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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

55 - 55話 理解は出来ても納得は出来ない夜。

♥

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2024年01月22日

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俺達はお試し用の魔導具を購入する為に、王都の商店を訪ねていた。

「説明が書いてなかったらどんな道具ものかわからなかったね…」

聖奈さんが言うように、地球の電化製品とは形状がかなり異なる物もある。

例えば、目の前にある洗濯機だ。

なんで大型のシュレッダーみたいな形状なんだよ……

服がバラバラになりそうで怖くて使えないな……

ガソスタのフロアマットを洗うやつには少し似てるけど。

「それでどれにするんだ?」

「うーん。なんかわかんないね…店員さんに魔導具について聞いてみない?」

知らないことは人に聞け。賛成です!

店員さんに聞いてみた所、魔石に入っている魔力が切れるまでは使えるようだ。魔石の魔力が切れたら交換。充電不可の乾電池みたいなものだな。

俺たちが持っている杖などはあくまで補助用具なので、出力は他から調達する。杖なら使用者だ。

杖に出力としての魔石が付いているものは『魔銃』と呼ばれているが、コストに見合わないので、ほとんど使用されていないようだ。

銃って概念があるんだな……

俺が持っている魔導書の封印のように、大気中から魔力を得ている物があるか聞いたが、知らないそうだ。

「どう考えても、魔法の鞄マジックバッグは魔導書の封印と同じ原理だよな…」

「そうだよね…」

「残念ですね」

俺達はその場は諦めて宿に帰った。







「何をされているのですか?」

魔導書を眺めている俺にミランが聞いてきた。ミランは読めないから、俺が何をしているのかわからないよな。

「魔法の鞄の仕組みについて、何かヒントがないか探しているんだ。

もしかしたら、俺の魔力で向こうでも使えるように出来るかもしれないしな」

考察は好きだけど勉強は嫌いだ。

聖奈さんのほうがこういうことは得意なんだろうけど、何故か興味を示してくれない……

まぁ、俺が勝手にしてることだからいいけど。

「そうですか。私に手伝えればいいのですが」モグモグ

うん。全然申し訳なさそうじゃないね!

放っておいてくれ!


暫く一人であれこれ考えていたんだけど、どうやら俺にはわからないことがわかった!

いいんだ…俺には転移と魔法があるから……






「えっ?王都を出たいって?」

俺が魔導書と睨めっこしてる間に外に出ていた聖奈さんが、帰ってくるなり要求してきた。

「うん!もうお城にも行ったし、見るとこ無いよね?それで情報収集してきたの!」

「情報収集?」

「そう!色んなところに行ってたんだけど、面白い話を聞いたの!

『魔導王国』っていう、国に行ってみたいの!」

魔導王国。名前の通りなら魔法や魔導具に精通していそうなところだな。

「もちろん学園もあるよ!それ以外にも、個人で弟子をとっている魔法使いさんも沢山いるみたいだし、私達の旅の安全のためにも行って学んでみないかな?」

確かに魔法は有用だ。特に銃が効かない相手には。

しかし、それは……

「どうせ、学園モノの影響だろ?」

「バレちゃった」てへぺろ

「だけど、俺は勉強は嫌だぞ?大学を退学までしてこっちの学園に入学なんて、アホらしいからな」

俺はこの世界を楽しんで、毎日寝る前に酒を飲む、今の生活が理想だからな。

偶に楽しめないこともあるけど……

「もちろんだよ!私学園モノの登場人物になる気はないよ?遠くの第三者として、淡い恋愛模様や青春を見守りたいの!

聖地巡礼みたいなモノだよ!」

「『も』ってなんだよ…途中の言葉には同意しかねるけど、聖地巡礼は興味あるな。

どんな校舎なんだろうな?」

行くのは賛成だ。何をするかによるだけで。

だが、油断するといつの間にか学園の制服を着させられていそうだ。気をつけないとな。

「私はこの国を出たことがないので、外の国のことはわかりません。

ですが、新しいモノには惹かれますね」

ミランは新天地を求めたか。

「じゃあみんな賛成ってことで良いかな?」

「私もいってみたいです」

「学園に入らないのであればな」

俺達は次の目的地を決めた。


王都では特に別れを告げる人もいないし、転移魔法ですぐに来れるから、明後日には王都を出ることに決まった。

聖奈さんの情報収集に抜かりはなく、魔導王国の場所も知っているようだ。

「じゃあ本格的にすることが無いな」

「セイくんは地球ですることがあるでしょ?」

いつものルーティンワークか……

聖奈さんに転移の能力があれば、俺は帰らなくてもいいのに……

無い物ねだりはやめよう。

ダメ!贅沢!






深夜に地球へ戻った俺達は、事前に頼んでおいた物を異世界いえへと送った。

「よし!じゃあ帰るか!」

会社からマンションへ帰ってきた俺は用も済んだことだしと、聖奈さんに声をかけた。

「ん?何を言ってるのかな?やっぱり忘れてたんだね…」

何の話だ?

「今日はここに泊まって、明日は新しいバイトさん達に顔を見せる予定だったでしょ?」

「ほんまや…」

あまりの自分の記憶のなさに驚いて、心の声が漏れてしまった。

いくら魔法の鞄に夢中だったからって、これはまずいな……

「なーんてね!実は私も忘れていたんだ!魔導王国のことで頭が一杯になっちゃったの」

良かった。俺だけじゃなかったんだな。

類は友を呼ぶ。

聖奈さんは心の友だったのか。

ジャイアンは間違いなく聖奈さんの方だけどな……

「私もミランちゃんに言われるまで忘れてたの。良かったね!ミランちゃんに話してて!」

さすリダ……

今はいなくても、流石心のリーダー!

「じゃあ寝るか」

「うん!おやすみ!」









時は遡り、会頭が捕まった頃。

「何故だ!?チートも何もなかったから頑張ったんじゃないか!

この世界には僕が必要なのが何故わからないんだよ!?」

処刑を待つ罪人が入れられる牢屋で、今日新たに入った新人が声を上げる。

「うるせえな。わけのわかんねぇ言葉を叫んでんじゃねぇよ!」

隣の牢に入っている男が苦情を言うと、新人は『ビクッ』と身体を硬直させた。

「ぼ、僕はただ・・・主人公になりたかっただけなのに…」

その言葉を最後に会頭新人は小さく震えるだけのモノになった。

断頭台の露と消えるまで。








時は戻り、翌日。

「私は東雲聖と言います。多忙により、あまり会えないかとは思いますが、こちらの長濱さんにしっかりと皆さんの活躍を聞きますので、頑張って下さい。

仕事内容は単純で退屈かと思いますが、働きやすい、楽しい職場作りを目指していますので、ご協力よろしくお願いしますね」

何とか喋れた。

校長の長い話って凄いんだな……

ああはなりたくないけど……

新しいバイトさんも自己紹介をしてくれた。

一人目は高橋 遥香たかはし はるかさん。28歳で二児の母だ。

二人目は中山 詩織なかやま しおりさん。30歳でこちらも二児の母だ。

採用理由や応募動機も以前の二人と同じだ。

流石謎の税理士さんと聖奈さんだ。抜かりない……

聖奈さんは時々ポンコツだけど。

俺はポンコツ聖奈さんの方が親しみやすくて好きだけどな。

そこまで計算なら童貞さすがの俺もフェードアウトしたい……

「それでは、私達はこれで失礼しますね。これはお土産ですので、皆さんで休憩時間にでも食べてください」

そう告げて、聖奈さんはバッグから外国製のお菓子を取り出して渡した。

いつ用意してたんだよ…抜かりねぇな。





道中会社の状況報告を聞いた。

家具の売上だけで、ついに1ヶ月間に300万以上の売り上げ見込みが立ったようだ。

ダンさんが合流して、手を抜かずそれでいて仕事が早いので、他の3人の職人さんにいい刺激を与えているのも要因だ。

ブラック企業?はて?

王都の見習い予定の3人が合流すれば、仕入れ量も増えて、さらには四人の仕事量は普通の職人くらいにはなるそうだ。

ブラックから白に近いグレーへ。よしよし。

「遂に聖くんの給料を宝石代で支払わなくて良くなったね!」

済まないねぇ。不相応な給料で苦労を掛けて……

まあ、それでもまだまだ会社の資本の殆どは宝石の売却益なんだけどな。

もちろん家具以外にも商人組合ハーリーさんから仕入れた商材も売れている。

だが、日が浅いため1ヶ月間の売上予測は立っていない。

仕事の話がひと段落したところで、気になっていたことを聞いた。

「なぁ。どこにむかっているんだ?」

会社を出た俺は、聖奈さんのナビ通りに車を走らせてはいたが、行き先は知らない。

「行き先はランチの美味しいカフェだよ」

カフェか…まぁ、昼だし飯が食えたら俺はどこでもいい。

聖奈さんはカフェ好きなのか?働きすぎだから息抜きになればいいが……




「ここだよ」

そう言われ、車を停めて店へと入った。

「いらっしゃいませ。二名様ですか?」

「いえ。待ち合わせなので3人です」

えっ?誰かいるのか?

俺はそんなサプライズは……

「おーい。こっちこっち」

須藤やんけ。ならいいわ。

手を振る須藤のいる席へと向かい、席に着いた俺達は注文を済ませて、会話へ入る。



「いやー。長濱さんから連絡もらってな!お前は連絡してこないし、心配してたから渡に船だったわ」

そういや、メッセージが来てたけど世間話はスルーして、何度か返信しなかったな……

「悪かった。忙しくてな」

その後、俺達は聖奈さんのお陰もあってか、久しぶりに会話に花を咲かせた。

もしかして、聖奈さんは俺のことを気遣ってくれて?

やっぱり天使だな。

ごめんね。最近ポンコツとか幼児キャラとかばっかり思っていて……






「じゃあな。長濱さんを泣かせるなよ!」

「何言ってんだよ…泣かされる方だわ!」

「はははっ!」

食後、駐車場で別れ際にそんな会話をして、須藤は手を振り去っていった。

聖奈さんありがとう。

楽しかった俺は心の中でそう感謝した。

口に出すと面倒臭いことばかりいうから……

「良かったね!」

済まないな。今度お礼……

「これなら須藤くんは自首しなさそうだね」

えっ・・・

「正義感の強さから少し危ないと思っていたけど、二人の友情には勝てなかったみたいだね!」

「そだね」

感謝していた自分を殴りたい。

聖奈さんは俺をバイトさんに会わせたかったわけじゃなかった。

王都出発までに後顧こうこうれいを断つ為だった。

バイトさんはついでだろうな。

いや、わかるんだけど・・

せめて教えて欲しかったな。

聖奈さんが心配してお願いするのなら、俺が断るはずないのにな。

また、イラつかされてるな。落ち着け俺。

悪いのは聖奈さんだけじゃないだろ?

俺が断るはずがないことを言葉にしてなかったんじゃないのか?

そもそも、この行動自体が俺のためでもある。

感謝しないといけないのは、頭ではわかっているんだ。でも……




俺達はその日の夜にミランの元へと帰り、明日の出発のために、すぐに眠りへと就いた。


王都最後の夜。二人はすでに寝入っている。


俺は自問自答を繰り返し、中々寝付くことが出来なかった。





残金

1,980,000円(給料が入って家賃などの支払いで減った。ミランのスイーツは大した額にはなっていない。ポーカーの勝ち分は有耶無耶になって没収された)

26,420,000ギル(家がかなり高かった。土地は領主の物なので上物だけ。地税として借地料が取られる。宝石などもかなり買ったが、砂糖などの売上高は1ヶ月6000万を超えるので、影響は大きくない)

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