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第1話「それ、やめろって言ってるやろ」
「……ねぇ、ぷりちゃん」
俺の背中をつんつん、とつついてくる幼馴染のあっきぃ。
…無視しとこ。
「ねぇってば」
今度はシャツの裾、軽く引っ張られる。
「……なんやねん」
振り返った瞬間。
ぐい、って顔近づけられる。
「近い!!」
思わず椅子ごとガタッて下がると、あっきぃがくすくす笑う。
「そんな逃げる?w」
「逃げるわ!急に来んな!」
「ノート見せてよ」
「自分で書けや」
「やだ」
そのまま、ひょいってノート取られる。
「ちょ、返せや!」
取り返そうと手伸ばした瞬間、
するっと、手首を掴まれる。
「暴れんなって」
「誰のせいやねん!」
軽く押さえられて、動きが止まる。
そのまま、あっきぃは何事もないみたいにノートを覗き込む。
「……字きれい」
「今それ関係ある!?」
離そうとしても、するっと指まで絡められる。
ノートの上に、自分の手ごと押さえられる形。
「ここどこ書いてんの」
「やから自分で——」
言いかけて、止まる。
あっきぃの手、でかい。
俺の手、ほとんど隠れてる。
指もすらっと長くて、軽く押さえられてるだけなのに、全然動かせない。
「……離せや」
「まだ」
「まだちゃう!」
それでもすぐ離してくれない。
わざとかってくらい、少しだけ長く触れてくる。
「ほら、ここでしょ」
やっと離れたとき、
なんか変に、手の感覚だけ残る。
(……なんやねん今の)
前の席から同じく幼馴染のまぜ太が振り返る。
「お前ら授業中だぞ」
「こいつが絡んでくんねん!」
「でもお前も離れてないじゃん」
「……それは」
言い返せなくて詰まる。
チャイムが鳴る。
その瞬間、あっきぃがぐっと近づいてくる。
「おつかれーい!」
肩ぽん、とかじゃなくて
そのまま後ろから腕回される。
「ちょ、重い!」
「いいじゃん」
肩に顎乗せてくる。
「離れろや!!」
「やだ」
「なんでやねん!」
そのまま耳元で
「ふ〜…、w」
「やめろや近い!!」
耳にかかる息に、変な感じがして一気に距離を取る。
「顔赤いじゃん、照れてんの?」
「うるさい!!」
昼休み。
俺が購買まで走ってゲットした焼きそばパン。
袋を開けた瞬間、
ひょいっと横から取られる。
「ちょ、それ俺のや!」
「いーじゃん、一口ちょうだい」
「勝手に食うな!」
そのまま一口かじるあっきぃ。
「うま」
「俺の!」
取り返そうとしたら、
今度はひょいと上に持ち上げられる。
「返してほしい?」
「当たり前や!」
ちょっと屈んで、顔近づけて
「じゃあ、おねだりして?」
「なんでやねん!」
「ほーらw」
「……嫌や!」
飛びついたけど、俺の手にパンはなかった。
ニヤニヤ笑いながら、さらに高く上げられる。
俺の方が身長低いから背伸びしても届かない。
「ちょ、ほんま返せや!」
「んー、?」
バランス崩してよろけた瞬間、
ぎゅっと抱き止められる。
「危ないってば」
「誰のせいやねん!!」
にしても、近い。
めちゃくちゃ近い。
一瞬、目が合う。
「……」
「……な、なんやねん」
あっきぃは目を細め、少しだけ笑って
「ほら」
って普通にパン返してくる。
「……最初から返せや」
「楽しかったし」
「俺は楽しくない!」
でも、そのあとくしゃって髪触られる。
「マジおもろいw」
「子供扱いすんな!」
払いのけるけど、またすぐ手伸びてくる。
「やめろって言ってるやろ!」
「やーだね」
(……ほんま、なんなんこいつ)
でも、離れようとすると
なぜかまた近くに戻ってきてしまう。
前の席で見てたまぜ太が、ぼそっと
「……それで嫌がってるは無理あるってw」
「うるさい!」
あっきぃは隣で笑ってる。
距離も、空気も、全部いつも通り。
——ただ、少しだけ。
さっきの“近さ”が、頭から離れなかった。
コメント
1件
からかわれてるけど、離れられないpr彡最高