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「ん?…これ以上は入らないな」
「やっとですか…」
ついに魔法の鞄の限界に辿り着いた。
「320個も入ったね。ということは、重量の限界が160キロくらいってことかな?」
「いや、瓶の重さもあるからざっと250〜300キロくらいだろ?それも体積が先に限界に来ていたら重量の限界はまだ先だし、仮に重量が先に限界に来ていたら比重の軽い物ならもっと入るってことだな」
「どうしちゃったの?セイくん…急に賢くなったのかな?」
魔法の鞄を手に入れてからおかしくなった聖奈さんは無視するとして。
「人が入ったらどうなるんだろうな?」
「その発想はサイコパスっぽいねっ!」
なんで嬉しそうなんだよ……
「流石に私達で試すのはリスクが高過ぎますね。
これからその方法を取りたくなる前に、賊でも入れて試しましょう」
いや、俺はそんなことは考えてなかったぞ?
異世界の価値観がそうなのか……
ミランさんだけがおかしいのか……
永遠の謎にしよう。世の中知らない方が幸せなことが多いからな!
「そうだね…賊の登場を待つしかなさそうだね」
「後は時間経過くらいか?」
と、いうことで、空き瓶に湯を入れて蓋をした物と氷を入れた物を魔法の鞄に入れておいた。
30分寝かせた物がこちらになります。(◯分クッキング風)
「どう?」
「お湯の方はわからんな。時間が短過ぎたか。
だが、氷は一目瞭然だな!」
比べる為に、同時に作った氷入りの瓶。魔法の鞄の外の瓶は半分溶けている。
中の瓶は……
「同じだね…」
「まぁ、仕方ないわな」
「流石にそこまでのモノではなかったですね」
同じく半分溶けていた。
「あくまで氷だけだからな。それに俺たちには魔法があるからそこまで固執するモノでもないし、そもそも貰い物だしな」
これはよくある時間停止系の魔法の鞄ではなく、聖奈さんがショックを受けていたのでフォローしといた。
また情緒不安定になられたらミランの教育に良くないからな。
「そうだね!便利さの中にも不便さが混同しているモノがファンタジーだよね!」
いや、何言ってっかわかんねーよ。
「ところで入り口の広さ?
入るモノの幅とかはどうなのかな?」
「・・?普通に考えて入り口より大きい物は入らないのではないですか?」
異世界モノの知識は、異世界に住んでいるミランが一番知らないもんな。
不思議だ……
聖奈さんの影響か、自分でも自分が何を言ってるのかわからなくなってきた。
「とにかく試そう?」
そう言って聖奈さんは近くにある、持てて大きいモノを探して、とりあえず椅子にしたようだ。
「ホントは箱とかが良いんだけど、とりあえずね!」
お尻を乗せる天板?部分が入りそうには見えないが…どうだ?
「引っかかるね…」
なるほどな。大分わかってきたな。
「他にはあるか?」
俺の質問に、ここに来て初めてミランが疑問を呈した。
「あのぅ。モノを入れて逆さにしたら……
いえ、忘れてください。普通に出てきますよね…」
俺達が突拍子のないことばかり言っていたから真似をしてみたけど、いざとなって恥ずかしくなったな!
だけど・・
「良い疑問だな!試そう」
逆さにして出ないなら液体やそれに近いモノでも入れられる可能性がある。
他の中身が壊れたら嫌だから入れたくないけど。
「何を入れて試すの?砂糖だと瓶が割れたら面倒だよね」
「これを入れよう」
俺が聖奈さんに渡したものは……
「金貨ね。確かにこれなら簡単に溢れないとおかしいもんね」
ジャラジャラ……
ん?袋に入った瞬間に音も消えたな。不思議だ。
「じゃあいくね!」
そう言うと、聖奈さんは口を開いて逆さにした。
シーン
「出てこないね。仕組みは一切わからないけど、これなら簡単に溢れないね」
外と中では干渉出来ることが決まっていそうだな。
氷が溶けたのは暖かい空気も一緒に取り込んだからか?そして時間は干渉すると……
金貨が溢れないということは、瓶を入れて袋を叩いても、袋が壊れない限り瓶も壊れそうにないな。
これも壊れたら嫌だから試せないけど……
「後は気付いたことを都度試すでいいか?」
「うん。纏めると、異世界モノの魔法の鞄だね。時間停止は出来そうにないけど」
そうだ。袋って言ってたけど鞄だったな。
わかりづれぇ・・・
「お陰で旅が楽になりますね!砂糖の納品とかも」
そうだな。実験よりも実際にどう使うかだよな。
さすリダ!
「その為にも、魔法の鞄がどういう扱いなのか調べないとね!」
扱い?
「そうですね。怪しいモノを入れていて、門で魔法の鞄の中まで検査されたら不味いですしね」
怪しいモノとはなんぞ?
心当たりが多すぎるぞ……
でも、二人の言う事はもっともだな。
使う上でも何を入れるか、どこで使うかの指標になる。
俺達は王都ではなく、始めにリゴルドーの街で聞き取りをした。
「やっぱりみんな知らないって」
そう言ったのは聖奈さんだ。
二人には一緒に店などに行ってもらって、話しを聞いてきてもらった。
俺はと言うと……
「知っていたぞ」
「えっ!?やったね!それで誰が?やっぱり…」
「ああ。ハーリーさん達だ。商人組合の人達は軒並み知っているそうだ。
後はランク2以上の商人だと常識らしいな。
貴族も知っているそうだ。上位貴族だと持っているのがほとんどらしい」
「やっぱり商人さんからすれば、憧れの物だよね!
じゃあ、持ってない貴族に狙われそうだね…」
「貴族だけではありません。知っている者であれば、全員が手に入れたいと思いますよ。狙うかどうかはその人次第だと思いますが」
それほど便利だもんな。有効活用するにも悪巧みにも。
なんでこんなモノくれたんだ?
同じ価値の貨幣とかの方が王家や治安の為にはいいだろ?
「セイくん。どうせ、『何で王様達は俺たちにこんな便利で危ないモノを渡したんだ?』って考えてるでしょ?」
なにっ!?心の声が……
いや、顔に出てたのだろうな。
ポーカーで培ったポーカーフェイスはどこいった?
「私達だからだよ。みんな言ってたでしょ?私達のことを善人だって」
えっ?聖奈さん善人になるの?
無理だと思うよ。
俺?俺は元から善人だよ。
「王家の人たちは何か期待しているのかもね!でも、私達には関係ないから好きにするけどね!」
うん!君はそのままでいいよ!
「俺も好きにしたいから期待されてもな」
「私はそもそも王子を助けていないですから、それには関係無さそうですね」
ミランさん?一人だけ逃げる気かい?
俺も王子には何もしてないんだよ?
正義のヒーローは聖奈さんに任せようね。
なんだかんだ言って、あの人、子供に優しく、悪には厳しい人だから。
情緒不安定なヒーローってなんか嫌だな……
お化けを怖がるし。
「貴族が知っているなら、准貴族って言われる騎士も当然知ってるよね。シュバルツさんも知っていたし。
当然門番さんも知ってる可能性のほうが高そうだね。
いつか行く、国境の警備隊は尚更かな」
「あの。それはあまり関係がないのではないですか?」
「どういうことかな?」
「国境の警備隊(?)はわかりませんが、門番さんが仮に存在を知っていたとしても、誰がそれを持っているのか。特に私達のような普通のランクの冒険者が持っているとは考えないのではないですか?」
そうだな。そう言われたら、どこでもただの袋として見られそうだな。
「それにそもそもそんな危ないことをする必要はありません。
街から出るときには、出た後にでもセイさんに転移魔法で魔法の鞄を取りに行ってもらえばいいんです。
私達に魔法の鞄が必要な時は、今のところですが街の外だけです。
要は戦闘の為の武器の保管くらいです」
たしかに……
「私、魔法の鞄でおかしくなってたみたい……
普通に考えたら転移魔法は時間がかかるだけだから、魔法の鞄は戦闘の時以外には私達にそこまでのメリットは無いよね。
セイくんがいる限り」
いや、その言い方だと…魔法の鞄の必要性を説く為に俺を消しそうだよねっ!?
「わかった。それを踏まえたら、特に必要なのは一人で留守番をすることが多いミランだな。
次点で、逸れた時や別れて行動するときに聖奈だな」
「そうだね。後は地球で使えたら最高だね!」
「それは考えつかなかったな。でも、転移魔法が使えない地球の方がありがたいな」
使えないのかは使ってないだけだから不明だけど…今更試すリスクを負えんな。
大気中に魔力がないだけだから使うだけは使えるのか?魔力の回復はしないだろうけど。
「壊れないかな?」
ホンマやん……
壊れたらまた貰えないかな?
無理だよな……
俺がアホな願い事を祈っていると、ミラン先生が口を開いた。
「私は壊れても構わないと思います。話を聞いただけですが、地球(?)の方が有効活用出来るのですよね?
こちらでは確かに戦闘でのメリットは多大にありそうですが、そもそもまた手に入れられるかも知れません。
他には見つかってしまった時のリスクがあるくらいです」
そうか。それに壊れなかったらこっちでも使えるしな。
「そうだよね!先ずは他の安い魔道具で試す?
買わなきゃいけないけど」
聖奈さんの行動力に引っ張られて、俺達は王都に戻り、魔導具を扱っている店へと向かった。
〓〓〓〓〓〓〓あとがき〓〓〓〓〓〓〓
魔導具と魔道具の書き分けがありますが、気になさらないでください。
この小説では後に『魔導具』で統一されます。
理由は然るべき時に出てきます。
ご不便をお掛けしてすみません。
この後もお楽しみ下さい。多謝。