僕は四歳になっても個性が出なかった……
始まりは中国で発光する赤子が生まれた事だ。個性を持つ物は異常として扱われていたがいつしか日常へ。人口の約八割が個性を持っており、残り二割が無個性となっていた。個性を持つことが当たり前になった今、無個性の扱いは酷くなっていった。
僕は数少ない無個性になってしまった。親からは蹴られ火傷を負わされ殴られ……「お前なんか居なくなれば良いんだよ!」「恥さらしめ!!」「出て行け!」などの言葉をいわれた。
僕には二歳下の弟が居る。名前は啓悟、鷹見啓悟。とても優秀で個性が剛翼、強い個性だ!誇らしい。弟は優しくて良い子だ。将来はとても良いプロヒーローになりそうだ。
僕はわずか7歳にして親に捨てられた。行き場の無かった僕は森にいつの間にか来ていた。一つ大きな切り株に座りため息を付く。泣くなんて事はしない。全てが終わってしまったから。
“大丈夫?”
後ろから声を掛けられた。なんだ!?と慌てて振り向く。そこには一匹の兎が居た。
“どうしたの?”
リス、狐、猫……様々な動物が集まってくる。不思議なことに僕は動物の声が聞こえた。
「貴方たちは?」
“僕は狐!”“私はリス!”“俺も俺も!!”
どんどん自己紹介が始まる。ポカンと聞いていたら“名前付けてよ”そう言われた。言われるがままに僕は皆に名前を付けていった。
「狐のキュウ」「猫のキル」「リスのミクロ」「狼のフェンル」「トンビの……、…
こうして、名前を一つ一つ丁寧(?)に付けていった。
動物達と暮らし始めて数ヶ月、果物や水、着る物は森でどうにかなった。そして僕に個性が見つかった。弟と同じで剛翼。複数持ちで透明化と異空間。この3つの個性だ。嬉しかったけど悲しくもあった。この剛翼の翼を見ると思い出してしまう。啓悟は元気で暮らしているだろうか。
“剛翼が嫌い?”
僕は剛翼の紅色の翼を見るたびに悲しそうで懐かしいような顔をする。
「ううん。好きだよ」
“良かった!僕、この翼ふわふわで綺麗で好きだから!!”
有難う。ただその一言。キルは嬉しそうな顔をしながら僕の翼に頭や首をこすりつけてゴロゴロとならしている。
月日は流れ僕は高校1年生になった。
僕の名前は鷹見出久から緑谷出と、名前を変えた。これは正体がばれないようにするためだ。
雄英に試験を受け、見事に主席合格になった。雄英には僕の個性は異空間と透明化だけだと書いた。個性届けにもその二つしか書いていないのでバレることは無い。
異空間は物をしまったり、異空間の中は広い草原で自然豊か、真ん中にはとても大きな木が道案内するように生えているので、休憩するにはちょうど良い。上手く使えば瞬間移動が出来たりする。
透明化は足音、息、気配、声などを消すことができ、壁だってすり抜けられる。ただ全て消すことは短時間しか出来ない。
体育祭では最初の競技は異空間を使いゴールまで瞬間移動してゴールした。
次の競技では、透明化を使って全てのはちまきを奪いまたしても1位になった。
次は一対一の勝負で、小さい頃から特訓していたので力もなかなかあり、個性把握テストではぶっちぎりの1位だった出久にこの勝負はとても都合が良かった。
結果は勿論最後まで1位だった。
こうしているうちに時間が過ぎ3年になった。
緑谷出は三日に一回のペースで異空間の草原に行き、そこに入って貰った動物達にあいに言ったり剛翼の練習などをしている。
緑谷出はこの学校で一番強い人物となった。
「おい、出、聞いたか!今年の1年A組、除籍無しだってよ」
凄いね。と一言を興味のなさそうに言う。
「見に行こうぜ出!」
嫌だ。そう言うが無理やり手を引っ張られる。面倒くさいな。
「彼奴だよ!轟と爆豪、そして一番が鷹見啓悟!」
!!啓悟!?
僕は部屋を見わたす。
「お、やっぱり気になってたのか?鷹見啓悟って奴凄いよな。個性把握テストでは出とはまだぜんぜん差があるけどこの学校じゃ二番目に強いぜ。めっちゃめちゃ差がある理由は、ただ単に出が強すぎなだけだけどな」
僕はそんな彼の言葉も聞かずにただ啓悟を見つめた。啓悟はすぐに目線に気付きこっちを見る。僕は少しの間フリーズした。そして個性で認識されにくいようにして屋上まで上がった。そこまでつくと異空間に入るゲート的な物を開けて素早く入っていった。
広い草原の中心に大きな木があるそこの下に紅色の翼を使って木まで行き、立ち止まる。
僕はさっきの啓悟の事を思い出した。彼は何もやる気が無いような、何か足りないような、昔のような希望に満ちた瞳ではなく、くすんで、ドロドロとした物に変わっていた。一見綺麗で透き通っていると思わせるがよく見れば奥が暗い暗い霧に包まれ歪んだ瞳になっている。
「どうして!!?」
僕は叫んだ。あんなに真面目で良い子で素直だった彼はどうしてあのようになってしまったのか……
理由は大体分かる。あの親と個性のせいだろう。周りからは個性が凄いからとこびをうたれたり、親からは重い信頼と責任を負わされたのだろう。
目から涙が溢れる。ごめん、ごめんね。そう何回も思う。
バサリッ!!と大きな音を立て真っ赤で派手な紅色の翼を感情に任せて広げる。その反動で羽が何枚か落ちる。
後悔と怒りが渦巻く……。手を強く握っているせいで血が垂れている。そんなことは気にせずにただ立ち止まるだけ。
ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”
喉が潰れそうなほど、鼓膜が破れそうなほど叫ぶ。
しばらくたった後気持ちが落ち着いて学校に戻っていく。
少しクラスメイトには心配されたがすぐにいつものように戻った。出の頭の中は啓悟の事でいっぱいになっていた。
ある日、授業中に先生が焦った様子でドアを開けて今の授業の担当の先生に何かを伝えている。僕は森で生活していたため五感は優れていて内容がハッキリと聞き取れた。
“1-AがUSJで大量のヴィランに襲われて…”
僕の行動は速かった。その言葉を聞いた瞬間動いていた。すぐに立ち上がり窓を開けて飛び出す。剛翼はばれたらいけないので透明化を使い翼を広げて最大スピードで飛んでいく。
そうしたらものの数分で付いた。天井を思いっきり突き破り中の状況を確認する。
変な脳がむき出しな明らかに強い奴、手だらけの灰色の髪をしたまだ若いと思うヴィラン、霧でモヤがかかっているヴィラン。他は雑魚。
啓悟を探すと手だらけの灰色の髪をしたヴィランが啓悟に何かをしようとしていた。僕は透明化も忘れて羽を飛ばしそのヴィランに攻撃していた。
手だらけのヴィラン「イタッ!なんだこれ!羽か?!チートがよ!!アガッ」
啓悟「!?」
手だらけのヴィラン「の、脳無!やれ!」
脳無「ウガアァア!!」
出「死ね」
酷く冷静で無慈悲な殺気を乗せた声でそう言うと出は脳無を蹴り、USJの外まで飛ばした。
手だらけのヴィラン「クソがクソがクソが!!」ガリガリ
最後にゲームオーバーと言ってヴィランは帰って行った。
啓悟「出……久兄さん……?」
僕は啓悟の方を向き、勢いよく抱きしめ、翼を啓悟の方へ寄せた。
出久「啓悟、無事で良かった………!!」
ボロボロと涙を流しながら言う。
啓悟「出久も元気で良かった…!」
僕は羽が少なくなり、ボロボロになった啓悟の翼を優しく撫でる。
そうしていたら、プロヒーロー達が駆け込んできた。プロヒーローはこの状況を見てキョトンとしていた。
その後凄い怒られて反省文を何枚も書かされた。
啓悟「出久!!」
出久「どうしたの!?まさかまってくれたの!?」
啓悟「一緒に帰ってイイ?」
出久「うん、一緒に帰ろ」
啓悟「有難う。」
出久「~~~、!……!ーー?」
啓悟「~~!--……、、……………………」
出久「どうしたの?」
啓悟「………」
出久「大じょう……ぶっ!?」
啓悟が出久の口元を布で抑えた。いつの間にか僕は裏路地にいた
出久「なに……、し……………」
啓悟「……やっと会えた」
出久の親は八年前に殺された。啓悟によって……。
啓悟は出久が大好きだった。だが、それが恋とは知らなかった。
出久が出て行った。目の前が真っ暗になった。なんでなの?
俺は親から厳しい訓練を受けた。抵抗や反抗はしなかった。その訓練のおかげで俺は強くなった。
そして親を殺した。別に何にも思わなかった。
会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい
俺はこの気持ちが分かった。これは恋なのだと。
毎日毎日出久の事を考えていた。
そして高1になった。個性把握テストをして、俺は有名になった。そして毎日のように廊下には人でいっぱいになっていた。
つまらない。出久が居ないなんて。
そう思っているといつもとは違う視線を感じた。
そっちを向くと……
────────出久が居た。
でもすぐに何処かに行ってしまった。
USJの時間にヴィランに襲われた。その時、クラスメートの一人が応援を呼びに行った。
そして時間がたち死柄木が俺に近づいてきた。余裕で倒せれる。でも絶対に出久がくる。
ほら、予想通り。格好いい。
俺のために怒る姿を見るとゾクゾクする
。あんな敵には余裕で勝つけどボロボロになっていた方が心配してくれるでしょ?
俺は帰りを誘った。出久は何も知らずに楽しそうに話す。
出久の口を布で抑える。
「……やっと会えた」
綺麗な瞳は出久のせいでドロドロになっていく。
どんどんどんどん落とされていく。
もう戻れない。
こうなったのは出久のおかげ。
出久のおかげで幸せを見つけた。
「やっと俺の物になった。出久…もう離さないよ。二人で幸せに生きようね。」
歪んだ瞳にはもう、少年一人しか映さない
オワリ
コメント
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タイトル神。内容神。トータル神☆