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気がついたら、建物も、何もかも、
なくなっていた。
「…………」
敦は、瓦礫の中に立っていた。
冷たい風が頬を撫でる。
目の前にあったはずの孤児院は、
跡形もなく崩れていた。
壁も、屋根も、窓も。
何も残っていない。
「……え……?」
敦は、ゆっくりと辺りを見回した。
どうして、ここにいるのだろう。
どうして、こんなことになっているの
だろう。
分からない。
最後に覚えているのは、いつもと変わらない一日だった。
誰かが怒鳴っていた。
何かが割れる音がした。
それから――
「…………」
そこから先だけが、
綺麗に抜け落ちている。
頭の中が、真っ白だった。
「僕……何してたんだ……?」
自分の手を見る。
小さく震えていた。
けれど、何故震えているのかも分からない。
「先生……?」
呼んでみる。
返事はない。
「……みんな……?」
返事は、なかった。
あまりにも静かだった。
敦は、瓦礫の前に立ち尽くした。
何が起きたのか。
誰が何をしたのか。
自分が何をしていたのか。
――何ひとつ、分からなかった。
それから、どれだけ歩いたのか。
敦には分からなかった。
行く場所なんて、もうない。
帰る場所もない。
そして何より――腹が減っていた。
「…………お腹、空いた」
呟いた声は、自分でも驚くほど弱かった。
何か食べなければ。
そう思って歩き続けた。
けれど、何も見つからない。
空腹は時間が経つほど酷くなった。
腹の奥が痛い。
足元がふらつく。
視界が時々、白く霞んだ。
「……何か……」
食べ物を探そうと辺りを見回す。
けれど、もう身体が言うことを聞かなかった。
膝から力が抜ける。
「……っ」
敦は、その場に座り込んだ。
冷たい風が、また頬を撫でていく。
寒い。
眠い。
お腹が空いた。
それでも、眠ってはいけない気がした。
「…………」
何故かは分からない。
ただ、生きなければと思った。
その時だった。
「君」
声がした。
敦が、ゆっくりと顔を上げる。
そこには、一人の男が立っていた。
「こんなところで何をしているの?」
「…………」
答えようとした。
けれど、声が出ない。
男は敦をじっと見つめた。
しばらくして、僅かに目を細める。
「……随分と酷い有様だね」
敦は俯いた。
「……何も、食べてなくて……」
「そう」
男はしゃがみ込み、敦と目線を合わせた。
「名前は?」
「…中島……敦」
「敦くん、ねぇ」
男は敦の顔をじっと見つめた。
「…………」
「?」
「………かわいいな…」
「…………は?」
「いや、なんでもないよ」
「敦くん」
「……はい」
「君、自分では気づいていないだろうけど」
男は、静かに言った。
「君には、才能がある」
「……才能……?」
敦には、その言葉の意味が
分からなかった。
自分には何もない。
そう思っていた。
帰る場所もない。
頼れる人もいない。
食べるものすらない。
そんな自分の、いったい何を見て――。
「…………」
男はそれ以上、何も言わなかった。
敦も、尋ねることができなかった。
ただ、その言葉だけが妙に耳に残った。
――この時の敦は、まだ知らなかった。
自分の中に、自分自身すら知らない「何か」があること。
えいてぃーん @出戻り .
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Mina✩.*˚
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