テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
――悪魔って、本当にいるんだ。
ついさっき、悪魔召喚の儀式をしたのが自分であるにもかかわらず、少女は驚きの声を漏らした。
「うそ……」
地面に描かれた陣の上には生け贄となったウサギの血。その上にフード付きの長いローブを着た男が、どす黒い空気と共に現れた。
少女が男だと思ったのは単純に背が高いからで、もしかしたら女かもしれない。
フードを目深に被っていて、全く顔の見えない相手に向かって少女は話しかけた。
「あなた……悪魔?」
返答を待つ僅かな間にも、男の放つ魔力と威圧感とに体が震えそうになる。
「お前……悪魔と契約を結べばどうなるか分かっているんだろうな?」
臓腑の凍るような冷たい声。一瞬、怖気付きそうになりながらも、少女は頷き返す。
「死んだ後のことなんてどうでもいい。今が天国ならね」
少女の言葉に、悪魔がケラケラと腹を抱えて不気味に笑っている。
「いいねぇ、そういうの。気に入った。そんな現世主義なお前にプレゼントだ。手を出せ」
言われた通り両手を前に出すと、どこからかヒラヒラと黒い羽根が落ちてきた。それがこの悪魔の言うプレゼントだと直感的に思った少女は、舞い落ちてくる羽根を掴んだ。
カラスのような艶やかで真っ黒な羽根が三枚。ただの鳥の羽根では無いことは触れただけで分かる。禍々しく、おぞましい。
これまで幾度となく魔物に会ったことがあるが、そのどれよりも深い闇を感じられる。
「俺の羽根だ。羽根に篭もる俺の力を使って、お前の望みを叶えるといい」
「力を使ってって、一体どうすれば……」
「契約を交わせば、その羽根で出来ることや使い方が自ずと分かるだろう」
近付いてきた悪魔。後退りしたが、少女の身体はいとも簡単に地面に押し倒されてしまった。
「きゃあぁっ!!」
弾け飛んだ服のボタン。
左胸に押し付けられた唇。
少女はその夜、闇に堕ちた。