
「はるだ。」
ぼくは横から画面を見る。
『気を付けてね。会議の資料は準備してあるよ。』
短いメッセージ。
なのに。
にぃには、とても嬉しそうだった。
(……あれ?)
ぼくも、にぃにからメッセージが来ると嬉しい。
もしかして。
はるにぃも、おんなじなのかな。
大学が終わって会社へ行く。
受付のお姉さんが言った。
「今日は社長、朝からずっと遥さんと一緒でしたよ。」
「そうなんだ。」
「本当に仲良しですよね。」
ぼくは笑った。
「うん!」
でも。
なんだか今日は、その言葉が心に残った。
社長室。
「ただいま。」
「おかえり。」
にぃにが頭を撫でてくれる。
その隣で、はるにぃも笑っている。
二人は仕事の話をしている。
「ありがとう。」
「ううん。」
「助かった。」
「当然でしょ。」
たったそれだけ。
でも。
目が合うたびに笑ってる。
相手が何を言いたいか、全部分かってるみたい。
𝐀𝐘𝐀_

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メイ
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ぼくは静かにクッキーを食べながら、二人を見ていた。
(なんだろう。)
なんか。
あったかい。
その日の帰り。
車の中。
ぼくは寝たふりをしていた。
本当は起きてた。
前では、にぃにとはるにぃがお話ししてる。
「今日は助かったよ。」
「ちかが無理しそうだったからね。」
「ごめん。」
「謝らなくていい。」
少し間が空く。
「昔から変わらないね。」
「はるもね。」
「そうかな。」
「僕が困ってると、一番に気付いてくれる。」
「当たり前だよ。」
「親友だから。」
ぼくは、その言葉を聞いた。
親友。
そう。
二人は親友。
でも。
(……ほんとうに、それだけ?)
なんとなく。
そうじゃない気がした。
数日後。
休日。
三人でリビングにいた。
ぼくはソファで、くぅちゃんのお洋服を着替えさせていた。
その時。
にぃにが高い棚の本を取ろうとした。
少し離れた場所にいたはるにぃが、何も言わずに脚立を持ってくる。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
お互い、言われる前に動いてる。
ぼくは手を止めた。
(あ。)
そうだ。
いつもそう。
ぼくが熱を出した日も。
会社でも。
おうちでも。
二人は、いつも同じ。
「にぃに。」
「ん?」
「はるにぃ。」
「どうした?」
ぼくは首をかしげる。
「ふたりって。」
「うん。」
「おんなじこと、かんがえてるの?」
二人とも目を丸くした。
「どうして?」
にぃにが聞く。
「だって。」
ぼくは、素直に思ったことを話した。
「にぃにが、おみずっておもうと。」
「はるにぃ、もうもってきてる。」
「にぃにがおしごとでこまると。」
「はるにぃ、すぐたすける。」
「はるにぃがつかれてると。」
「にぃに、コーヒーいれてる。」
「……。」
「……。」
部屋が静かになる。
ぼくは続けた。
「ちぃね。」
「うん。」
「きづいちゃった。」
「何に?」
ぼくは、にっこり笑った。
「ふたり、おたがいのこと。」
「すっごくだいすきなんだね。」
その瞬間。
にぃにも、はるにぃも固まった。
「え……?」
「ちーちゃん。」
ぼくは慌てて首を振る。
「あ。」
「ちがった?」
「……。」
「ごめんなさい。」
そう言うと、はるにぃが小さく笑った。
「いや。」
「ちーちゃん。」
「うん?」
「その答えは……。」
遥は千景を見つめる。
千景も遥を見る。
少し照れくさそうに笑い合った。
そして千景は、優しく千弥の頭を撫でた。
「まだ、僕たちも分からないんだ。」
「そうなの?」
「うん。」
「でもね。」
遥が穏やかに続ける。
「お互いが、とても大切な存在なのは本当だよ。」
ぼくは安心した。
「そっか。」
それならよかった。
だって。
にぃにが笑うと、ぼくも嬉しい。
はるにぃが笑うと、ぼくも嬉しい。
だから。
二人が一緒に笑っていられるなら、それが一番。
ぼくは、くぅちゃんをぎゅっと抱きしめながら、心の中で小さくお願いした。
(これからも、ずっと三人で笑っていられますように。)
その願いを乗せるように、春風がリビングのカーテンをふわりと揺らした。
ーーー
第二部 第五章終わり。
第二部 第六章へ続く。
コメント
1件
ちぃちゃんの目線で、にぃにとはるにぃの関係に気づいていく感じ、すごく丁寧に描かれてて胸がぎゅっとなったよ…「おんなじこと考えてるの?」って聞くところ、子供の純粋さがすごく出てて可愛かったし、最後に二人が照れくさそうに笑い合うところ、じんわり温かくなった🥀 「まだ僕たちも分からないんだ」って言葉も、すごく大人っぽくて、でも優しくて好きだなあ。この家族の形、すごく尊いよ…