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むか〜し昔のことだった。
七兵衛山の麓の原っぱに化け物が出るという。通る人を捕まえて、身ぐるみを剥いで坊主頭にしてしまうというので、近くの村の者は怖がって誰もそこを通らなくなった。
若くて勇ましい男がいて、
「そんな化け物なんか恐くない。もし居るもんなら、俺が行って退治してやる」と言って出かけて行った。
ヤブの蔭に隠れて、化け物が出てくるのを待っていた。
すると 山の方から一匹のキツネが降りて来た。キツネは回りを見渡すと、その場でクルリとひるがえって、可愛らしい人間の娘に化けた。
そして、地面に落ちていた木の枝を拾って背にし負うと、それが赤ん坊になった。
男は身を隠したまま、その様子を息をころして見ていた。
キツネの娘は、「婆さんのところに連れて行ってやるで」と言うと、背中の赤ん坊をあやしながらスタスタと歩いて行った。
男は、いいところを見かけたと思い、ひとまず娘のあとをこっそりとつけて行くことにした。
娘は、隣り村のはずれにある小さな家に着き、「今帰って来たで、婆さま」と声をかけると、中から婆さんが出てきて、
「ああ、帰ってきたか。さあさあ上がりなさい」と言って、一緒に家の中に入っていった。
そこで、男は家の外から大きな声で、
「婆さん、今来た女はキツネだぜ!!」と言った。
すると、婆さんが出てきて
「そんなことがあるもんか💢」と言っていっこうに取り合わない。
「俺はさっき ちゃんと見て来たんだ!」と、男が言って聞かせるが、婆さんはそれを承知しない。
「それなら俺がキツネの尻尾を出させてみせようか」と言うと、婆さんは
「ならば やってみなされ」と言った。
男は庭先で藁(わら)を焼いて、その上で娘をいぶした。ところが、いくらいぶしても なかなか尻尾を出さない。
そして、とうとう男は娘を焼き殺してしまった。
これを見て婆さんは大層悲しんで、
「あんたは娘を殺したが どうしてくれる」と怒りだした。
男はすっかり困り果ててしまった。
「たしかにキツネと思うたが、どうにも取り返しのつかんことをした」と言って、さんざん詫びた。
ちょうどそこへ 寺のお坊さんが通りかかって、
「お前さんたち、どうなさった?」と聞くので、
男が一部始終を話すと、お坊さんは
「お前さんは 人を殺したのだから、僧侶になって弔ってやればよかろう」と言う。
男も これはいたしかたないので、坊主になることを決心したのだが、その場でお坊さんに頭を剃ってもらうことになった。
その剃り方というのが あまりにも乱暴で最初のうちは辛抱していたが、痛くてたまらんかったものだから
「痛いっ!!」と言って首を持ち上げると、
そこには婆さんの家も無ければ、お坊さんも居なかった。
辺りはすっかり夜が深けていて、男はキツネに騙された上に 頭の毛をほとんど掻き毟られて、ほうほうのていで自分の住む村に帰っていったそうな。
むか〜し、ぽっこり。お話はこれでおしまい ☺️✨