テラーノベル
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(場所:収録後の誰もいない楽屋)
izw「……ふぅ。今回の企画、結構神経使ったなぁ」
伊沢はそう言って、ソファの背もたれに深く体を預けた。カメラの前で全力で思考を巡らせていた反動か、今はただ、重力に従うようにリラックスしている。
sgi『お疲れ。伊沢のあの解説、現場の空気一気に引き締まったよ。さすがだな』
隣に座った須貝が、リラックスしたトーンで労いをかける。
izw『……そう? 須貝さんにそう言ってもらえると、頑張った甲斐があるよ』
照れくさそうに笑いながら、伊沢は無意識に須貝の方へ体を寄せた。外では隙のない「クイズ王」だが、須貝と二人きりになると、ふっと「褒められたい、甘えたい」という素直な空気が溢れ出す。
izw『……ねぇ、須貝さん。今日の僕、結構「いい仕事」したと思わない?』
sgi『あはは。自分で言うか。……まぁ、否定はしないけどさ。……しょうがねぇな。ほら、こっちおいで』
須貝が自分の膝を軽く叩くと、伊沢は待っていましたと言わんばかりに、躊躇なく須貝の隣へ潜り込んだ。
sgi『伊沢、今日もお疲れ。……よく頑張ったな』
須貝の大きな手が、伊沢の髪をゆっくりと、大きな弧を描いて撫でる。
izw『…………っ』
その瞬間、伊沢の表情がふにゃりと崩れた。須貝の手のひらの熱が伝わった途端、目はトロンと細くなり、口元がだらしなく緩んでしまう。自分でも情けないと思うほど、須貝の手の動きに合わせて頭を擦り寄せた。
izw『……須貝さんの手、落ち着くんだよね。……もっと、やって』
sgi『はいはい。……よしよし、いい子だ』
須貝は無防備を晒している伊沢の頭を、飽きることなく何度も撫で続けた。
――ガチャリ。 ドアが開く音がしたが、心地よさに埋没している伊沢は、それに全く気づかない。それどころか、須貝の服の裾をぎゅっと握りしめて、幸せそうに喉を鳴らしている。
fkr『…………』
入り口に立った福良は、あまりにも無防備な王様の姿に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに楽しげな笑みを浮かべた。音を立てずに近づき、伊沢の真後ろで足を止める。
fkr『……伊沢、すごい幸せそうな顔してるね。あと、「もっとやって」って言った?』
izw『……ふふ、そうだよ……。須貝さんの手、……っ!?』
聞き慣れた声が脳天を突き抜けた。 伊沢は顔面を真っ赤にし、瞬時にアスリートのような瞬発力で須貝の膝から飛び起きようとした。――が。
sgi『おっと。どこ行くんだよ』
izw『っ、が……!?』
須貝が伊沢の肩をがしっと掴み、逃げる進路を塞ぐようにして、ぐいと自分の体の方へ引き戻した。
日頃から筋トレに励んでいる伊沢であっても、さらに体格差のある須貝に上から体重をかけられては、さすがに身動きが取れない。
伊沢は中途半端に腰を浮かせた姿勢のまま、須貝の腕の中にがっしりとホールドされてしまった。
fkr『あはは、須貝さんナイス。……ねえ伊沢、今しっかり「撫でてもらってた」よね?』
izw『ち、違う! 今のは、あれだ。さっきの収録のリアクションが少し硬かったから、筋肉の緊張を解くために……一種の筋弛緩療法的なアプローチを試してただけで……!』
fkr『筋弛緩療法? ……そんな治療法、自分から「もっとやって」って催促して、あんなにトロトロした目になるまでやるんだ? ……伊沢、嘘つくとき視線泳ぎすぎ。面白いね』
izw『泳いでない! それは、目が疲れてたからピント調節が……! ……っていうか、離して須貝さん! 福良、違うんだって……!』
fkr『何が違うの? 伊沢、撫でて欲しかったんでしょ。ほら、僕も貸してあげる。撫でてあげるよ』
福良が少しだけ口角を上げて、ひらひらと右手を伊沢の顔の前に持っていく。逃げようとしても須貝の剛腕が肩をがっちりと押さえつけていて、一歩も後ろに下がれない。
fkr『ねえ、何が違うの? 同じ「手」だよ? それとも、やっぱり須貝さんじゃなきゃダメなの?』
izw『……違うんだよ! そういうんじゃなくて……!』
逃げ場を失い、羞恥心と須貝の熱い体温に挟まれた伊沢の脳内は、ついにオーバーヒートを起こした。
izw『……っ、もういいだろ! 須貝さんの手がいいんだよ!!』
一瞬の静寂のあと、背後から須貝の豪快な爆笑が直接体に響いた。
sgi『あははは! 言っちゃった! 伊沢、お前、今の最高に可愛いな!』
fkr『……そっか。やっぱり須貝さんが特別なんだね』
福良は納得したように小さく頷くと、満足げに資料を机に置いた。
izw『っあ…………!!』
自分が何を口走ったか理解した瞬間、伊沢は絶望に顔を染め、そのまま須貝の胸の中に崩れ落ちた。もはや逃げる気力も、鍛え上げた筋肉も、羞恥心の前では何の役にも立たない。
izw『……っ、……もう、……っ』
伊沢は、自分を押さえつけていた須貝のシャツを、今度は自分からぎゅっと握りしめ、顔を見られないように必死に隠した。
sgi『あはは! 降参か。よしよし、分かったから』
須貝が今度は優しく、伊沢の後頭部を大きな手で包み込む。そのまま指先で優しく髪を梳くと、伊沢は「うう……」と小さく呻きながら、さらに深く須貝の体に顔を埋めた。
fkr『……あーあ。完全に懐いちゃったね。打ち合わせ、進められるかなぁ』
sgi『悪いな、福良。今日はもう、こいつの「業務」は終了だわ』
(おわり)
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