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第2話「なんか気に食わない」
「あっきぃ、聞いてる?」
「んー、聞いてる」
適当に返しながら、視線は別のところに向いている。
教室の少し向こう。
「はは、それでさ——」
笑ってる。
ぷりちゃんが、誰かと。
(……なんであいつとそんな近いんだよ)
別に、普通の距離だ。
肩が触れるわけでもないし、特別近いわけでもない。
なのに。
「あっきぃ?」
「あ、ごめん。何だっけ」
会話に戻ろうとしても、うまく入ってこない。
気づけばまた、そっちを見てる。
ぷりちゃんが笑ってる。
楽しそうに。
(……あんな顔、俺の前でもしてたっけ)
いや、してる。
してるけど。
なんか違う気がする。
「ねぇ」
気づいたら立ってた。
「ぷりちゃん」
「なんや」
振り返る顔は、いつも通り。
「ちょっと来て」
「は?今話しとんねんけど」
その腕、軽く引く。
「いいから」
「おいって!」
文句言いながらも、ちゃんとついてくる。
人気のない廊下まで来て、やっと手を離す。
「なんやねん急に」
「別に」
そう言いながら、少し近づく。
「さっきのやつと仲いいの?」
「普通やろ」
「ふーん」
なんか、面白くない。
理由はよくわからない。
「……何が言いたいねん」
「別に何も」
少しだけ距離を詰める。
ぷりちゃんが一歩下がる。
「逃げんなって」
「逃げるわ!」
いつも通りのやり取り。
のはずなのに。
(なんでこんなイラついてんだろ)
「俺といるときより楽しそうだった」
ぽろっと出た言葉に、自分で少し驚く。
「は?」
「いや、なんとなく」
ごまかすように笑う。
ぷりちゃんは少しだけ眉をひそめて、
「意味わからんわ」って言った。
(……ほんとにな)
でも、
「まあいいや」
軽く頭撫でる。
「やめろや!」
いつも通り、怒る。
いつも通り、離れない。
それで、少しだけ安心する。
(……なんだよこれ)
答えはまだ、出ない。
「……はぁ」
ため息が出る。
(なんやねんあいつ)
さっきのこと思い出して、また顔が熱くなる。
「ちょっと来て」って、腕引っ張られて。
人気のない廊下まで連れていかれて。
距離、近くて。
(ほんま、なんなん)
「最近さ、あいつと仲いいの?」
とか聞いてきて。
「普通やろ」って答えたら、
なんか不機嫌そうで。
(知らんがな)
そのあとも、やたら距離詰めてきて。
「逃げんなって」
(逃げるわ普通に)
なのに。
逃げきれへん。
「……はぁ」
自分の席に座りながら、頬に手当てる。
まだちょっと熱い。
「どうしたー」
前からまぜ太がニヤニヤしながら覗き込んでくる。
「なんでもないわ!」
「あっきぃとなんかあった?」
「ない!」
(あるけど)
言えるわけない。
あんな距離近くて、
あんな顔で見られて、
(……普通ちゃうやろ)
でも、あっきぃは普通みたいな顔してる。
「ふーん」
まぜ太が面白そうに笑う。
「お前さ」
「なんや」
「顔に出すぎ」
「出てへんわ!」
即否定。
でも。
「あっきぃのこと、意識してんじゃね?」
「してへん!!」
反射で叫ぶ。
教室の何人かがこっち見る。
「声でかw」
「ちゃうって言うてるやろ!」
でも。
(……してへんよな?)
頭の中に浮かぶのは、
近すぎる距離と、
あったかい声と、
あのときの顔。
(……いやいやいや)
ぶんぶん首振る。
「ありえへん」
「何が?」
「なんでもない!」
まぜ太がくすっと笑う。
「まあいいけど」
その一言が、妙に引っかかる。
(なんやねんほんま)
ちらっと後ろを見る。
あっきぃは、いつも通りの顔で誰かと話してる。
(……あんな顔、誰にでもするんか)
そう思った瞬間、
なんか、もやっとした。
(いや、なんでやねん)
理由なんかない。
はずなのに。
視線、逸らせへん。
コメント
3件
無自覚な嫉妬大好き😭😭😭
最高やなぁ〜