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第十五話 選べない二人
「……あと10分」
黒板に表示された数字が、ゆっくり減っていく。
10:00
「ころちゃん」
莉犬が手を握る。
「僕が消えるから」
「ダメ」
「でも――」
「ダメだって言ってる!」
ころんが珍しく声を荒らげた。
「莉犬だけ置いていくなんて、できない」
莉犬は黙った。
その目に、涙が浮かぶ。
「……ころちゃんは優しいね」
「違う」
ころんは首を振った。
「僕が怖いだけ」
「何が?」
「また、君を失うのが」
その言葉に、莉犬の表情が変わる。
――雨の日。
――赤い傘。
――伸ばした手。
――そして、離れていった指先。
ころんの記憶が、また一つ戻る。
「……あの日も」
ころんが呟いた。
「僕は、莉犬を助けようとしてた」
「うん」
「でも、間に合わなかった」
「……うん」
「だから今度は――」
ころんは莉犬の手を強く握る。
「絶対に離さない」
その瞬間。
09:00
黒板の数字が変わった。
しかし――
「待って!」
心音が叫んだ。
「これ、おかしくない?」
「え?」
心音は黒板を指差す。
「『どちらか一人が消える』って書いてあるけど……」
「その下に、まだ文字がある」
ころんが近づく。
薄く浮かび上がっていたのは――
『二人が同じ答えを選んだ場合、第三の道が開く』
「第三の道……?」
まぜ太が呟く。
ななもりが目を見開いた。
「……そんなルール、昔はなかった」
ジェルも驚く。
「つまり――」
「誰かが、この学校のルールそのものを書き換えてる?」
その瞬間、教室の奥から声がした。
「正解」
全員が振り返る。
そこに立っていたのは――
たっつん。
「たっつん……?」
たっつんは静かに笑う。
「俺、ずっと探してたんよ」
「この学校を壊す方法を」
そして手に持っていた古いノートを開く。
最後のページには――
『31人全員が、互いを選べばいい』
ころんは息を呑む。
「……互いを?」
「そう」
たっつんが頷く。
「一人を犠牲にするんじゃない」
「全員で、生きる未来を選ぶんや」
その瞬間――
08:00
だった時計が、突然止まった。
そして学校中に、無数の扉が開いていく。
その先から聞こえてきたのは――
31人それぞれの声。
「ころん!」
「みんな!」
全員が中央の教室へ集まってくる。
そして、黒板の文字が変わった。
『最終選択を開始します』
その下に、新しい一文。
『31人全員が、一番大切な人の名前を呼べ』
ころんは息を呑んだ。
莉犬を見る。
莉犬も、ころんを見る。
そして――
二人は同時に名前を呼んだ。
「「ころん」」
「「莉犬」」
赤い糸が、二人の間で強く光る。
すると――
31本の赤い糸が、一本ずつ繋がっていく。
誰と誰が繋がっているのか。
その答えが、ついに見え始めた。
そして最後に残った一本は――
ななもりとジェル。
二人の糸だけが、どこにも繋がっていない。
ジェルが笑う。
「……俺らは、もう死んどるからな」
ななもりも笑った。
「だから、最後にやることがあるんだよ」
二人は手を繋いだ。
「みんなを――」
「現代に帰す」
その瞬間、時計が動き出す。
00:01
最終物語が始まった。
コメント
1件
**寺島あおいです🌷** 「また、君を失うのが」—ころんのその言葉に、胸がぎゅっとなりました。記憶の断片が戻るたびに、二人の関係がもっと深く、切なく見えてきます。 そしてたっつんの登場!「全員で生きる未来」って、この物語の希望そのものですね。でもななもりとジェルだけ糸が繋がらない…「もう死んどる」の告白は衝撃でした。最後にみんなを帰すために動く二人、次回が本当に待ち遠しいです。
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